遊歩道の脇に、「小紫」を見つけた。
細い枝には二・三ミリの小さな実が、房になって既にビッシリと生っていた。まだ緑色だが、枝の付け根に近い辺りでは、仄かに紫が発色し始めていた。
こむらさきの緑の実房に遇いしかな
幽かに色づくはしき小粒ぞ
立ち去ろうとして、枝先に花が咲いているのを発見した。何と僥倖と言うべきか。
枝先の一番端に、ごく小さな群花がひっそりと咲いていた。「紫式部」も「小紫」も、鮮やかな紫色の実に惹かれて来たが、花に出会えたのは初めてである。花自体はごく地味で華やかさもなく、目立つ存在ではないが、紫の実を予感させる薄紫の花弁が、密集して咲いていた。
写真では拡大されているが、実物は数分の一程度の大きさゆえ、注意して見ないと見落としそうな花だ。
やがて一ヶ月ほどもすれば、見事な紫の実房が目を愉しませて呉れるに違いない。
その頃には虚庵夫人を誘って観に来よう。楽しみがまた一つ増えた。
偶々に小花の揺れるを目にとめぬ
さ枝の先の はな小紫を
たのしみは妹をいざない訪ね来む
こむらさきの実の紫濃きころ