ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

続・持続可能的計画経済論(連載第12回)

2020-02-01 | 〆続・持続可能的計画経済論

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第2章 計画化の基準原理

(5)物財バランス②:地産地消
 物財バランスにおける需給調整がその包括的基準原理とすれば、その分岐的基準原理として、地産地消がある。地産地消とは、地元で生産した物を地元で消費するという原理であり、同じ用語が、資本主義社会でも、主に農産物の生産と消費に関する一つのスローガンとして使用されることがある。
 資本主義社会で提示される地産地消の趣旨には不明確な点も多いが、公約数的には、生産者と生産地が明確な地場産農産物に対する郷土愛的な安心感といった消費者心理的な趣旨と、自由貿易による国際競争圧力にさらされる地方の農業基盤の防衛という農政的な趣旨が漠然と混ざり込んでいるようである。
 しかし、基本的に自由市場を前提とする資本主義体制下での地産地消は、生産者と消費者の任意に委ねられた一つのスローガンにすぎず、国際取引を含む広域遠隔流通を禁じるというような規範的な形で地産地消を施行することが実際にできるわけではない。よって、例えば日本の地方自治体レベルで2000年代から策定されるようになった「地産地消計画」も、経済計画としての計画ではなく、政策目標としての「計画」である。
 これに対して、持続可能的計画経済における地産地消は、地方ごとに策定される規範的な消費計画を規律する原理となるものである。従ってまた、その対象品目も農産物に限らず、衣食住に関わる日常必需的な物品に広く及ぶ。
 それは、総体的な需給調整としての物財バランスに対し、地方的な物財バランスの指標となるものでもあるから、経済計画の立案という観点から見れば、経済計画の地方分権化を結果する。従って、地産地消自体も、地方単位での需給調整の原理を内包しており、ここでも環境バランスに応じた生産容量の計算が厳密に行われる。
 ただし、旧ソ連で非効率な計画経済システムの改革の一環として試行された形式的な地方分権化とは異なり、持続可能的計画経済の本質を確保するための本質的な分権である。実際、地産地消が計画的に施行されることにより、主要な二酸化炭素排出源となる遠距離輸送が制限され、環境的な持続可能性にも資するところは大きい。そうした観点から見るなら、持続可能的計画経済における地産地消は、流通と分配に関する基準原理でもあると言える。
 このように、持続可能的計画経済における地産地消とは、グローバル資本主義に対抗する地場産業防衛の政策的スローガンでも、また計画経済システム改革の技術的な方策でもなく、持続可能的計画経済における本質的要請に由来する本質的な物財バランス基準の一つに位置付けられるものである。

コメント