「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「Cameron の ゴーカート」

2008-02-19 20:56:44 | 和歌

 Cameron が やって来た!!

 「じじとばば」が待ち焦がれた孫の Cameronくんが、娘のビジネス・トリップに付き合って、 横須賀にやって来た。Cameronくんは、たった一人でじじ・ばばと一緒に寝起きするので、じじは全ての予定をキャンセルして、彼を迎えた。沢山の関係者の皆様には大変申し訳ない思いだが、稀の Cameron の来訪ゆえにご勘弁願いたい。

 5歳になる彼は、マンハッタンの自宅やニュージャージーのレイクハウスでは、補助付きの 自転車を既に乗り回しているが、じじが特別の思いを籠めて用意していた「ゴーカート」が大のお気に入りで、連日、近くの公園にじじを引っ張り出して、スリリングなドライブを楽しんでいる。





              Cameronに じじ誂えしゴーカートの

           覆いをはね除け飛び乗る孫かな


           公園の歩道のステップなんのその

           駆け下り走るキャメロン逞し


           息きらせひたいに汗をにじませて

           夢中のドライブ キャメロンの声






「Cameron の ながい ながーい おてがみ」

2008-02-15 21:11:20 | 和歌

 ニューヨーク/ニュージャージに住んでいる孫の Cameronくんから、長いながーいお手紙が届いた。

 封筒のど真ん中に、歪んではいるが紛れもない「きゃめろん」の自筆サインが、堂々と書かれ、宛名と住所は隅っこに遠慮がちに書かれていた。封を開くと、箱入りの巻紙が出て来た。幅は10センチ足らずだが、長さは何と2メートルを超える超大作の絵手紙だ。
末尾には飛行機の絵と、「ぼく ひこうきにのるよ」と書かれていた。

 今週の週末、娘のビジネスに付きあって、じじ・ばばの住む横須賀の「うつろ庵」にやって来る予定だ。JFK空港からは14時間の長旅になるが、すでにその辛いフライトの経験があるCameronくんは、簡潔な言葉に「覚悟のほど」を書いたものかと想像すれば、「いじらしさ」に胸がキュンとなる思いだ。

 



   
     昨年の夏に描いたじじの絵は

     晩酌いささか すぎにけらしも


     ひらがなとアルファベットを使い分け

     バイリンガルを地でゆく孫かな








   
     ばば様は明るく楽しきお人なれば

     Cameron 描くも たのしきばばなり


     描きつつばばにお話する孫の

     口も手先もとどまることなし
 


             きゃめろんのながーいおてがみ玄関に
     
             飾りて待つかな首長くして






「陽だまりの残菊」

2008-02-09 23:35:45 | 和歌
 
 金木犀の足もとの置いた小鉢の残菊が、陽だまりに微かに揺れていた。

 ご近所の菊作りのご老人が、鉢に植えた小菊を携えて来られて、一時の立ち話を楽しんで帰られた。思い出せばあれから、かれこれ十余年も経たであろうか。 あの時頂戴した小鉢の菊が、 「うつろ庵」の庭木の根元でひっそりと咲いていた。






              今は亡き爺の形見の小菊かな

           庵の庭に生きながらえて


           木漏れ日を求める姿か小鉢より

           身を乗り出だすも気品を湛えて


           年を経て吾が身は爺の齢かな

           与えるものの無きぞ哀しも






「芽吹きの想いを」

2008-02-06 17:36:37 | 和歌

 以前にも紹介したが、「うつろ庵」の庭には「金の生る木(花月)」がいつの間にか増えた。
「木」とは名ばかりで、葉も幹もたっぷりと水分を含んだ多肉植物だ。 気が付けばもこもこと 枝葉を広げて邪魔になるので、時には乱暴ではあるがかなり太い幹から、エイヤッと素手で折取って始末する。

 折取った幹の断面は瑞々しい薄緑色をしているが、やがて乾燥して白色化する。そのままうち忘れて暫く経つと、何と切り口の端から、可憐な新芽が生えて逞しく成長する。南アフリカ原産だと云うが、身に蓄えた水分と類いまれな再生能力により、寒冷な土地でも逞しく生き続けているのであろう。昨今のか弱い男どもにも、見習わせたいものだ。






  
           いかならむ物語秘めてみんなみの

           アフリカよりや 嫁ぎ来つらむ


           こぞの秋矯めにし傷をはや癒し

           あわれ花月は芽吹く今日かな









 
           陽に透ける稚けき手かなみどり児の

           葉先をうすく紅に染めて


           みんなみのあふりかをいでてひのいずる

           くににいのちをながらふきみかな


           言の葉を持てば聴かなむ立つ春に
           
           芽吹きの想いの積もるかずかず







「蘇芳梅の綻び」

2008-02-05 22:15:07 | 和歌

 全国的な寒波と降雪に見舞われた一両日であった。

 三浦半島の横須賀にも、何年振りかで積雪があった。
「うつろ庵」の周辺では、道路の雪も瞬く間にとけてしまったが、たった1キロほど離れた市街地ではかなりの積雪が、2日を経た今日もまだ残っていた。

 郷里の信州では、「雪の明日は裸の洗濯」との言い伝えがあって、降雪の後には不思議なことに、暖かな好天に恵まれたものだった。まさか「裸になって洗濯をする」ほどの暖かさではないが、寒冷地の住民の思いを素直に伝える名言だ。

 そんな好天に恵まれて、「うつろ庵」の深紅の蘇芳梅が綻んだ。






              青空を背に口つぐむ紅梅と

           日ごとに交わすは朝の語らひ


           大寒の梢に固き蕾かな
 
           日に日に色づき膨らむおとめか








              郷里の古老の言葉 「雪の明日は

           裸の洗濯」 陽ざし好きかな

    
           立春を寿ぐ気配に蘇芳梅の

           綻び 咲くかも 庵の庭に


           キャメロンが娘と共に来るといふ

           孫の笑顔を梅花に観しかも







「春待つ桜」

2008-02-01 15:33:19 | 和歌

 豪雪地帯では3メートルを超える積雪だというが、雪のない横須賀でも、かなりの寒波に見舞われるこの頃だ。

 郷里の信州・諏訪は、シベリア寒波による降雪も北アルプス連峰に遮られるので、雪の少ない盆地は寒さだけが誠に厳しかった。子供の頃から寒さには鍛えられた筈であるが、長年雪も氷もない土地で暮していると、体が鈍ってすっかり寒がりになった。虚庵夫人に言わせれば、「おじいさん」になった証拠だと云うが・・・。

 陽ざしに誘われて「うつろ庵」の庭に降り立ったら、二・三年前に植えた河津桜の枝が、花芽を膨らませていた。まだ幹も枝も頼りなげな桜であるが、大寒にも拘わらず着実に花咲く準備を整えている姿に、「寒がり」の虚庵居士は喝を入れられた気分だ。 







              大寒の青空に向け枝のばし

           みどりに芽吹くか 河津桜は


           逞しくおのれの意思を漲らせ

           春待つ桜は頼もしきかな








 植えた頃は虚庵居士の腰の高さだったが、何時の間にか背丈の倍ほどにも伸びた。
「うつろ庵」の庭は、桜を育てるほどの広さもないし、土地も肥沃ではないが、そんなことは意にも介さぬ態の桜木である。


              すでにはや我が背を超えて枝のばす

           河津桜を しみじみ観しかな


           見上げれば苞を開きて二つ三つ

           莟は陽ざしをシカと捉えて








 陽を受けて、みずみずしく色づかせた莟を見い出して、感嘆した。
莟の艶やかな色合いとふくよかな姿は、淡い萌黄色の苞が莟を優しく慈しむ気配と相俟って、何とも雅な雰囲気であった。「うつろ庵」には似つかわしからぬ、典雅な世界がそこには醸されていた。
  

              陽を受けてうす紅に装うは

           やがて咲き初む弾むこころか


           萌黄なる打衣つけて雅にも

           春の襲に装う君はも





  注 萌黄(もえぎ) 打衣(うちぎぬ) 襲(かさね・重ね色目)
    十二単(じゅうにひとえ)の襲ね色目、唐衣の下に着る打衣などは、
    平安時代・源氏物語の世界のお話しだ。