「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「おみなごと若武者」

2006-03-31 11:12:32 | 和歌
  





             おみなごのはじらいつつも笑み集ふ

             ピンクの群花ヒヤシンスかな




             陽だまりに少女ら集うかはじらいて

             ハジケル声をヒヤシンスに聞く


  





             額には雫をとどめ若武者は

             凛と咲くかなムスカリ従え



             逞しき若者の意思を漲らせ

             青紫にヒヤシンス咲く







「ハシャグ歓声」

2006-03-30 00:03:25 | 和歌

 近くの小学校の花壇を、虚庵夫人と共に見せて頂いた。

 学期末のお休みで静まり返った校庭には、さくら、クロッカス、桜草、ヒヤシンス、名も知らぬ黄色の花等などが咲き乱れていた。子供達が歓声をあげながら植えたであろう花壇は、間もなくやってくる子供達のために、それぞれ精一杯に花を咲かせて、その姿がいじらしい。 

 





             相共に信じて寄りそう白妙の

             クロッカスの花 妹と観しかな


  





             クロッカスの球根植えにし子供らは

             新たな学期に 胸トキメカセルか



             子供らのハシャグ歓声無けれども

             校庭の隅に クロッカス咲く







「水綿(あおみどろ)満つ」

2006-03-29 00:22:51 | 和歌

 小学校の中庭の水槽には、「あおみどろ」が満ちて、金魚が冬眠していた。

 最近の住宅地では、殆ど見かけなくなった「あおみどろ」が、これ程に繁茂し、これ程に美しい情景に出会ったのは幸運であった。 間もなく一年生が入学して、この水槽の周りも、賑やかな日々を迎えるであろう。 学期末の閑静な小学校で、一時の至福を堪能させて頂いた。


  




             水槽の水綿(あおみどろ)満つ陽だまりに

             金魚は眠るや身動きもせず



             常ならば子供ら集ふ水槽は

             金魚眠りて物音もせず



             やがて来る一年生を待ちわびて

             金魚の夢みるあおみどろかな



             あおみどろ定め無き身を嘆くまじ

             寄り添う金魚を支えて麗し
  


             混沌の人の世写すあおみどろ

             身はおぼろにも 我が身を育てて








「乙女の手捌き」

2006-03-28 10:49:06 | 和歌
  




             爺様にいだかれて笑む孫娘の

             姿に似るや房さくらかな



             紅の ほほ匂いたち白ばめば

             おみなご乙女に 育ちゆくかも



             咲き初むるさくらは淡く色たたえ 
 
             乙女の風情に匂い立つかも



  




             咲き初めし桜の枝先ゆれ舞うは

             浅葱のころもの乙女の手捌き







「寄り添い座る」

2006-03-27 01:03:31 | 和歌

 「さくら」に焦がれる虚庵夫妻は、お握りを篭に入れ、手を携えて花見に出掛けた。

 未だ咲き始めゆえ「花愛ずる人」はまばらで、傍若無人な車座の大宴会には幸いにも出会わなかった。親子三代のささやかな「お花見」のお弁当、お孫さんを連れた爺と婆の連れ添い、電動車椅子の娘さんを誘なって、桜の花の下にやって来た父と娘。それぞれ仄々とした情景の中に、虚庵夫妻も腰を下ろして、しばし桜を愉しんだ。

  





             咲き初むる桜に焦がれわぎもこと

             ささとおにぎり 携えて来ぬ



             見上げれば桜つぼみのその先に

             青空満つるもやがて消えなむ



  




             車椅子の娘をかいなに抱きつつ

             共に見上げる桜花かな



             父と娘の寄り添い座るふた影の

             おぼろにかすむは桜のゆえか
 

   





                な踏みそ 

             桜古木の 根方にも

             ふくらむ蕾は 

             いま 咲かむとす








「椿の花壺」

2006-03-26 13:56:34 | 和歌

 花壺に溢れんばかりの涕を湛えた、白椿に出会った。 
 昨夜の雨のしずくが、宗庵椿の花壺に溜まったものであろうが・・・。

 さる花道家が亡くなられてから、二週間ほどになるが、椿をこよなくいつくしんだ花人の逝去を悼んで、宗庵椿は泣き明かしたのかもしれない。その様に受け止めると、椿のせつない思いが、此方まで伝わってくるような気がした。


  





             逝きしひとを慕ひて泣くや白妙の

             椿の花壺 涕をたたえて



             花を知る逝きにしひとを偲びつつ

             湛える涕は供養なるらむ







「華やぎ忘れず」

2006-03-25 00:30:26 | 和歌

 「うつろ庵」の近くの遊歩道に、立て絞りの見事な椿「蝦夷錦」がある。

 通りがかりにふと根元を観れば、先ほどまで枝に咲いていたかのような華やぎを保って、 一輪の椿花が散り落ちていた。一重の藪椿の、清楚で純粋な雰囲気とはまた別な、命を掛けて華やぎを演じる雰囲気は、艶やかな往年のシャンソン歌手を思わせる。椿の花は、花咲く姿のまま潔く落花するのが理とはいえ、地に落ちてもなおシャンと、プライドを保ち続ける姿に、かのシャンソン歌手の晩年とイメージが重なった。

 無言ではあるが多くの訓えを頂き、それ故になお一層、いとおしさが募る思いだ。


  






             散り落ちて観る人なくも朽ちるまで

             華やぎ忘れぬ蝦夷錦かな



             地に還るその時までも椿花

             あはれ矜持をたもち続けて



             散り落ちた後の姿をいとをしむ

             人もいませば安らぎ逝きませ






「雅な気配り」

2006-03-24 00:17:50 | 和歌





             けぶりたつ春の霞をうちかけて

             花桃おぼろに咲きにけるかも



  




 
             色添えに若葉をあしらう花桃の

             雅な気配り たれを思ふや




  



 
             佳き花の結びし後に桃の実の

             生らぬといふは 定め哀しも







「紅白 花咲く」

2006-03-23 00:05:50 | 和歌

 ご近所の二色咲きの木瓜が、咲き誇っていた。

 定年退職の後、ミニ盆栽を手がけ、庭木にも凝っているご老人がいる。見事な二色咲きの木瓜が、垣根越しにせり出していて、道行く人を愉しませている。通りがかりにご老人と出合って、写真を取らせて頂き、薀蓄を傾けた話も伺った。紅白の木瓜の木取りをして、増やす準備中だという。紅白の花を咲かせる枝を選び、何れ時期をみてミズゴケを巻きつけ、発根を促してから切り取り、露地に下ろすのだという。


 



 
             一枝に紅白のボケ咲き分ける

             神の神秘に驚かれぬる

 



  


             白のみの枝もありせば紅の

             純血保つも木瓜の誇りか



             ジジ様は紅白花咲く枝を選び
 
             木取りの準備を愉しむらしき






「小花群れ咲き」

2006-03-22 00:26:36 | 和歌
  



 
             萌えいずる若葉に混ざり白妙の

             こめつぶ開いて 雪柳咲く



             日もおかず小花群れ咲き広ごりて

             枝ごと揺れる雪柳かな



             時ならず枝に積れる雪ならめ

             朝日に映える雪柳かも


  





 ご近所の、働き盛りのご主人が急逝された。奥様がご挨拶に来られて、長男ゆえに、生家にお連れして葬儀を営まれるという。物言わぬ長男を迎える、年老いたご両親の思いは如何ばかりであろうか・・・。黒塗りの霊柩車をお見送りしたとき、一陣の風に、もがき苦しむような風情で雪柳の枝が揺れ、咲いたばかりの花びらが、舞い散った。



             若くして逝きにし君を葬送(みおく)れば

             風にもだえる雪柳かな  



             時ならず吹き抜ける風雪柳の

             花びら散らすは別れの涙か






「かたらふ風情ぞ」

2006-03-21 12:56:48 | 和歌

 庭先の水仙が咲いた。

 黄檗(きはだ)色の花びらを精一杯に開いて、金赤の口元を誇る花芯を守るかのように、首をかしげている風情は、手弱女の叙情が滲み出ている。吹き荒れた昨夜の嵐にもたおやぎ、今朝見ると花びらに雨のしずくを湛えて咲いていた。

 そよ風に花びらをふるわせて、何やら話しかける素振りに見えたのは、虚庵氏の独り善がりであろうか。

  




 
             きぞの夜のすさぶ嵐もたおやぐか

             水仙ひと花しずくを湛えて



             きはだ色の花びらふるわせ水仙は

             朝の陽待ちつつ かたらふ風情ぞ
  






「壺に咲けるは」

2006-03-20 00:32:20 | 和歌
 




 
             粒々にムスカリ群れ咲く花壇には

             萌えきそうかな 水仙 芍薬・・

 

             ムスカリの花は思いを含みてむ

             一粒ひとつぶ壺に咲けるは



  




             しどけなく細葉うち敷くムスカリは

             寝覚めの花か首をもたげて



 やんごとなき際の御方なれば名を伏せて雅男(みやびお)と申す御方が きぞの夜訪ね来たれば あれこれの想いの溜まりおれば泪の壺よりとりいだして物語するに お聴き召されし姿もいと慕わしゅう 「むすかり」は取り乱して しきたえも衣もしどけなくうち乱れぬるなり 
明けくればとて君立ち行くきわに詠みてたてまつる       (戯作 むすかり日記)



             しきたえの衣のしどけなき朝に

             きみ立ち行くか「むすかり」残して







「十字十字に」

2006-03-19 00:31:45 | 和歌




 
             連翹の黄色の花びら賑やかに

             十字十字に連なり咲くも



   




             春の陽を受けて豊かに咲き誇る

             黄花の連翹 色鮮やかにして







「タンポポと オオイヌノふぐり」

2006-03-18 00:05:42 | 和歌

 外来種らしいタンポポが咲いていた。

 タンポポに「オオイヌノふぐり」が寄り添って、大柄で天真爛漫な女姓を守る風情であった。
俗な言い方をすれば、「ノミの夫婦」といった風情で、ほほえましい情景であった。

  




 
             「オオイヌノふぐり」が守るタンポポは

             金髪の妹か 笑みを湛えて

 

             おおらかに笑いころげる乙女かな 

             金髪の髪 風に靡かせ  



             野に咲けるタンポポ摘むはうれしけれ  

             総てにそそぐ春の陽を浴び  







「瑠璃色重ねる」

2006-03-17 00:44:57 | 和歌

 藤色のこの花は、「芝桜」の一種であろうか? 

 信州の生家の庭には、ピンクの芝桜が、飛び石の周辺を埋め尽くしていた。飛び石とは言っても、中ほどには一メートル程の平石が置かれ、その石に寝転がって芝桜を観た子供の頃が思い出される。

 うろ覚えだが、花も芝草も姿は同じに見えるが、花色だけがピンクと藤色で異なっている。
多分、芝桜の一種であろうと思われる。


  



 
             花びらのかすかに揺れてそれと知る

             弥生の朝のそよ吹く風かな



             藤色の五枚の花びら花芯には

             瑠璃色重ねるにくき業かな



             夜にいりて春の嵐の音を聴けば

             吹き荒ばるる小花を想ほゆ