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共産教育論(連載第33回)

2019-02-04 | 〆共産教育論

Ⅵ 生涯教育制度

(3)多目的大学校
 生涯教育の拠点となるのは、多目的大学校である。この名称は法令上の定義名称であって、実際の公式名称はコミュニティ・カレッジその他のより親しみやすいものが採用されるであろうが、ここでは定義名称のまま記述する。
 多目的大学校とは、その名のとおり、様々な目的を持つ生涯教育にとって有益なプログラムを総合的に提供する成人向けの公的教育機関である。その設置は広域自治体(地方圏または準領域圏)が行い、学費は無償である。
 既存の大学制度とは異なり、入学に際して学力試験その他の少数選抜は一切行なわず、原則的に居住地域の管轄広域自治体の成人住民であれば、誰でも入学することができる。居住地域外の大学校への入学も可能であるが、居住地域住民が優先される。
 ただ、大学校で提供される科目には若干の差異はあれど、基本的に同一内容で統一されるため、大学校の選択に迷うということはなく、居住地域外の大学校をあえて選択すべき理由はさほどないと考えられる。
 多目的大学校には、大学のような学部制度も、複数科目をパックで提供する学科もなく、単独の科目が林立するだけであるので、学生はその中から自身に必要な科目を一つ選択し、または複数科目を自由に組み合わせて選択することができる。
 大学のように強制的な「卒業」という仕組みは存在しないため、学生は所定の単位数を取得する義務もなく、働きながら学びやすい。ただし、所定の単位数以上を履修し終えた学生に対しては、完全履修証書が発行されるが、これが言わば「卒業証書」の意義を持つであろう。
 こうした多目的大学校は、その性質上、職業上の資格ないし免許の取得にもつながるような実技科目が多くなるため、基礎教育課程とは異なり、通学に適した物理的な校舎を擁するまさしく「学校」なのであるが、教養的な科目については専用ネットワークを通じて通信制で提供される。
 多目的大学校の教員は科目ごとに常勤または非常勤の講師が当てられるが、大学のように教授を頂点とする職階制は存在せず、全教員は対等の地位にある。学内の運営は、学長を中心とする理事会によって行なわれるが、学長を含む理事は講師の中から教員総会によって選出される。
 多目的大学校は、学術研究センターのような研究機関ではなく、設置主体である広域自治体民衆会議の監督下に置かれる教育機関であるが、自治的に運営され、民衆会議といえども、大学校の運営に直接介入することは許されない。

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