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共産教育論(連載第39回)

2019-02-27 | 〆共産教育論

Ⅶ 専門教育制度

(5)経営学院
 貨幣経済を廃した計画経済を軸とする共産主義社会における企業経営は、資本主義社会におけるそれとは全く異質的なものとなるため、企業経営に必要なノウハウも異なったものとなる。
 すなわち、もはや商品の生産・販売を通じて利潤の拡大を目指す経営術ではなく、企業種別や業容により程度の差はあれ、環境的持続可能性に配慮しつつ、公益の増進を目的とする経営術が要請される。また、労働者の経営参加や自主管理が基本となるため、労働と経営の区別も相対的ないし相互的なものに変化する。
 そうした共産主義的な企業経営に必要な知見とノウハウを専門的に教育するのが、経営学院である。企業経営者には特段の資格や免許の制度はないが、経営学院の修了者は経営に関して高度の適格性を持った者として社会的に認知される。
 こうした狭義の企業経営のほかに、公益性の高い共産主義的企業活動において比重が高まる企業監査業務に必要な知見とノウハウの教育も経営学院の第二の任務となる。
 さらに、環境的持続可能性に配慮された計画経済(持続可能的計画経済)の実務において重要な裏方支援業務を果たす公的資格としての「環境経済調査士」(拙稿参照)の養成が、経営学院の第三の任務に加わる。ここで養成された「環境経済調査士」は経済計画の合議機関である経済計画会議の事務局に配置されるほか、各企業の環境影響調査部門や環境監査役などの任務にも広く起用される。
 経営学院の経営・監査コースの入学要件は、少なくとも一つの企業体で、一定年数以上、管理職としての業務経験を持ち、当該企業から推薦を受けた者に限られる。ただし、環境経済調査士の養成コースではこのような要件は課せられず、より広く何らかの就労経験があれば足りる。
 なお、経営学院も、教育活動に必要な経営学その他の基礎的な学科に関する研究活動も併せて行い、学術研究センターとしての機能を持つ点では、他の専門職学院と同様である。

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