近くのお宅の窓際には、西洋蘭が針金で吊るされて、見事な紫の花を咲かせていた。道行く人々に、蘭の花を楽しんで貰おうとの心意気であろうか。
小ぶりな鉢からはみ出した白い気根が、奔放に伸びて、空中の湿気を吸い取っているらしい。家人を見かけたら、名前や香りのことなどを伺いたかったが、ドアホンを鳴らして態々呼び出すのも憚られて、道から写真だけを撮らせて頂いた。
その昔、「風蘭」という蘭が武家に好まれたと、何かの書き物で読んだことが思い出された。風蘭も庭木の枝に吊るしたり、幹に絡ませて置くと、ほとんど朝露だけで、梅雨明けには白い鷺草に似た花を咲かせ、芳香を漂わせるという。参勤交代で江戸へ向かう篭先に風蘭を吊るして、道中で香りを楽しんだ数寄者の殿様もいたそうだ。
花図鑑で調べたら、この蘭の名前は「パンダ」と判明したが、香りと根についての記述は見当たらなかった。
吊るされて窓辺に咲くかな
紫の蘭一株は「気根」を伸ばして
奔放に伸ばした気根は魂魄を
凝らせて咲くかも 花紫に
仙人の花にぞあらむか紫の
うつつ世の蘭 霞に咲くとは
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