薄赤紫の「八重槿」と「底紅」が、遊歩道を挟んで相対して咲いていた。
先ほどパラついた雨の雫が、「八重槿」の花びらに数滴残っている表情は、顔をくしゃくしゃにして泣き明かした乙女の風情だ。何とも人懐っこい槿だ。
道の反対側に咲いていた「底紅」は、純白の大輪の花芯に、鮮やかな濃い赤紫と淡黄色の蕊が、見事な調和を保って、キリッと咲いている。カメラを構えていたらザワザワッと風が吹き抜けて、「底紅」の雫は振り払われてしまった。雫が無いこともあってか、こちらは歳若い貴公子然とした気配で、「八重槿」とはお似合いのカップルに見えた。
「底紅」はお茶花としても活けられる故であろうか、「宗旦槿」とも呼ばれているようだ。蝉しぐれの喧騒の中で、心を鎮めて一服の茶をすするのも、悪くない趣向だ。
紅白の槿の花と語らへば
蝉はしぐれぬヤキモチ妬くにや
蕎麦屋まで炎暑を避けむとゴルフ傘に
妻寄り添えば「ご両人」の声
一服のお薄に代えて 蕎麦湯割りを
口に含みて蝉しぐれ聞く