【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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ビッグバン理論はひとつの仮説にすぎない!

2009-08-19 00:38:59 | 自然科学/数学
近藤陽次『世界の論争・ビッグバンはあったか-決定的な証拠は見当たらない-』講談社、2000年             
       
 誰も彼もが宇宙の始まりをビッグバン理論で説明しているように見え、そしてその理論が正しいように考えていますが、実際はこの理論の正しさはよくわからず、ひとつの仮説にすぎないという観点で書かれています。

 ビッグバン理論の淵源は、宇宙「火の玉」爆発起源説です。提唱者はベルギーのルメートル。ルメートルは、1922年にロシアのフリードマンが公表した宇宙は静的ではなくダイナミックに膨張したものという仮説を継承し、宇宙は「原始アトム」もしくは「火の玉」が爆発して生まれたという説を唱えました(p.73)。

 ハップルが1929年の論文で示した遠い銀河系ほど赤方偏移(観測される光のスペクトルが波長の長いほう、すなわち赤色のほうに移行する現象[p.65])が大きいという観測結果は、この「火の玉」爆発起源説を支持すると考えられ、以来この学説はひとつの潮流となりました。

 「火の玉」爆発起源説と対抗する学説は、定常宇宙説です。この説は、「火の玉(原始アトム)」説が宇宙の初めに物理的特異点(いっさいの物理法則が通用しない点)を想定することを誤りとみなします。そうではなく、この定常宇宙説は宇宙が膨張するとその空間に素粒子が自然に生まれてその空間を埋める(宇宙に始まりなどない)というのです。ホイル、ゴールド、ボンディが代表的論者です(pp.74-75)。

 ちなみに「ビッグバン」という名称の名づけ親は、「火の玉」爆発起源説に反対したホイルです(p.76)。

 現在の宇宙論は「火の玉」爆発起源説を継承する「インフレーション・ビッグバン説」、定常宇宙節の現代版である「準定常宇宙説」が二大仮説で、この他にプラズマ宇宙論という仮説があります。同分量からなる普通物質と反物質からなるプラズマ宇宙は、混合プラズマの内部崩壊による反応で全部エネルギーに変わり大爆発が起こり、爆発の起こった部分の宇宙(銀河系の集合)が膨張し、その膨張している銀河系の集合が宇宙という説がこのプラズマ宇宙論です。

 観測からわかったことと憶測の部分とからどの理論もなりたっており、いろいろな仮説が凌ぎあい、切磋琢磨して新しい理論になっていく、宇宙のことについてはまだまだわからないことだらけというのが著者のスタンスです。