昨日の夕暮れ近く、「酔芙蓉」の酩酊状態を写そうと会いに行ったら、彼は既に顔をピンクに染めていた。
「お前さんの来るのが遅いから、儂はもう酔うてな・・・ 眠いのよ・・・」
てな感じに、出来上がっていた。
酩酊状態だけを写したのでは彼のプライドを傷つけはせぬかと考え直して、今朝また会いに行った。曇り空であったが、彼は誠に爽やかな顔で「おはよう」と挨拶に応えた。隣りには昨夜呑み過ぎたお仲間が一人、まだ熟睡していた。
「酔芙蓉」とは誰が名づけたか、なかなか乙な名前だ。昼間の「しらふ」の表情も、午後になると早々と晩酌が始まり、忽ち色に出て、夕暮れには決まって「酩酊状態」に出来上がる。
のん兵衛ではあるが、晩酌を欠かさない律儀な花ではある。
一杯呑めば、たちまち顔に出る虚庵居士と、よく似ているではないか。
しかも、三百六十五日、一日たりとも晩酌を欠かさず、ワイン、焼酎、コニャック等など・・・。
「酔芙蓉」は、まさに「虚庵居士の朋花」と言わずばなるまい。
御酒飲むや白妙の花 酔芙蓉は
かんばせ染めて 酔ひたまうかや
酔芙蓉と酌み交さむか顔を
染めつつ夕べの語らひをせむ
来る年は庵の庭に酔芙蓉を
一株植えなむ共に酔ひまし