バレエの音楽は、よいところが抜粋されて聴く機会が多いですが、もともとのバレエの内容をあまり知らないことが得てしてあります。「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」はおおかたストーリはおさえていますが、「ジゼル」「海賊」などは知りませんでした。
ということもあって、新春のバレエは、「ジゼル」にしました。ミハイロフスキー劇場のそれです。このミハイロフスキー劇場はかつて旧ソ連時代は、レニングラード国立バレエと呼ばれていました。伝統と実力を兼ね備えたバレエ集団です。わたしのようなオールドバレエファンには、レニングラード国立バレエというほうが親しみを感じます。
このバレエはアダン作曲です。原作はハイネです。正確には、ハイネが著作『ドイツより』の中で紹介した伝説が下地にあると言ったほうがよいでしょう。二幕からなります。
第一幕は、シレジアの伯爵アルブレヒトがロイスと名前を変え、身分を隠して、村の娘ジゼルに接近し、ふたりが恋しあうようになるのですが、ジゼルに思いを寄せる森番ヒラリオンが二人の間をさこうとします。ヒラリオンがロイスの館に忍び込み、豪華なマントと剣を盗み出し、それを村人に示します。呆然とするジゼル。また、ロイスにはいいなずけ、バチルダがいて、ヒラリオンはその関係も暴露します。あまりの展開にジゼルは正気を失い、発作的に剣を自分の胸に突き立て自死します。ジゼルの母親が彼女を抱きしめ、これを茫然と見つめるロイスとヒラリオンの場面で最初の幕がおります。
第二幕は、黄泉の世界。ジゼルの墓(十字架)が左手にたっています。妖気迫る雰囲気のなか、ジゼルの大理石の墓をみつめるヒラリオン。夜がふけていくと多くの精霊ウィリたちがウィリの女王とともにあらわれ、ジゼルが呼び出されます。ジゼルは女王にあいさつすると、ウィリたちの姿が消え、ロイスが登場し、かれをずっと愛し続けていたジゼルはふたりでパ・ドゥ・トゥを踊ります。そこにウィリに追われたヒラリオンが入ってきますが、彼は死ぬまで踊る宿命にあわされ、激しい踊りを踊らされて、最後は疲れ切って死んでしまいます。次にウィリはロイスに白羽の矢をたてます。ロイスは許しを請いますが、ウィリは承知しません。ジゼルは彼を守るために、一緒になって踊ります。夜明けになれば、ウィリたちは自分の墓に戻らなければなりません。ジゼルも同様です。
古典バレエの美しさの粋をもった「ジゼル」。正月にふさわしいひとときを過ごしました。
CAST
ジゼル イリーナ・ペレン
アルベルト レオニード・サラファーノフ
ミルタ イリーナ・コシェレワ
森番ハンス ウラジミール・ツァル
ペサンド・パ・ド・ドゥ ヴェロニカ・イグナツェワ、アンドレイ・ヤフニニューク
ベルタ(ジゼルの母) アンナ・ノヴォシーロワ
バチルド オリガ・セミョーノワ
公爵 アレクセイ・マラーホフ
アルベルトの従者 ロマン・ペトゥホフ
ドゥ・ウィリ ワレーリア・ペトゥホフ、アンナ・ナウメンコ
指揮:ヴェレンティン・ボグダーノフ
管弦楽:ミハイロフスキー劇場管弦楽団