「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「突抜忍冬・つきぬきにんとう」

2006-06-30 00:45:58 | 和歌


 近くのお宅の駐車場のフェンスに蔓が絡み付いて、珍しい赤い花が咲いていた。

 たまたまご主人が居られたので、声を掛けて名前を伺ったら、「いや花の名前は・・・」と恐縮しつつ、庭の奥に向かって奥様に応援を求められた。
奥様は庭仕事の手を止めて、フェンスの外まで態々出て来られて、「ツキヌキニントウ」と教えて下さった。
花茎が葉の真ん中を突き抜けていることから、この名前が付けられたと丁寧に解説して下さった。

 虫も付かず病気にも強い、施肥などの手間も掛からない優れものだと、鼻高々であった。
「挿し木も出来ますので、一枝お持ちになりますか?」とご親切なお申し出を頂いたが、丁重にご辞退した。

 「忍冬」とはあの香りの良い「すいかずら」の漢字名で、従って「突抜忍冬」はその姉妹ということになろうか。芳香を期待したが、残念ながら香りはなかった。寒い冬にも緑のまま耐えて、金糸銀糸の花を咲かせ、香り立つ「すいかずら」が姉であるとすれば、「突抜忍冬」は情熱的で活発な、ファンファーレを奏でる妹に違いあるまい。






             庭仕事の腕抜きのまま外に出て
 
             ほほ笑む奥様 誇れる花かな 



             花屋にて買い求めたるその時の
 
             思い出までもが宝の花かな 



             「忍冬」の姉花香れば 妹の
 
             「突抜忍冬」 ファンファーレ吹く  



                     


「アガパンサス」

2006-06-29 00:15:31 | 和歌

 ハッキリせずに、鬱陶しい梅雨空の気分を晴らして、アガパンサスが咲いた。
 
 この花は、稀に見る涼やかな色調が命ゆえ、的確な色の名前を使いたいものだと思った。
「白藍しらあい」或いは「瓶覗かめのぞき」等の名前が思い出されたが、オボロな記憶は頼りにならないので、色見本と比べてみたらどうもシックリしない。あれこれ比べていたら「淡藤色あわふじいろ」に出会った。絵心が無い虚庵居士ゆえ、適格か否かは自信がないが、当らずとも遠からずであろう。薄い紫がかって爽やかな色調が、陰鬱な気分をスカッとさせてくれる。





 梅雨の合い間をネラッテ写真に納めたが、爽やかではあるが余りにクッキリ・コッキリしすぎて、合点がゆかない。その内に雨が降り出した。雨に濡れるのは苦手の虚庵居士ゆえ、辛抱できずに切り上げたら、案の定、素人写真になったが、雨に濡れるアガパンサスにはそれなりの潤いがある。

 何本かの茎を陽ざしに向けてニョキニョキと伸ばす姿は、横文字で賑やかにお喋りをしながら、乙女たちが背比べする様を想像させて、ユーモラスな風情もある。和名を「紫君子蘭」と言うそうだが、「うつろ庵」の庭にも馴染んで咲いている。






             うつろ庵の庭には稀な横文字の
 
             花咲きにけり梅雨のさなかに 



             シャンと立つ茎の頂き さんざめく
 
             乙女のお喋りアガパンサスかも 



             降る雨に濡れるも厭わず嬉々と咲く
 
             淡藤色のアガパンサスかな            


                         


「さくらんぼ」

2006-06-28 09:53:05 | 和歌

 今年もまた、「秋田のさくらんぼ」を頂戴した。

 会社勤めを既にリタイヤして久しいが、お世話になったさる会社の社長さんが、こうして今もなお、毎年ご恵贈下さって有り難いことである。この間、久しぶりにオフィスをお訪ねしたら、あろう事か頭を抱えておられた。詳しいことは省略するが、創業社長としては「次世代に如何に引き継ぐか」は、将に最大の課題であろう。会社の幹部を如何に奮い立たせるか、次期社長へどの様にバトンタッチすべきか。悩んでも余りあることと拝察する。

 社長さんは肝臓が悪いと伺って、嘗て「秋ウコンの生根」を一袋お送りした。虚庵居士も試みて調子がよろしいので、毎日少しづつ摩り下ろして召し上がれとの、一寸したメモを添えた。

 過日伺ったら、生根を少々残して、部下の部長さんの菜園で栽培して貰っていると言う。
何時までも健康で、頑張って欲しいお人である。






             二十二時 宅急便の届けしは
  
             生もの故と「さくらんぼ」かな
  


             輝ける桜桃届けば「口づけ」せむ
  
             摘む一つは 手をつなぎいて



             翌日のテラスに出でて盛りたてば
  
             さくらんぼ皆 輝きにけり
          


             孫達と共に食べたし さくらんぼ

             近くしあれば膝に抱きて
                        




「ブーゲンビリア」 

2006-06-27 01:07:10 | 和歌


 今年もまた「ブーゲンビリア」が、鮮やかなピンクの苞を広げて、目を愉しませてくれる季節になった。

 かつて「うつろ庵」の玄関先にも一株植えてあって、背丈もかなり高く生長して沢山花を付けた。何も知らない当初は、ピンクに開いた部分が花だと思い込んでいたが、暫らくすると、なかに筒花が咲いて、「おやおや」となった次第である。ものの本によると、フランス戦艦がソロモン諸島から持ち帰って拡がったという。想像であるが、若い士官と現地の乙女の熱い恋物語が秘められていたのであろうか。時の艦長の名前が、ブーゲンビリアだった。

 花時を終えて剪定する際には、大きな棘がアチコチにあって、時には腕や手に痛い思いをしたものだった。ご近所のオバちゃんから、「トゲのある庭木は、娘さんが縁遠くなると言うわよ」とのご忠告もあって、「うつろ庵」の庭から消えて久しい。

 それから何年かして、娘は結婚してニューヨークに根を下ろした。ブーゲンビリアを撤去した効果であろうか、トンでもなく遠くへ縁付いてしまったが・・・。


             色の名にその名をとどめる花あれど
 
             この色こそは ブーゲンビリア ! 







             みんなみの島乙女かも命かくる
 
             熱き想いは花と棘に 



             小さくも内に擁けるひたすらの

             花の想いを君知りたまふかや     






「鉄砲百合」

2006-06-26 00:35:59 | 和歌

 梅雨の中ごろになると、鉄砲百合が咲いて、梅雨の鬱陶しい気分を晴らしてくれる。





 「うつろ庵」の鉄砲百合は、「ホトトギス」と「アガパンサス」の狭間で、太陽様の光が不足したのであろう、二輪だけが花を付けた。それぞれ好き勝手に、在るがままの状態で育てているが、適度に陽光や施肥などの気配りをしてやらねば、必ず「すねて」みせる花たちである。



             白妙の鉄砲百合の花二つ
  
             緑座にまします女神なるかも  



             白妙のころもにこぼれる金粉を
  
             意に介さぬもやんごとなかりき  




 光をたっぷりと浴びて好成績であったご近所の鉄砲百合と対比して、戒めとしたい。






             世の中に我が身のあるは何ならめ  

             憚りの無き醜き果てにや     





「さふらんもどき」

2006-06-25 00:25:51 | 和歌


 ピンクのお花を探していたら、素晴らしい花に出会った。

 時々拙ブログ「虚庵氏のお遊び」を訪ねて、楽しいコメントを書置きして下さったり、時には「ぐみジャム」のレシピを英語で書きなさい、との厳しい宿題を課せられされて、頭を抱えさせて呉れるジャム様は、ブログを通じてのお友達だ。ピンク大好きジャム様の、誕生日のブログを拝見して、お祝にピンクのお花を掲載するお約束を
した。

 梅雨の合い間に、ピンクのお花を探して彼方此方彷徨っていたら、一瞬の陽の光の中に、
「さふらんもどき」の花を見つけて、カメラにおさめて来た。

 ジャム様がお気に召して下さると良いのだが・・・。






             麗しき花に出会いぬ お祝いを
  
             探せばピンクのサフランモドキに  



             この姫は英語の「宿題」課し給ふ 
 
             ぐみジャムレシピに 辞書を牽きひき  



             陽に透けるさふらんもどきの花びらに 
 
             風に揺れたか花粉のキスあり  





「おジャガの花」

2006-06-24 11:03:50 | 和歌

 通いなれたゴルフ場の隣りの畑で、「おジャガの花」を見つけた。

 数日前に、この畑からほど遠からぬ休耕地のポピーを紹介したが、虚庵居士のファイルの中から「私も載せて!」という、おジャガの声が聞こえた。彼の声を代弁すれば「働いていない休耕地の紹介をして、れっきとした畑の紹介をしないのは、オカシクナイカ?」と、理屈をこねる声と共に、「お野菜の花は深みがあるんだぜ!」と主張する声も聞こえた。





 それにしても、花を付けている数が何故こんなに少ないのだろう? 
写真を写しつつ少々気になったが、ゴルフを終えて帰路についたら、ふと子供の頃の記憶が甦って来た。小学校の校庭の隅の、小さく区画割したジャガイモ畑が瞼に浮かんだ。

 「お花を摘んで、おジャガを太らせましょう!」
 あの時の百合子先生は、お元気だろうか・・・。
 





             じゃが芋の畑の花見て想い出す
 
             おジャガの花摘む せんせいとぼく 



             あの頃は未だ村だったふる里の
 
             尋常小学一年生の日 



             せんせいがおよめにゆくというあのひ 

             おててをふってさよならしたっけ    



                              


「唐綿 ・とうわた」

2006-06-23 00:16:25 | 和歌


 「うつろ庵」の唐綿の花が咲いた。  
 
 唐綿は花が散って暫らくすると、花の大きさには似合わない、小指ほどの大きさの実を付ける。秋になって実が乾燥して鞘が割れると、なかから純白に輝く綿毛が吹き出てくる。綿毛には小さな種子が付いていて、風で遠くまで飛ばそうという仕掛けなのだ。  

 この唐綿は「うつろ庵」の敷地から、共有の私道に三・四十センチほど茎がせり出すので、棕櫚縄で生垣に寄せてはいるが、裏のお宅の車の出し入れのご迷惑になっていないかと気懸りだ。幸いに私道は四メートル巾ゆえ、車に触らない十分な余裕はあるが、運転する奥様の気配りに守られて、無事に咲いている。      
 





             歳を経て古株となるも夏至迎え
      
             唐綿咲きぬ乙女の風情に         

  

             彩りと姿の変化を観よと言ふらし             
             唐綿の花 輝く綿毛も                           




                    綿毛写真は「季節の花 300」から拝借
                         http://www.hana300.com   



             璃華ちゃんとキャメロンくんにも唐綿の                            
             小花を見せばや 綿毛もみせばや




  

「あくあ様」

2006-06-22 02:28:37 | 和歌

 たまたま「あくあ様」が、ブログ「虚庵氏のお遊び」をお訪ね下さってから、それほど頻繁ではないが、お互いに時々訪ねて、未だ相見えぬが、こころを通じ合うお付き合いをさせて頂いている。




 あくあ様は、ご趣味が「お茶」のほか和歌をたしなみ、和服好みの京美女で、しかも最先端のビジネス界で忙しくご活躍の、三拍子も四拍子も整った妙齢の方である。夢のような交流をさせて頂くだけで、幸せな虚庵居士である。





 最近のあくあ様との歌の交流を、以下に紹介させて頂く。
 


             「銀杏並木」  あくあ詠 

             駆け抜ける銀輪の群れ見下ろして
             銀杏並木は笑ひさざめく


  

             「銀杏並木に和す」 虚庵詠
 
             背の高き銀杏並木を吹く風は 
             葉波さざなみ 朝日に笑みつつ



 すてきなお歌をありがとうございます。
葉波さざ波朝日にと、「あ音」で続くところがリズミカルで、葉ずれの音が聞こえてきそうです。

 私は暇ができたら梅干し作りにも挑戦したいのですが、布団干しもままならない日々ですので、これは老後の楽しみなかと思っています。 (あくあ)







             「雨」 連作その二  あくあ詠 

             紫陽花の群の根元にうち臥して
             慈雨の雫に打たれて死なむ



桜の下もいいけれど、紫陽花の下というのも魅力的です。 (あくあ)



             「オネガイだから 死なないで」  虚庵詠

          さくらのもとも 紫陽花の
          慈雨の雫も よけれども
          お願いだから 死なないで
          恋するひとの なきがらの
          雫に濡れるは かなしけれ
             雫を受けて
             笑みてまほしき



 虚庵さん  
 中原中也から返歌をいただいた気分です。ありがとうございます。
厭世的になると、どう美しく死ねるかとあれやこれや考えるのがワタシのイケナイ癖でして、
ご心配をおかけしました。  (あくあ)





                       

「やすらぎの里」

2006-06-21 01:37:21 | 和歌

 早朝、車で自宅を出て、ゴルフ場近くの休耕地にさしかかったら、ポピーが咲き乱れていた。





 広い畑に作物も作らず、休耕地となって久しいが、今年は一面にポピーの種を蒔いたのであろう、いろいろの芥子の花を咲かせて、ご丁寧にも「やすらぎの里」と書いた看板が立てられていた。畑の持ち主の気持ちに応えて、スタートの時間が迫ってはいたが、ポピーの花を写した。

 蜜蜂の巣箱が近くにあるのであろうか、夥しい数の蜜蜂が、花芯に実を摺り寄せて、花蜜を吸っていた。花蜜だけでは足りないのであろうか、虚庵居士にも盛んに迫って来て、刺されはせぬかとヒヤヒヤであった。






 虞美人草とスギナと、名も知らぬ雑草に、未だタップリの朝露が光っていた。






             迫り来るスタート時間を気にしつつ
 
             朝露踏んで芥子を写しぬ 



             耕さぬ畑を羞じるや地主さまの 

             虞美人草を咲かせる心は 

 

             玉光る朝露の野に踏み入らば

             しとど濡れにし膝下までもが 





「風蝶草」

2006-06-20 05:59:23 | 和歌

 昨年、ご近所の「おばあちゃま」に頂いた風蝶草が咲いた。

 おばあちゃまの庭に咲いていた、いや殆ど咲き終わって、長い髭に萎れた花びらが纏わり付いた「異形の花」を見て、花の名前を教えて貰ったのが、おばあちゃまとの馴れ初め。その時もお話し好きなおばあちゃまは、中々お話が止まらなかった。

 その日の夕暮れ近くになって、おばあちゃまが「風蝶草・クレオネ」と「姫檜扇・ひめひおうぎ」を持って来て下さった。夕暮れの門べでも、お話をたっぷりと愉しんでお帰りになった。その時の風蝶草のこぼれ種が育って、花を咲かせてくれた。

 昨日、おばあちゃまは通りすがりに「あら、咲いたわね」とひと言だけ声を掛けて行過ぎた。「姫檜扇はいかが?」とのひと言が無くて、虚庵居士はほっとした。「姫檜扇」は鉢植えの手入れが不十分だので、枯れてしまったかと心配したが、辛うじて芽を出したものの花を付けなかったからだ。         

 クレオネが、微かな風に揺れていた・・・。






             おばあちゃまの風蝶草ぞ咲きにけり
  
             「あら 咲いたわね」の ひと声涼やか 
 


             とまらないお話しどこまで続くやら
  
             花に始まり孫のことども  



             今日昨日おとといの花それぞれに 
 
             表情豊かなクレオネ揺れいて    




 

「つるはななす」

2006-06-19 12:59:22 | 和歌

 世の中には、変わった趣味の御仁もおるものだ。
このお宅は玄関先を、蔓茄子の花で、背丈ほども高く飾ってあった。

 ところが、「変った趣味」と決め付けるのは、トンだ早とちりのようだ。
よく見ると野菜の茄子の花とは若干違って、一枝を活けても、様になりそうな気品がある。最近は蔓仕立ての「蔓花茄子・つるはななす」が、花屋でもかなりの人気らしい。何でも南米原産とか、一般的には「山保呂志・やまほろし」とも呼ぶそうだ。厳密には、山保呂志は同種ではあるが、日本の山育ちで、若干違うところもあるようだが・・・。






             懐かしき茄子の花かなふるさとの
  
             菜園に生る茄子ぞ恋しき  



             来年はナスを植えまし花咲けば
  
             茄子も実らむ庵は狭くも



             花もよし黒く輝く茄子の実も 
 
             庵に生れば宝なるべし  



                                 

「くちなし」

2006-06-18 00:42:53 | 和歌



 散歩していたら、かなり遠くまで香りが漂ってきて、花を見るまでもなく
「あゝ 梔子が・・・」と、知らせてくれた。

 写真の梔子は六弁の一重咲きだ。
これはやがて実を結ぶ。昔の人々はその実を、料理の色付けや漢方薬などに利用した。虚庵居士はどちらかと言うと辛口党ではあるが、淡い色付けの「きんとん」は、好物の一つだ。「うつろ庵」の梔子は八重咲きで、実を付けないが、花は八重咲きの白さに、より気品がある。


             くちなしの漂ふ香りにいずこかと
    
             路を曲がれば 群花むかえぬ



 梔子の花は、咲き始めの白さが清純無垢で何ともいえないが、あっという間もなく黄味がかってしまう。「花の命は短くて・・・」と歌人は詠ったが、梔子の清純さはたとえいっときであれ、高貴な香りと共に人を惹きつけてやまない。




    

             降る雨に濡れ初むくちなし写さむと
    
             構えるわれに傘さす妹かな



             くちなしの花も香りもいにしえの
    
             うたびと詠まぬは 「あはれ」にあらずや




 
 いにしえの "口なしのうたびと”を詠める三首  花の旅人


             実の固く口を閉ざせば梔子を
  
             詠はざりけむいにしえ人は  



             雅男の襲色目の下染は
  
             梔子の実を使ふというに  



             薫きこめる香なかりせばひそやかに 
 
             携えむかも梔子の花  





「フェイジュア」

2006-06-17 00:39:03 | 和歌

 「けったいな」花に出会った。






             白妙の花びら内より押し広げ
 
             しべ紅に いきり立つかな



 偶々居合わせたご主人に伺えば、「フェイジュア」だという。レモン大の緑色の果物が生るそうだ。「果物屋でも見かけませんね」との問いかけに、「南米原産で最近になって輸入した果物ですから、国内ではまだ少ないのでしょう」とのご返事であった。


 四枚の花弁は、満開になるとピンクの内側を包み込むように筒状に丸まって、白く垂れ下がる。赤い針状の蕊を支える姿も、中々ユニークである。ご主人は立ち話をしつつ、白い花びらを摘み「ひょい」と口に入れた。あっけに取られていたら、「甘いんですよ」と勧められて、口に含んでみた。
しつこくない甘さと、ほろ苦さが口に広がった。

 「挿し木で簡単に根付きますよ、よかったらお持ちになりますか?」
と聞かれるので、一枝切って下さるのかと思ったら、挿し木して五十センチ程に育ち、蕾を付けた一鉢を下さった。

 今朝見ると頂戴した細い苗木が、見事に花を咲かせて、雨に濡れていた。



             フェイジュアの紅の蕊 金色の
 
             粒を誇るか高く掲げて 







             頂きしフェイジュアの花咲きにけり
 
             雫を湛えて煌めく朝かな  



                            

「未央柳」

2006-06-16 00:08:10 | 和歌

 探し求めていた「未央柳・びょうやなぎ」の花に、やっとめぐり逢えた。






             いと細き金糸の蕊を揺らしつつ
 
             小虻飛び来る昼下がりかな 



 細い金糸を一杯に広げるこの花には、もっと相応しい名前を授けてやりたいと思うのだが・・・。植物学も花にも詳しくない虚庵居士が云々するのは、差し控えるべきかも知れないが、「未央柳」という名前では、繊細な金糸を誇る花に、申し訳ない思いが募るというものだ。

 つい数日前に、雨にしとど濡れて風情ある金糸梅に会ったが、「金糸」の名前は、この花にこそ使わせてやりたいものだ。

 花は己の命を弁えて、然るべき身の処し方するが、この花の散り際ほど鮮やかな例を他に知らない。最も誇りとする金糸の蕊(しべ)を、一番先に思い切りよく「はらり」と落とし、その後
おもむろに花びらを散らして、醜い萎れた姿をとどめないのだ。

 たまたま写真を撮っていたら、その「金糸の蕊」がはらりと散った。
 この蕊をこよなく「いとおしむ」虚庵居士への、無言の挨拶であろうか。






             ぬばたまの黒きドレスの胸元は 
 
             未央柳の金糸ぞ映えなむ



             たまきはる命を知るらめ 未央柳の 

             無言のあいさつ 金糸しべ散る