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犯則と処遇(連載第47回)

2019-05-23 | 犯則と処遇

40 不服審及び救済審について

 真実委員会、矯正保護委員会、少年審判所といった各司法機関の審決に対して不服のある当事者は、審決の確定前に不服申立てをすることができる。これが不服審である。不服審の担当機関とその手続きは、各司法機関によって異なっている。

 真相解明を行なう真実委員会の審決に対する事実誤認の不服申立ては、人身保護監督に対して行なう。これを行なうことができるのは、犯行者として特定された者またはその代理人である。なお、真実委員会の制度は訴追というプロセスを採らない以上、公訴官(検察官)からの不服申立てということもあり得ない。  
 不服申立ては審決の言い渡し日から所定の期間内にしなければならないが、ひとたび申立てがなされれば、次のステップである矯正保護委員会への送致は保留される。不服申し立てを受けた人身保護監は、直ちに再び真実委員会を招集しなければならない。  

 この第二次真実委員会は第一次委員会とは全く別のメンバーによる新たな審議を行なうが、新たな証拠を加えて審議することはできず、第一次委員会に提出された限りの証拠で改めて審議を行なうものである。  
 その結果、第一次委員会の事実認定を妥当と認めるときは、第二次委員会はその旨を審決し、訂正が必要と判断したときは、新たな審決を示す。第二次委員会の審決には終局性があり、これに対する二度目の不服申立ては許されない。

 矯正保護委員会の審決に対する処遇不当の不服申立ては、各地方矯正保護委員会の上級機関である中央矯正保護委員会に対して行なう。これを行なうことができるのは、処遇決定を受けた者またはその代理人である。
 中央矯正保護委員会では、審議のうえ、地方矯正保護委員会の審決を支持するか、破棄差し戻しするか、または破棄自判するかを決定する。破棄差し戻しとなった場合、原地方矯正保護委員会では別のメンバーによる再審議を行ない、改めて審決を出さなければならない。

 事実認定と処遇決定を併せて行なう少年審判所の審決に対する不服申立ては、事実誤認または処遇不当のいずれかを理由として、各地方少年審判所の上級機関である中央少年審判所に対して行なう。これを行なうことができるのは、被審人たる少年またはその親権者に限られる。中央少年審判所における審議とその後の手続きは、矯正保護委員会のそれに準じる。

 いずれの司法機関の審決であろうと、一度確定した審決は覆すことができないが、真実委員会及び少年審判所の審決に関しては、新たな証拠が発見された場合、再審を求めることができる。これが救済審である。救済審の担当機関とその手続きも各司法機関により異なる。  
 
 真実委員会の審決に対する再審請求は、まず人身保護監に対して行なう。請求権者は不服審における犯行者として特定された者またはその代理人に加え、ここでは被害者も含まれる。
 請求を受けた人身保護監は提出証拠の新規性を審査したうえで、要件を満たすと判断すれば、再審委員会を招集する。この救済審としての再審委員会の審議は一回限りで、同一の証拠による不服申立ては認められない。
 
 少年審判所の審決に対する再審請求は、中央少年審判所に対して行なう。請求権者は少年及びその親権者に限られる。
 請求を受けた中央少年審判所は提出証拠の新規性及び信用性をも審査したうえで、要件を満たすと判断すれば原審決を出した地方少年審判所に対し、再審を命ずる。この救済審としての少年審判も一回限りで、同じ証拠による不服申立ては認められない。

 ところで、以上いずれの司法機関の審決であれ審決の法令違反または法令解釈の誤りを理由とする不服申立ては、独立した有権解釈機関に対して行なう。これに関しては当連載の本旨から逸れるので、別稿に委ねることにする。

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