うちわサボテンが、鋭いトゲに守られて咲いていた。
手のひらサイズの茎が次々と連なるこのサボテンは、漢字名を団扇仙人掌と尤もらしい名前が付けられているが、中国古来の表現をそのまま借用したもののようだ。時にはこの仙人掌の縁に、蕾と花と果実がびっしりと並んで、思わぬ共演を鑑賞させられるが、個人的な好みとしては精々一つ二つ程度、爽やかに咲いて欲しいと願うのは、勝手というものだろうか。
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いと長く鋭きトゲを身に纏ひ
仙人掌笑みたり 誰を恋ふるや
丈夫はトゲも刃も物とせず
熱く抱くを 夢見る乙女か
花が咲いた後には果実を残すが、その果実も緑の茎も双方が食用になるという。物好きな虚庵居士は、一度挑戦してみたいものだが、何と申してもあの鋭いトゲと、無数に散らばっているごく短い棘を払いのけて、手を出す勇気は流石に無い。
メキシコでは食用に栽培しているそうだが、肌を突き刺すトゲの存在にも拘わらず、食用にするにはそれなりの理由があるに違いない。メキシコ事情はトンと無知の虚庵居士には、想像を超える世界だ。
己の拙い知識だけで、全てを判断しようなどと考えること自体が浅はかな振舞だと、「うちわサボテン」は諭しているようだ。
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サボテンには 仙人掌なりの事情あらむ
またそれなりに食す事情も