7月19日(水)に、NHKの歴史バラエティ番組、「歴史探偵」(22:00~22:45)で「聖徳太子 愛されるヒミツ」が放送されました。
私は亡き恩師の遺命によってテレビ出演はしませんので(ラジオはいくつか出てます)、これまで10を超える各局の聖徳太子番組に依頼されたものの出演はせず、監修したり情報提供したりするだけにとどめてきました(その一例が、BS松竹東急のこちら)。今回も、情報と資料の提供だけです。
番組は、聖徳太子が愛されてきた理由として、「文明開化の立役者」「世界最古の木造建築」「スーパーヒーロー伝説」をあげ、これらについて説明していきます。
冒頭で語られていた法隆寺の古谷正覚管長には、執事長時代から法隆寺の朝課で用いる冊子を送っていただいたり、講演に呼んで頂いたりしてしてます。景観について説明していた平田政彦氏の論文については、このブログでも何度か紹介しました(たとえば、こちら)。
「文明開化の立役者」という面を扱った部分のうち、「近年の研究成果」によればということで、「憲法十七条」の「無忤」や嫉妬禁止の部分の出典(木村整民さん、解説、有難うございます)、『法華義疏』の文章から謙虚でありながらかなり自信も持っているという性格が見てとれるなどと説明していた部分は、私の情報提供に基づく部分であって、これまで論文やらこのブログやらで書いてきたことですね。
SAT(大正新脩大蔵経テキストデータベース)については、使い方次第でいろいろな発見ができますので、皆さん、ぜひ試してみてください(こちら)。
なお、SATについては、インド・中国・日本の文献が電子化されて収録されているとナレーションが流れましたが、日本仏教に大きな影響を与えた韓国の仏教文献も含まれています。
あと、『法華経』は女性の成仏を説いているという説明は誤りであって、『法華義疏』は女人成仏を説いた提婆品が入っていない古い版の『法華経』に基づいています。この点は、このブログで仏教を知らない九州王朝論者を批判した記事で書いた通りです(こちら)。
ただ、女性の菩薩であって、将来、仏となる勝鬘夫人が説いた『勝鬘経』の注釈を書いていますので、推古天皇の時代ということもあって、女性重視であったことは事実ですね。
番組での説明については、もう少し改善してほしい面もありましたが、史実に基づく面と、後世の伝説化を分けるなどしていたうえ、極端な礼賛もなく、歴史バラエティ番組としては無難な造りになっていたという印象です。
番組中盤以降、かつては「聖徳太子いなかった」の紹介に熱心だった歴史家の河合敦氏が出演していましたが、河合氏は、冒頭で触れたBS松竹東急の番組以来、私の指摘を考慮して「いなかった説」には触れなくなってくれているのが嬉しいところです。
この「歴史探偵」については、再放送もされますし、しばらくはNHKプラスで見逃し配信を見ることもできます。