kotoba日記                     小久保圭介

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オジのアルバイト

2009年06月27日 | 生活
暑い日。

昨日のそうめんの話の続きです。
オジは以前、
養老の滝という観光地で、
アルバイトをしたことがあったそうです。
夏期の短期アルバイトで、
流しそうめんを運ぶアルバイト。
聞いていて、
もう笑ってしまったので、
ここに記します。

なんでも、
養老の滝というぐらいだから、
高低がある観光地で、
僕も一度行ったことがあるのですけど、
山です。滝があります。
その脇というか、
山の中腹から、
滝と同じく、
そうめんを流す、
いわゆる流しそうめんです。
朝、10時からそうめんは流れ、
昼時にはかなりの観光客が、
めんつゆと割り箸を持って、
流れ来るそうめんを箸で掴んでは、
「掴んで」とオジは言いました。
で、
当時は本当に窒シ分に切ったのを、
繋いで、「急流の川」にしていたそうです。
上からそうめんが流れてきて、
最終地点は、大きなザル。
上でそうめんを流す人は、
その量を眼下に見える人の頭数で流します。
携帯電話もなかった時代。
いくら人が競ってそうめんを「掴んで」も、
最終地点の大きなザルには、
すぐに大量のそうめんが山になります。
オジの仕事は、
そのそうめんが山になったザルを、
山の中腹、いわゆるそうめんの始発点まで持っていく仕事。
ザルを持って、山道を走って登る。
それを繰り返す仕事。
「マジか!」
と僕が言うと、
「本当だ」
とオジは真顔で言います。
ところが、
何度も往復して、
上でそうめんを流す人は、
「大丈夫か」
と声を鰍ッてくれはするけれど、
他の走者を用意してくれるわけではなく、
もくもくと、そうめんを茹で、
下からのそうめんを混ぜて、
流していたそうです。
時々、氷も混ぜて。
オジは暑い時期、
汗びっしょりになって、
そうめんが山になったザルを持って、
山を駆け上りました。
ところが、
もう嫌だ、
と思い始めたのは、
お昼過ぎで、
客足が薄くなり、
嬌声も聞こえなくなってきた夕方だったそうです。
今晩、また客がそうめんを「掴む」と、
オジは思ったそうです。
全部、「掴んで」くれたら、
俺の仕事も楽になる、
と思ってはみたけれど、
やはり、「掴みきれない」そうめんは、
滝壺に落ちるが如く、
ザルに山になります。
オジはそうめんの山になったザルを持って、
頑張って、山を駆け上り、
もうくたくたになったそうです。
夕方、何十回目かの、
「駆け上がり」をやって、
見ると、イノシシがオジの前に、ヌッと出てきたそうです。
で、オジがびっくりして、
きっとイノシシは、そうめんが食べたいに決まっている、
と判断したオジは、山になったそうめんを、
沢蟹が歩く苔だらけの山道に、
そっと置くと、
案の定、
イノシシは、
逃げるオジを知らずという顔で、
そうめんを食べ始めたそうです。
それを逃げたあと、
見ていたら、
何か、世の中の一切合切が嫌になり、
アルバイト料ももらわずに、
そのまま、養老の滝を後にして、
走って、名鉄の駅まで行ったそうです。
「マジか! オジ!!」
「嘘」
と、
オジは言いました。おしまい。

という話を、
労働場の誰かに、
話したくてしょうがなかったのですけれど、
受けそうな人がいなかったので、
しょうがない、
ここに書きました。
たまには、こういう嘘んこ日記、
書いてみたかったんです。暑いし。
コメント
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