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世界共同体憲章試案(連載第28回)

2020-02-15 | 〆世界共同体憲章試案

第16章 特別人道法廷

〈意義〉

【第92条】

1.特別人道法廷は、人権査察院の決定に基づき、人道に反する罪に関与した個人及び団体の責任を追及するために特設される弾劾法廷である。特別人道法廷は、この憲章に定めがあるもののほかは、付属の規程に従って任務を行う。

2.特別人道法廷の設置場所は、中立性や地理的条件その他の事情を考慮しつつ、人権査察院の決定でこれを定める。

[注釈]
 特別人道法廷は、人権査察院とは異なり、個別事案ごとに設置される非常置型の司法機関である。この法廷が扱う人道に反する罪とは、既存の国際法におけるジェノサイド(大虐殺)とそれ以外の人道に対する罪を包括した犯罪概念であり、その定義規定は別途制定される特別人道法廷規程で定められる。

〈構成等〉

【第93条】

1.特別人道法廷の判事は、審理対象となる当事者が属する世界共同体構成主体を除く構成主体の中から抽選された構成主体が各1人ずつ選任する9人の判事及び補欠判事によって構成される。

2.判事及び補欠判事は、原則として、判決まで専従する。

3.特別人道法廷には、予審部及び検事局を置く。その詳細は、付属の規程でこれを定める。

[注釈]
 特記なし。

〈審理の対象〉

【第94条】

1.特別人道法廷における審理の対象となるのは、次の各号に該当する当事者である。

① 人道に反する罪に関与した者のうち、主唱者、計画者、実行指揮者、実行管理者及び末端実行者
② 人道に反する罪に主導的に関与した政党その他の集団

2.第1項に定める各関与形態に該当しない関与者は、その者が属する世界共同体構成主体の司法機関に送致する。

[注釈]
 人道に反する罪は大規模な集団犯罪であるから、全関与者を特別人道法廷で審理することはできず、第1項に掲げるような中核的な関与者及び関与集団にしぼって審理対象とするものである。

〈身柄の拘束〉

【第95条】

1.特別人道法廷の予審判事は、被疑者の身柄を勾留するため、世界共通令状を発付することができる。

2.前項の令状を執行された被疑者は、平和維持巡視隊が管理する拘置所に勾留される。

3.被拘留者の保釈は認めない。ただし、傷病のため入院加療を要するときは、勾留は停止される。

[注釈]
 特記なし。

〈判決及び執行〉

【第96条】

1.特別人道法廷の審理の結果、有罪と認定された者は、次の区別に従って処分される。

① 主唱者、計画者及び実行指揮者並びに実行管理者は、致死的処分に付する。ただし、改悛の状が著しい実行管理者は、次号本文の例による。
② 末端実行者は、終身間の僻地労役処分に付する。ただし、改悛の状が認められない者は、前号本文の例による。
③ 人道に反する罪に主導的に関与した政党その他の団体は、強制解散及び資産没収並びに再建禁止の処分に付する。
④ 公的機関が人道に反する罪を主導した場合、特別人道法廷は、再建禁止処分に代えて、適格な勧告を伴う再建命令を発することができる。

2.第1項第1号の処分は、狙撃によって執行する。狙撃は、規則に従い、平和維持巡視隊の要員がこれを行う。

3.第1項第2号の処分は、予め協定を締結した世界共同体構成主体の僻地において、当該構成主体の適切な管理機関に委託して執行される。

[注釈]
 特別人道法廷は単なる刑事法廷ではなく、個人的犯行を超えた集団的反人道犯罪の根絶を目指すある種の保安法廷であるから、その判決も制裁としての刑罰ではなく、再発阻止を徹底する根絶処分として言い渡される。

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