クレマチスは疾うに旬を過ぎたと思っていたが、ギラギラ照りつける陽ざしを避けて、木陰に一輪がひっそりと咲いていた。
直射日光を浴びると、萎れる草花もあるほどだが、クレマチスの紫の花びらは、木漏れ日を涼しげに受けとめていた。見上げれば、庭木に絡みついたクレマチスの蔓と葉は、あちこちが虫に食われ、日に焼けてはいるが、炎暑を巧みに避けて花を咲かせている。その知恵には敬服させられ、たった一輪の白い花芯には、尊いものが宿っているようにすら思われた。
夏の甲子園の決勝戦は、稀に見る素晴らしい戦いであった。日頃、野球など観もしない虚庵居士だが、昨日の昼食時に始まった決勝戦は、何も手付かずで延長十五回、引き分けまで付き合った。今日の決勝戦再試合も、見事であった。
炎熱のグラウンドに、迸る情熱をぶつけ合う両チームの選手には、素晴らしいものを見せて貰った。試合が終わって目を閉じると、グラウンドの中央で、最後まで冷静に力投した両チームのエースと、クレマチスの白い花芯とが、何時の間にか重なってみえた。
蝉しぐれ沸き立つ木々の木漏れ日に
心澄ませて クレマチス咲く
甲子園の 決勝戦のほとぼりか
試合の後に蝉しぐれ聞く
グラウンドのエースの姿は何故ならむ
白き花芯とかさなりて見ゆ