久方ぶりに、かつて勤めていた古巣を訪れた。
会議室をお借りして、年明けに企画しているエネルギーと環境問題に関する、三回シリーズの講演会に向けて、講演のリハーサルを兼ね、意見交換会をするのが目的であったが、現役社員の皆さんの温かなご支援には、何時もながら感謝の念で一杯である。ビジネスマンとしても一流の地歩を固め、然るべき地位に上り詰めた面々とは申せ、自ら蓄積した知識を披瀝して、一般社会の皆様に、エネルギーと環境問題を分かり易く「お話し」することは、誠に不慣れで、ついつい業界の言葉、専門用語が飛び出してしまう。
市民の目線、市民の言葉で語りかける訓練が出来ていないことを反省し、我々のシリーズ講演会に先立っては、話しの主旨やストーリーは元より、殊に言葉の表現と、使用するスライドの分かり易さについて、忌憚の無い議論が集中する。お借りした会議室の制限時間の範囲では収まり切れずに、近くの大衆酒場にまでそれが延長されるのが、いつもの事になっている。議論を肴に酒を酌み交わすのは、二十時を目途に切り上げることにしているが、耳順・古希を越えた爺様たちの、益々意気軒昂ぶりに拍手を送りたい。
年経てもなお情熱を失わぬ
彼らの思いの根源はなに
半世紀を賭けて積み来た思いをば
世のため人のために活かさむ
お話を聞く人々の胸のうちに
想いを致して話すや否や
爺様の会へ、快く送り出してくれたカミサンへの小さな感謝の気持ちを表すべく、電車に乗る前に五百円の小さな花束を買った。横須賀は米軍基地の街であるが、電車に乗り合わせた肌の色に異なる若者が、小さな花束を見て話しかけてきた。
「その花束は、ガールフレンドへのプレゼントなるやや? ワイフへのプレゼントなるや?」
「何れと思うや?」
「小さなガールフレンドにあらずや?」
「否、わが妻へ、なり」
「相分かった。ガールフレンドへのプレゼントなりせば、百本の薔薇ならむ!」
「洋の東西を問わず、ガールフレンドを射落とさむと欲せば、百万本の薔薇が要り申す!」
「イエス! イエス!」 爆笑・・・。
小さくも思いを託して贈らむか
じじからばばへの 小さな花束
寒空に花売る乙女の言葉には
小さな花束に 無限の想いを !