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世界共同体と伝染病対策

2020-02-16 | 時評

ウイルスは独立の生物ではないため、自力で生きられず、人間やその他の生物にとりついて自己複製する。従って、人間にとりついたウイルスが人間と共に国境を越えて移動拡散するときは、国境線が対策上の障壁となる。このところ、伝染病の国際的流行事態のつど、そのことが課題となっている。

その点、国境線という概念も物理的な装置も取り払ってしまう世界共同体の下で、伝染病対策はどうなるのか、想定してみると━

まず、そもそもウイルスが大量的な観光客の人流に伴ってグローバルに拡散するということが、起きなくなるかもしれない。というのも、観光業という20世紀以後の資本主義における典型的な第三次産業が成り立たなくなるだろうからである。

貨幣経済が廃される世界共同体の域内では、ホテルなどの宿泊施設を含め、観光客目当ての金儲けはできなくなる。となると、いったい誰が無償で他人の団体旅行をセットしたり、宿泊施設に泊めて接客などするだろうか。結果として、海外旅行は個人/家族単位でセットし、現地でも一部の公共宿泊施設を利用する形態が主流化するだろう。

世界共同体域内に国境線に相当するものはないので、原則として、域内の移動は完全に自由であるにもかかわらず、団体旅行が減少すること、宿泊施設が限られることで、海外旅行者数も激減するに違いない。

とはいえ、種々の海外業務のために人が移動することは避けられず、世界共同体の下でも伝染病のグローバルな流行は起こり得る。そうした場合、当然グローバルな緊急対策が必要になるが、世界保健機関のような民際機関は主権の観念に邪魔されることなく、全世界共通の効果的な対策を勧告し、世界共同体を通じて迅速に実施することができるようになる。

それに加えて、世界共同体の大陸的地域区分としての汎域圏のレベルでも、共同運営の医療保健ネットワークが稼働し、感染症医療センターのような医療機関も直営できるから、感染者の隔離的治療態勢は高度に整備されるだろう。

さらに、世界共同体を構成する領域圏における計画経済体制の中では、非常時に備えた余剰生産と物資備蓄が行われるので、現在すでに発生しているマスクの欠品状態や自宅待機者向けの糧食の欠乏といった事態など、需要の突発的急増や物流の停止により必需物資が欠如するような市場経済の最弱点は解消されるだろう。

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