「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「一朶の梅の」

2006-01-31 17:09:41 | 和歌

 盆栽仕立ての白梅を、露地に下ろして二年目になる。小さな梅の木が初花を付けた。

  
 



             夕されば白く莟はほころびぬ

             明日こそ観らめ梅が初花




 昨日の夕暮には綻びかけていたので、今朝の雨が心配であったが、幸いに初花を濡らさずに、ご挨拶できた。寒空に咲く健気な梅の花を、あるがままに写し撮りたいと念じて、カメラを取り出して構えたが、虚庵氏の撮影技量では及ばぬ願いであった。清楚で凛と咲く白梅の、香りたつ姿は、掲載する写真ではなく、読者の頭の中に描き出して頂きたい。

 カメラを構えた手がブレテ・・・。いやいやその様な聞き苦しいことは言うまい。白梅の気品に、虚庵居士が到底及ばぬということであろう。

  

 




             雨降ると予報のあればぬばたまの

             昨夜はいとどこころ乱れぬ



             がわ妹の呼ぶ声ききており立てば

             庵の庭に白梅ぞ咲く



             いとけなき梅の木なれどたがわずに

             花咲きにけり睦月晦日に



             たまくしげ身を屈めてはいとけなき

             一朶の梅の香りをばきく





「甘夏みかんの収穫」

2006-01-30 20:50:55 | 和歌

 半月程前に「まろび合ふ」とのタイトルで、「うつろ庵」の甘夏みかんをご紹介したが、程なくして一つ二つと木から落ち始めた。自然の摂理と言うには大げさだが、完熟すると甘夏みかんは蔕が取れ易くなって、みかんの木は自ら果実を「親離れ」させるらしい。

 みかん栽培のプロではないので、摘果するタイミングは判らないが、多分この時期が取り入れのタイミングであろうと、素人判断している。脚立に登って、鋏で切り取ろうとすると、いとも簡単に蔕から捥げてしまう。なっていた枝先も切り取りたいので慎重に扱うが、半分以上は捥げてしまった。ビニールの袋に入れて、脚立から吊り下げていたが、重さに耐え切れずに破れて、摘果したみかんをばら撒いてしまうご粗末な虚庵居士であった。

 甘夏みかんに夕陽が射して、収穫を祝うかのような夕暮れであった。

  

 




             大寒の夕陽さし来て甘夏に

             頬輝かす孫を思ほゆ



             キャメロンの電話に向かいてババ様は

             「おおきな甘夏送るわね」 と笑む 



             お蜜柑の大好きな妻はキャメロンに

             送った残りは 「私のものよ!」と



             皮剥けば香りたつかな甘夏は

             妻の指先香油がひかりて





「あまたのてまねき」

2006-01-29 21:07:11 | 和歌

 久方に、峠を越える遠い散歩に、虚庵夫人と連れ立って出掛けた。

 峠の向こうの、フランス料理を食べさせてくれる小さなレストランまで、ランチを食べに行こうと家内を誘った。何時もは車で、あっという間に行き着く距離だと思っていたが、徒歩での距離は予想を超えるものだった。道行く目印も、車の中からと徒歩とでは大違いで、ヒョットシテ道を間違えたか、とすら思わせた。

 幸いにして虚庵夫人は、一足先にランチタイムに滑り込み、メイドにオーダーをして呉れたので、格安のランチを堪能できた。ワインも追加してゴキゲンな昼飯に、帰り道の虚庵氏はいささか酩酊気分であったのだろうか。枯野の猫じゃらしがこよなく親しく感じられて、暫し、道草を愉しんだ。



 




             数寄人の枯野に踏み込む背を追いて

             呼びかく妹に猫じゃらし揺れ




             かき分けて枯れ野を行けば猫じゃらし

             数寄人来たると話かけしも
  



             夕されば枯野に浮き立ち朧にも
  
             あまたの手招きいずこに誘ふ
  


             わぎもこのよびつるこえにみちびかれ

             をちかたよりは もどりしいまはも








「襲色目の紫苑色」

2006-01-28 11:06:00 | 和歌

 「うつろ庵」の隣の躑躅が、誠に見事な襲色目を創りだして、目を愉しませて呉れている。

 「襲色目(かさねいろめ)」とは、平安時代の雅の世界に創り出された衣装や仕立ての色の取り合わせを言うが、この写真に見られる紫・蘇芳、蘇芳・萌葱などの取り合わせを、紫苑色(しおんいろ)と呼び、秋から冬にかけての装いに好まれたと言う。虚庵居士などは、彩り床しい衣装とは程遠い生活ではあるが、今年の冬は、つつじの葉がことのほか見事な「襲色目」を創りだして、雅の世界へ爺をいざなってくれた。


  
 




             大寒の陽だまりに咲く花ならめ

             かさね色目のしおん色かな








「芙蓉の産毛」

2006-01-27 16:57:06 | 和歌
  

 




             住み人の絶えて久しき苑なれば

             芙蓉の名残の枯れ枝侘しき




             身を割りて抱ける種子を解き放ち

             朽ちゆく芙蓉はおのれを翳して




             木枯らしに吹き荒ばれな枯れ芙蓉よ

             まさきくあらばまた会いにこむ




             夕されば木枯らしやみて落ちる日に

             芙蓉の産毛は何を語らめ







「赤芽の装い」

2006-01-25 17:13:29 | 和歌

 ご近所に、手入れの良く行き届いたカナメモチの生垣のお宅がある。俗称「赤芽」とも言うらしいが、その呼び名の通り、春先には新芽が一斉に芽吹き、その時節には赤紫の生垣に変って、誠に見事である。

 大寒を過ぎたばかりの昨今、珍しく一枚の赤芽を見つけた。赤芽というよりは、寒波に晒されて赤くなったものかもしれないが、陽ざしに透けるひとひらの葉は、深緑の葉に映えて、虚庵居士に強く訴えるものがあった。


  
 




             寒ければ ふか緑濃く身を包み

             赤芽を透かすカナメモチかな



             ふか緑 色濃きドレスの身支度に

             女人の木なるや赤芽を装い



             花ならず 若葉ひとひら翳すてふ

             こころ栄えたる赤芽なるかな





「煌めき儚く」

2006-01-24 16:55:29 | 和歌

 「うつろ庵」の露地に、何年ぶりかで今朝、霜柱が立った。
 霜柱は朝日に煌めきつつ、虚庵居士に何やら話しかけたい風情であった。
  

 



             土くれを頭にのせて並び立ち

             落葉を葬送(みおくる)霜柱かな 



             陽が射せば煌めくスリムの霜柱は

             しるや己の 儚き命を


  
 



             身を捩り身をくねらせて立ちあがる

             さほどの悩みを霜は抱くや



             陽が射せばやがて悩みも消え失せむ

             煌めきはかなくこの身をとかして





「トベラの思いを」

2006-01-23 19:13:27 | 和歌
 
 何時もの散歩道の脇にはトベラが植えられているが、葉の間から小さな赤いものが見えた。近寄ってみると、それはトベラの実であった。お腹が空いていたからであろうか、瑞々しく美味そうに見えた。果実が三つに割れて、中から小さなお菓子のような種が、「食べて、食べて」と迫っている風情だ。色合いは明るい深紅で、しかも透明な蜜に覆われて糸を引いている。手を伸ばして摘み取り、口に含んでみたい衝動に駆られたが、その時、道行く人が通り過ぎて、辛うじて思いとどまった。

  
 



             陽だまりにトベラは口を思いきり
  
             開きてかざしぬ真紅の果実を



             いかでかはかくもそそるやくれないの

             いろあざやかにとべらのかじつは



             いとあつきくちづけににていとをひく

             とべらのおもいをたれやうけまし



 隣には、果実が割れて久しく日が経ったのであろうか、ベンガラ色に変色しているのが見えた。日を経てもなお、つややかで美味しそうに見えた。後から思い返せば、虚庵居士は余ほど空腹だったのかもしれない。

 トベラの実を見つめて、ヨダレを垂らす虚庵居士をご想像あれ。 



 



             日を経れば色合い深みを増しにけり
  
             歳ふる女(ひと)の色香にも似て  





「息をひそめて」

2006-01-21 23:32:25 | 和歌

 「うつろ庵」の庭木には、色々な小鳥が飛んできて仲良しになった。
雀・ひよどり・山鳩・四十雀・目白・鶯・尾長・頬白など等だ。目白は生垣の枝が密集した中を、小さな体で枝から枝へ、小さな声で「チッチッ、チッチッ」と連絡を取り合いながら、素早い身のこなしで庭木に辿り着く。

 食べ物の少ないこの季節は、彼・彼女らと仲良しになる絶好のチャンスだ。
庭木の枝に、「みかん」や「りんご」を半分に切ってご馳走すると、目ざとく見つけて飛んで来てくれる。身の軽い目白は、時には体を逆さまにして、常に注意深く周りに視線を走らせながら、大好物の果物の食事を楽しんでいる。思う存分に食事を終えると、小枝で嘴を拭う仕草もかわいい。

 天気の良い温かな陽ざしを浴びると、時には思いっきり高い所に陣取って、得も言われぬ囀りの独唱を聴かせてくれる。複雑な旋律と、歌唱力の高度な歌声は、目白にまさる小鳥はあるまい。この寒い冬の最中は、めったに目白にお目にかかれないが、「うつろ庵」の庭木にだけは目白が来てくれるだけで、住人としては幸せを頂戴している。

 目白の姿を写真に納めたいが、親友の食事を邪魔したくないのでジッと我慢している。
 食べ終えた「りんごの皮」をご覧あれ。よくもキレイに平らげて下さったものだ。



 



             庭先の椿の枝に林檎さし

             息をひそめて目白を待ちにし



             生垣の枝の混むなか目白二羽

             身ごなし素早く庭木に至りぬ



             好物のリンゴを余さず平らげて

             残せる皮の見事なるかな



             かくまでもきれいにたべてとびさりぬ

             めじろのあすにりんごをきるかな



             あたたかなひざしをあびてたかきより

             めじろのうたう さえずりきかまし




「待ち焦がれしも」

2006-01-20 00:56:58 | 和歌

 



             大寒の空澄み渡り輝くは

             膨らみ増したる綿帽子かな




             木蓮は蕾の産毛を誇るらし

             浅葱にかざす枝先ひかりて




             白妙に木蓮の花やがて咲く

             春の陽ざしを待ち焦がれしも







「人恋し」

2006-01-19 01:00:55 | 和歌

 「うつろ庵」の門辺に丸鉢が置いてあって、背高く伸びた紫小花が、頼りなげに風に揺れている。揺れ動く様はどこか人恋しい風情で、捨て難いものがある。

 花の名前を忘れてしまったのは、花に申し訳なく、残念だ。


 
 

  


              去る人を門べに見送る傍らに

              紫小花も共にゆれいて






「NHKに物申す - 成果に祝杯!!」

2006-01-16 23:36:22 | 和歌
 
 『NHK「知るを楽しむ」に物申す』とのタイトルで、NHKに注文を付けた。
 1月16日夜、NHK教育テレビ「知るを楽しむー原子力の現在」を観て、祝杯を挙げている。


 


 多くの意識レベルの高い皆様が、原子力に対する正しい理解を求められて、それぞれにNHKに対して強い抗議メッセージを寄せられました。その成果が結集して、最悪の事態だけは避けることが出来ました。我々の望む報道には遠く及びませんが、テキストに見られる「事実誤認(私に言わせれば意図的混同)と、反原発思想の押し付け」を、視聴者・国民から守れた成果は「絶大」だったと存じます。

 今後は、テキストの改定をNHKがどの様に処理するかも、注視する必要があります。それと、偏見的な一個人の意見でなく、我国のエネルギー確保に向けた国家の戦略確立に向けて、如何に皆さんの力を結集させるか、その為にマスメディアを如何に利用するかに、視点を絞ることが肝心ではないかと、つくづくと愚考させられた番組でした。

 取り急ぎ、皆様のご努力に敬意を申し上げ、
 聊かなりとも成果が挙げられたことの祝意言上まで。


引き続き、何人かの方々からコメントが寄せられた;

M.I氏
NHKテレビ、禁断の科学、完全にテキストの内容と変っていました。
これは皆様方から沢山の抗議をNHKに寄せられた成果です。18日の運営会議
では是非ともこの成果を話し合い、お祝いをしようではありませんか。互いに力
をあわせればこのように正論が通ります。この成果に力を得て、今後もますます
原子力の健全な発展に貢献して行こうではありませんか。

T.H氏
池内教授のテキストでの論調が全く陰をひそめ、穏やかな口調になり、なにやら言いにくそうな口調でしたね。私は一応の成果と思いますが、この番組でも問題があると思っていますので、いまこの点を整理しているところです。纏まり次第NHKの担当デイレクターに送付する積もりです。

T.T氏
余りに腑抜けの番組。こんな番組を報道する意味があるのか?
取り下げる勇気もなく茶化した番組。
人間は何かトライしたくなる。それが原子力なのか? 
生きねばならぬ。エネルギーの必要性も語らずに、
これまでやってしまった経緯を語っているNHK。
全くの無能白痴ぶりにアキレました。

立派な実設備を背景にあのような解説は、全くの冒涜、背信です。
原子力に頑張ってこられた方々が、
腑抜けの間抜けの説明にどんな印象だったか?
伺いたいですね。



「葉隠れに潜みて」

2006-01-16 18:00:07 | 和歌
 
 「うつろ庵」の柴の戸に植えてある山茶花は、木が大きく伸びない矮性で、丸く仕立てた伽羅玉の脇にひっそりと咲いている。花付きも派手に此れ見よがしに沢山咲くのではなく、木の葉隠れに一つ二つが控えめな咲き方をする。それなりの床しい名前を持った山茶花ではあろうが、その名を知らないのが残念である。


 



             幾とせか昔の挿し木を慈しみ

             吾子を誇る妻と観しかな



             葉隠れに山茶花咲くはつつしみを

             湛えて床しき風情なるかな



             葉隠れに潜みて咲くも匂いたつ

             オーラを具える山茶花なるかな





「幼き冬日を」

2006-01-15 21:41:17 | 和歌

 「うつろ庵」の狭い庭には、何時の間にかこの株が沢山増えた。正しい名称を知らないが、俗に「銭の木」とか「銭サボテン」と呼んでいるようだ。正真正銘の「銭のなる木」であれば、我が家は余程の金持ちになっている筈であるが、どうも俗説はあてにならぬようだ。

 この時期には、緑の葉の縁に赤紫が差して、虚庵夫妻を愉しませてくれる。既に花莟を多数つけているが、やがていっせいに白い小花を咲かせよう。虚庵居士は寒い今の時節の、葉の表情がえも言えず愛おしく、好きである。


 
 

  

             緑なす厚き葉肉はいとしくも

             赤紫の色差す冬かな



             葉の内ゆ淡き緑の花莟

             のぞけば既に赤み差しきて



             いと寒き昨夜の凍みはおみな児の

             指先こごえて赤み差すなり



             指先を朝日にかざして揉みしだく

             幼き冬日をおもほゆるかな





『NHK「知るを楽しむ」に物申す』

2006-01-14 22:08:16 | 和歌

 『NHK「知るを楽しむ」に物申す』とのタイトルで、NHKに注文を付けた。

 お遊びではなく、真摯な抗議文をご紹介する以上は、正々堂々と名乗るが筋であろう。
 抗議文の署名は、非営利活動組織 エネルギーネット代表 小川 博巳 とした。



 

  

I. 1月16日放送「原子力の現在」に物申す

NHK教育テレビでシリーズ放送されている「禁断の科学」のテキスト、1月16日放送予定の「原子力の現在」を読んで驚いた。随所に「事実誤認又は意図的な混同」、ないしは「反原子力発電の記述」が氾濫していて、目を疑った。
各論は後述するとして、結論を先に申しあげたい。

1.1月16日第6回「原子力の現在」の放送を中止するか、或いは、既に多くの諸賢からご指摘があった部分を全面的に改められたい。また販売済のテキストについては、国民に誤った情報を提供したことにつき適切に訂正の報道をし、改訂版を発行されたい。

2.上記を受容れられない場合は、NHKとしての然るべき考えを、番組冒頭で分かり易く表明すべきである。その場合は、「一人の反原子力発電の意見紹介」であり、いずれ下記第3項の報道をすることを、明言されたい。

3.「我国のエネルギー政策が如何にあるべきか」については、一個人の偏った意見の紹介ではなく、政策決定に関与する立場の政治家・事業者・学識経験者・国民代表などを交えた真摯な議論を重ね、それを報道されたい。


II. NHKの判断を問う

このシリーズ放送に対するNHKの「ネライ」を、改めて確かめた。NHKホームページの記述によれば、『「NHK知るを楽しむ」は、各曜日ごとにテーマを設けた新しいスタイルの教養・情報番組です。(中略)「私だけが知っているホンモノの世界」をご紹介していきます』とある。
国民はNHKが報道する「これがホンモノ」だとする情報発信を、疑いも無く素直に受け入れることになろうが、その実は「事実誤認又は意図的な混同に基づく情報発信」であり、ないしは「反原子力発電の偏った見解紹介」であることに、NHKはどのようにして責任を取る積りであろうか?
NHKは、事業収入の総額672,400, 000,000余円の殆どを、国民の受信料で賄なうことが許されている、我国唯一の「公共放送」である。その公共放送・NHKが、「エネルギー政策基本法」或いは昨年閣議決定された「原子力政策大綱」で、原子力発電を我国の基幹エネルギーとして位置付け、「国策」として推進していることをよもやご存知ない筈はあるまい。しかも今回の報道は、練りに練ったシリーズであり、NHK内部でも慎重に審議を重ねた放送番組であろう。NHK内部にも原子力発電に対する深い知識と、公平な判断が出来る人材は豊富に居られるであろうし、また、外部にそれを求めれば積極的に協力する学識経験者は多い筈である。「原子力の現在」の報道は、「単に池内了教授の個人的な見解を、軽く紹介するだけ」とはよもや申すまい。
「原子力の現在」にたいするNHKの判断を問う所以である。


III. 「NHK倫理・行動憲章」に照らして

1月16日に放送予定の「原子力の現在」は、どう考えてもNHKの報道として相応しいとは思われない。筆者の個人的な判断基準・倫理基準をベースに物申しても「公正さ」を欠くので、NHKが自ら定めた「NHK倫理・行動憲章」を紐解いてみた。
「原子力の現在」のテキスト及び諸賢から寄せられている指摘事項と照合して、速やかにご検討願いたい。

先ず冒頭に、「~視聴者・国民の負託に応える公共放送であるために~」とある。
視聴者・国民は、「事実誤認又は意図的な混同に基づく情報提供や、偏りある思想」を聴きたいと公共放送に求めてはいない筈だ。しかしながら視聴者・国民は、科学者でもなく専門知識を持ち合わせていなければ、NHK教育テレビに8回シリーズで出演する「早稲田大学教授の科学者」の肩書きに惑わされて、報道を鵜呑みにするであろう。これを「視聴者・国民の負託に応える公共放送」というであろうか?

また、「公共放送の使命と社会的責任,その影響力をあらためて深く自覚する」とある。
NHKの報道に対しては、視聴者・国民は全幅の信頼を寄せて来た。だからこそ国民は、総額672,400, 000,000余円の巨額な事業費を、受信料で負担することを肯じている。それは正しく、「偏りの無い正しい報道」に対してであることは言を待たない。
「事実誤認又は意図的な混同に基づく情報提供や、偏りある思想」が放映されたときの「社会的責任と,その影響力」を、あらためて深く問いたい。

また曰く、「放送倫理を守り豊かで質の高い放送を行います。」ともある。
職員の金銭的な清潔さだけが、放送倫理ではあるまい。何より求められるのは、社会の木鐸としての「報道内容の倫理性」ではあるまいか。「事実誤認又は意図的な混同に基づく情報提供や、偏りある思想」の押し付けは、この行動憲章に沿わないと思うが如何であろうか?

更に、「会長,役員および各組織の長は,本憲章の精神の実現がみずからの役割であることを認識し,その徹底を図ります。また,本憲章に反する事態が発生したときには,みずから問題解決にあたり,原因究明,再発防止,社会への迅速・的確な情報開示と説明責任を果たします。」とある。
この行動憲章は、よもや空念仏では有るまいと期待する。

行動指針には、「正確な放送を旨とし,事実をゆがめたり,視聴者の誤解を招いたりするような放送は行いません。放送が事実と違っていることが明らかになったときは,速やかに訂正します。」と謳っている。
誠実な情報開示、説明責任、速やかな訂正を願って止まない。


IV. 不適切な記述箇所の指摘

「事実誤認又は意図的な混同に基づく情報提供や、偏りある思想」については、既に多くの諸賢からご指摘が寄せられているが、念のため筆者が気が付いた該当箇所を指摘する;

日本放送出版会 第1巻第17号テキスト「NHK知るを楽しむ-この人この世界」

 頁    記述箇所 (不適切理由)

111    温度に換算するとおよそ二〇〇〇万度 (事実誤認/意図的混同)
111-112 原子核反応による太陽の火を~原子力の危険性の本質なのである。 (偏り表現)
111    化学反応と原子核反応の対比(表)
       2000万度 (事実誤認/意図的混同)
116    原子炉部分は二〇〇〇万度~(原子核反応) (事実誤認/意図的混同)
117    その再処理技術の困難~核燃サイクルに固執している。(事実誤認/偏り表現)
120    核燃サイクルは迷走を続けているのが現実 (事実誤認/偏り表現)
124    原子炉へのミサイル攻撃や ~
       膨大な犠牲が出ることだろう。 (事実誤認/偏り表現)
124    核分裂反応が ~ 燃料棒を取り換えている。 (事実誤認/意図的混同)
124    「高レベル放射性廃棄物」 ~敷地内に保存  (事実誤認/意図的混同)
124    最低で一〇〇〇年以上  (事実誤認/意図的混同)
125    格納容器は、常に ~ 金属疲労で壊れる (事実誤認/意図的混同)
126-127 輸送過程など~チリトリやバケツやゾウキンが最も適しており~
      被爆量は莫大なものになる。(事実誤認/偏り表現)
127    必ずしも説得力があるわけではない。  (事実誤認/偏り表現)
127-128 日本があえてプルトニウム回収に固執する ~ 
       疑いを払拭できないでいり。 (事実誤認/偏り表現)
128     MOXを使えば発生する中性子数が~
       原子炉の危険性が増すのだ。 (事実誤認/偏り表現)
129    二酸化炭素を選ぶか、放射能を選ぶか  (偏り表現)
130    放射性廃棄物に関しては ~
       実に危険な道を歩んでいる  (偏り表現)
130    原発の発電単価が安いのは ~
       原発は安いとは決して言えないのだ。 (事実誤認/偏り表現)
130    原理的には無限にある ~ 肝要である。 (偏り表現)