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新コーナー「国家主義的な日本礼賛者による強引な聖徳太子論」を始めます

2023年04月19日 | このブログに関するお知らせ

 「聖徳太子はいなかった」説は撃破されましたが、珍説奇説は以後もあとを絶ちません。また、戦前から戦中にかけて盛んだった国家主義的な聖徳太子礼賛は、今も根強く残っています。このため、「いなかった」説が消えると、今度は国家主義に基づく強引な聖徳太子論が流行する可能性があります。

 少し前に紹介した田中英道氏の本もその一つですが(こちら)、あのような妄想だらけのトンデモ本と違い、生真面目に聖徳太子に取り組み、我が国体を守った偉大な英雄として賞賛しようとする人たちがいます。

 この系統の人たちの中には、日本会議や自民党の右派や神社本庁などと結び着いて政治運動としての太子礼賛をやるタイプも見られますが、問題はその太子解釈が史実を無視していることであり、自らの国家主義を太子の事績に読み込もうとしがちなことです。

 そうした人が日本を危険な方向に持っていきがちであることは、津田左右吉が強く警告したことであり(こちら)、また小倉豊文が恐れたことでした(こちら)。私は聖徳太子に関する津田や小倉の個別の説については批判していますが、津田のひ孫弟子として、津田のそのような批判的姿勢は受け継いでいますし、小倉の考え方にも賛同しています。

 そこで、このブログでは、「国家主義的な日本礼賛者による強引な聖徳太子論」というコーナーを作り、国家主義者、特に国体論者たちによる聖徳太子解釈の問題点を指摘することにした次第です。

 初めは「国体論者による~」とか「日本主義者による~」といったコーナー名にしようと思ったのですが、そうした伝統を踏まえていないタイプの日本礼賛者による聖徳太子礼賛の文章もたくさんあるため、今回のような名になりました。

 なお、私自身は「ものまね」を柱とする日本芸能の歴史の本を出しているほか、古典文学関連の論文も多く、年内に日本の文学と仏教の関係に関する本も出す予定になっているほどの日本文化好きですが、アジア諸国の文化もある程度知っていますので、日本だけを異常に持ち上げて他国をおとしめるような発言は無知の証拠としか思われません。このコーナーでいう「日本礼賛者」とは、世界無比の国体を誇って日本の素晴らしさだけを礼賛し、他国を軽んじるタイプの人たちを指しています。

【追記】
「日本礼賛者による強引な聖徳太子解釈」というコーナー名で早朝に公開したのですが、誤解を避けるため、「国家主義的な日本礼賛者による強引な聖徳太子論」と改めました。また、こうした人たちとの協同が案じられる相手に「日本会議」を加えました。

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