今朝、わいとオジの前を、女と自転車の男が通り過ぎた。
女に自転車の男が怒鳴っていて、
女も負けぬほどの激で、怒鳴り返していた。
女は南へ速歩。
男も南へ追いかける。
痴話喧嘩。
女はくるりと向きを変え、
北に向かって速歩。
男も自転車の向きを変え、追いかける。
怒鳴り合いながら、我らの前を通り過ぎ、
また女は南へ。
男も南へ。
ニワトリのつがいみたい。
今度は、
女が走って北へ移動。
「うるさい」とかの類の怒号の飛ばし合い。
男は南の角へ向かい、消えた。
女がわいとオジの前をうろうろし、
男が行った方向に行こうかどうしようかと、
迷っているようだった。
ので、オジが声をかけた。
「・・・お知り合いですか?」
「違うに決まってるでしょ!!!」
僕はメモした。
つまりは、ストーカーみたいなもの。
で、オジが、
「今、南に行ったら危ないから、こっちの北の道を行きなさい」
と言うと、
「はい」
と興奮醒めやらぬ女は言った。
でも、うろうろしているので、
「どうぞ」
と労働場の中に女を入れた。
「もう大丈夫ですから」
と落ち着かせようとしたけれど、
女は勝ち気で、あのくそたわけ男!
ってな感情むき出して、時計を見ている。
出勤時間を気にしているのだ。
「言ってくれたら守ったのに」
と僕は言った。
「ありがとうございます」
と女は少し微笑んだ気がしたけど、
出勤時間を気にしていた。
で、ほどなく女は自分の道を歩き始めた。
振り向かずに。
都会は魔物でいっぱいだ。
それにしても、
「あの男、殴らなくてよかったですねえ」
とオジに言うと、
「わしらがいるから殴らなかった」
「ほうか」
「おうよ」
「小久保君、あの女がもしかしたら悪いかもしれんぞ」
とオジ発す。
「え」
「見たろう。凄い勝ち気だ。もしかして、自転車の男に非はなくとも、
女の態度で、腹が立ったのかもしれん」
まあ、いずれにしてもあれじゃあもてない男だ、
というのがわいらの見解。
女は強いと、よく言われる。
なので、男はどうやったっても勝てない。
ま、暴力とかは論外ですけど。
で、男がいかにして女に勝つか。
というのは勿論、愚問である。
勝つわけがない。
必ず負ける。
とにかく、従うのである。
不条理でも従うのである。
口応えして、良いことなんてひとつもない。
言いたいことは言わなくちゃ、
なんて嘘である。
オジは言う。
「わしは自由に涙を操作できる」
と。
そう。
わずかな抵抗のみは可能である。
で、わいは考えた。
男は女になるべく。
---
今度はピストル男登場。
オジが手招きするので、
見ると植えこみに、
モデルピストルで、
打っている。
危ないヤツ。
若い男つーよりも、
青年だなあれは。
で観察していると、
女二人というか、少女だなあれは。
と三人で、自転車に乗って、
東に向かった。
都会は魔物でいっぱいだ。
---
「春光会」
女に自転車の男が怒鳴っていて、
女も負けぬほどの激で、怒鳴り返していた。
女は南へ速歩。
男も南へ追いかける。
痴話喧嘩。
女はくるりと向きを変え、
北に向かって速歩。
男も自転車の向きを変え、追いかける。
怒鳴り合いながら、我らの前を通り過ぎ、
また女は南へ。
男も南へ。
ニワトリのつがいみたい。
今度は、
女が走って北へ移動。
「うるさい」とかの類の怒号の飛ばし合い。
男は南の角へ向かい、消えた。
女がわいとオジの前をうろうろし、
男が行った方向に行こうかどうしようかと、
迷っているようだった。
ので、オジが声をかけた。
「・・・お知り合いですか?」
「違うに決まってるでしょ!!!」
僕はメモした。
つまりは、ストーカーみたいなもの。
で、オジが、
「今、南に行ったら危ないから、こっちの北の道を行きなさい」
と言うと、
「はい」
と興奮醒めやらぬ女は言った。
でも、うろうろしているので、
「どうぞ」
と労働場の中に女を入れた。
「もう大丈夫ですから」
と落ち着かせようとしたけれど、
女は勝ち気で、あのくそたわけ男!
ってな感情むき出して、時計を見ている。
出勤時間を気にしているのだ。
「言ってくれたら守ったのに」
と僕は言った。
「ありがとうございます」
と女は少し微笑んだ気がしたけど、
出勤時間を気にしていた。
で、ほどなく女は自分の道を歩き始めた。
振り向かずに。
都会は魔物でいっぱいだ。
それにしても、
「あの男、殴らなくてよかったですねえ」
とオジに言うと、
「わしらがいるから殴らなかった」
「ほうか」
「おうよ」
「小久保君、あの女がもしかしたら悪いかもしれんぞ」
とオジ発す。
「え」
「見たろう。凄い勝ち気だ。もしかして、自転車の男に非はなくとも、
女の態度で、腹が立ったのかもしれん」
まあ、いずれにしてもあれじゃあもてない男だ、
というのがわいらの見解。
女は強いと、よく言われる。
なので、男はどうやったっても勝てない。
ま、暴力とかは論外ですけど。
で、男がいかにして女に勝つか。
というのは勿論、愚問である。
勝つわけがない。
必ず負ける。
とにかく、従うのである。
不条理でも従うのである。
口応えして、良いことなんてひとつもない。
言いたいことは言わなくちゃ、
なんて嘘である。
オジは言う。
「わしは自由に涙を操作できる」
と。
そう。
わずかな抵抗のみは可能である。
で、わいは考えた。
男は女になるべく。
---
今度はピストル男登場。
オジが手招きするので、
見ると植えこみに、
モデルピストルで、
打っている。
危ないヤツ。
若い男つーよりも、
青年だなあれは。
で観察していると、
女二人というか、少女だなあれは。
と三人で、自転車に乗って、
東に向かった。
都会は魔物でいっぱいだ。
---
「春光会」