監督 ミヒャエル・ハネケ
出演 ナオミ・ワッツ
ティム・ロス
マイケル・ピット
何年か前にとにかく衝撃的な映画があると聞いてレンタルで借りた映画があります。
それが「ファニーゲーム」と言う映画。
見たときの感想は・・・この作品共々後で書くとして、この作品がハリウッドでリメイクされたと情報が入りました。
正直あの映画をハリウッドでリメイクしたところでハリウッド式サイコスリラーになるのがオチで、オリジナル同様には行かないだろうと思ったもんでした。
しかし脚本&監督オリジナル同様のミヒャエル・ハネケだと聞いてかすかに期待感が高まりました。
そしてベールを脱ぐハリウッド版ファニーゲーム「ファニーゲームUSA」
(あらすじ)
別荘で過ごすアン(ナオミ・ワッツ)とジョージ(ティム・ロス)夫妻のもとに、ポール(マイケル・ピット)とピーター(ブラディ・コーベット)と名乗る青年が訪れる。
ふてぶてしい訪問者の態度に業を煮やしたジョージがポールのほほを平手打ちすると、突然二人の男は凶暴な顔を見せ、生死をかけたゲームをしようと告げるが…
オープニング俯瞰から捉えた1台の車のカットから始まる。
そして流れるクラシックの曲・・・ヘンデルのオペラやモーツアルトの曲を聞きながら車内では一軒の家族が曲当てクイズを楽しんでいるというのどかな一場面・・・そんなクラシックな曲から一転、激しいリズムのハードコアノイズに変わり画面一杯にFUNNY GAMES U.S. のタイトルが!
このクラシックが流れる平穏を音で切り裂くかのようなハードな曲調への転換はまさにその後の主人公たちの行く末を暗示してるかのようで秀逸。
真白の服になぜか真白な手袋をした2人の青年ポールとピーターがある一家に玉子を借りにくるんだが、ナオミ・ワッツ扮するアンに4個もらった玉子を落として割ってしまう・・・床を拭きながらやや苛立ちを見せるアンからさらに図々しくももう4個もらうんだが、この時この家庭の唯一の連絡手段である携帯電話を台所に水に落とし壊してしまう・・・ますます苛立つアン。
そして更に犬に抱きつかれたことを理由に玉子を割ったといい、三度玉子をせびる青年2人組。
そこに夫ジョージが現れ、青年たちの不愉快な態度についに手を出してしまう・・・これこそ不快なまでのゲームのゴング変わりだったりする。
ゴルフクラブでピーターの足を一撃で叩き折り(殺傷能力は犬を叩き殺した事で実証済み!)一番やっかいな存在である夫の自由を奪い取り、アンと息子と歩行不能のジョージを2階で監禁。
そしてここからポールとピーター彼らの狂気なまでのゲームが始まるのです。
ここから彼らの存在がとにかく鬱陶しい存在となってくるんです。
ジョージ一家だけでなく我々観客も・・・ニタニタしながら「今から12時間後おまえらは死んでいるか、生きているか賭けをしよう」持ちかける。
そんなやり取りさえも鬱陶しく感じてしまうこの2人組が突然カメラ目線となり、スクリーンから客席の我々に向かって「皆さんどちらに賭けます?」と言いだす!
そう、この映画は見る側の観客までもこのゲームに巻き込んでしまうんです。
ネタバレ警報発令・・・この映画を見る予定の人は“絶対”読まないでね。
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
今までいろんな映画を見たけどこれほど悪意に満ちて悪質な映画は見たことありません・・・と言うのはオリジナル版「ファニーゲーム」の感想です。
この映画はオリジナルと同じ脚本、同じカメラアングルやカットで撮影されたリメイク作なんです。
ただ役者がアメリカ人俳優という違いがあるだけです。
でもオリジナルを見たのとほとんど相違ないので、オリジナルの感想=この作品の感想でもある訳なんですがね。
映画をあまり見ない人、またはハッピーエンドが当たり前と思いがちな人がこの映画を見ると腰を抜かすでしょう・・・と言うより腹立たしさで不愉快に感じると思いますね。
とにかく2人組の青年の不愉快なまでの鬱陶しさは尋常じゃないし、捕らわれの身となった親子の最初の犠牲者が子供ってのがびっくりです。
子供に紙袋を頭にかぶして締め上げ、夫ジョージに妻に裸になるよう強要させる・・・少しでもジョージが躊躇しようもんなら子供の頭にかぶした袋を締めあげ、その度に子供が泣き叫ぶ!
映画でここまでする描写ってないですよね~
そして意図も簡単にライフルで子供が撃ち殺される・・・
通常のパターンなら何とか主役であるナオミ・ワッツが隙を見て反撃に転じ、最後は何とか犯人をやっつける・・・ま、夫は殺されたとしても子供はなんとか助かる・・・しかしこの映画はそんな定石パターンが完全に裏切られる。
どことなくそう言う定番的な布石のような描写があるんですが、それは観客に淡い期待抱かす小道具に過ぎず、逆に観客の期待を裏切る為の布石なんですね~
この“悪意”に満ちた演出はもうお見事としか言いようがないです。
この映画を見て不快感を持ってご立腹された人は監督の思惑にハマったことになるかも?
一例として前半に船に置き忘れたナイフが何か意味ありげにカメラが捉え、ラストでアンがそのナイフを手にしたとき、大方の観客は「そうか、ここでこのナイフが使われるのか・・・これでナオミワッツが反撃すんねんな」と思うだろうし、またそんな感じの描き方なんだが、あっさりナイフは取り上げられ湖にポイッと捨てられる!この時の絶望感は凄いよね~感客さえもガックリさせて、「一体どういう結末なの?」と不安感を煽る。
またラスト手前でアンが隙を見てライフルを奪い、ピーターを撃ち殺してしまう。
「やっと一人退治したか!」という観客の喜びもつかの間、相棒であるポールがうろたえて「そんなのダメだよ・・・リモコン、リモコン」とDVDのリモコンを探し出し、リモコンで巻き戻しするや何と映画が巻き戻ってしまう!
そしてピーターが撃たれる前のシーンが戻り、アンがライフルを奪う一歩手前でそれを阻止する・・・これによりピーターは撃たれないという仰天シーンが出てくる。
そこまでして悪に勝たしたいという意図的な悪意が感じられる監督の嫌がらせのような演出は凄いね。
またまたラストでポールがカメラ目線で観客に「こんな結末で納得しますか?」と
観客を逆撫でするようなこといいます。
監督はこの映画の意図として劇場という名の安全圏に居る観客への挑戦。
それは予想を裏切られていく不安感、最悪の結末に突き進むまでの感情の動揺を観客に体験させることではないでしょうか?
わざわざ金を払って嫌なもの見ることはないでしょう。
また作り手もそんな観客の神経を逆なでするようなのは作ることは無いだろうし・・・しかしそれを敢えてやってのけたこの映画は凄いと思います。
何の抵抗もなく最後の生き残りであるアンが縛られたまま湖面に船から突き落とされて殺されるアッサリとした感覚は劇的に殺されるより数倍怖いし、衝撃度も大きい。
悪が勝つ映画は他にもあるでしょうが、この映画ほど悪質かつ酷い悪党が堂々と次の犯行に移るところで終わる後味の悪さはちょっと無いですね。
また冒頭と同じあの耳障りなハードコアノイズな曲が流れるのが次なる犯行を象徴しています。
ナオミ・ワッツとティム・ロス、そしてマイケル・ピットと言ったハリウッドスターが出てるけど、個人的には犯人の2人はアメリカ人俳優ではなく、ヨーロッパ系の無名の俳優を起用したほうが陰湿さは増したんではないかな?
オリジナルの方が冷徹な雰囲気がありましたからね・・・しかし嫌な映画だよ・・・でも好きよ
余談ですが、ブラとパンティ姿で手足を縛られたナオミ・ワッツが縄をほどこうとして、体をくねらせ立ったり座ったりするロングショットでのシーンは個人的にエロエロ度満点でした。
★★★★★ 2009.2.5(木) テアトル梅田1 18:50 B-10
出演 ナオミ・ワッツ
ティム・ロス
マイケル・ピット
何年か前にとにかく衝撃的な映画があると聞いてレンタルで借りた映画があります。
それが「ファニーゲーム」と言う映画。
見たときの感想は・・・この作品共々後で書くとして、この作品がハリウッドでリメイクされたと情報が入りました。
正直あの映画をハリウッドでリメイクしたところでハリウッド式サイコスリラーになるのがオチで、オリジナル同様には行かないだろうと思ったもんでした。
しかし脚本&監督オリジナル同様のミヒャエル・ハネケだと聞いてかすかに期待感が高まりました。
そしてベールを脱ぐハリウッド版ファニーゲーム「ファニーゲームUSA」
(あらすじ)
別荘で過ごすアン(ナオミ・ワッツ)とジョージ(ティム・ロス)夫妻のもとに、ポール(マイケル・ピット)とピーター(ブラディ・コーベット)と名乗る青年が訪れる。
ふてぶてしい訪問者の態度に業を煮やしたジョージがポールのほほを平手打ちすると、突然二人の男は凶暴な顔を見せ、生死をかけたゲームをしようと告げるが…
オープニング俯瞰から捉えた1台の車のカットから始まる。
そして流れるクラシックの曲・・・ヘンデルのオペラやモーツアルトの曲を聞きながら車内では一軒の家族が曲当てクイズを楽しんでいるというのどかな一場面・・・そんなクラシックな曲から一転、激しいリズムのハードコアノイズに変わり画面一杯にFUNNY GAMES U.S. のタイトルが!
このクラシックが流れる平穏を音で切り裂くかのようなハードな曲調への転換はまさにその後の主人公たちの行く末を暗示してるかのようで秀逸。
真白の服になぜか真白な手袋をした2人の青年ポールとピーターがある一家に玉子を借りにくるんだが、ナオミ・ワッツ扮するアンに4個もらった玉子を落として割ってしまう・・・床を拭きながらやや苛立ちを見せるアンからさらに図々しくももう4個もらうんだが、この時この家庭の唯一の連絡手段である携帯電話を台所に水に落とし壊してしまう・・・ますます苛立つアン。
そして更に犬に抱きつかれたことを理由に玉子を割ったといい、三度玉子をせびる青年2人組。
そこに夫ジョージが現れ、青年たちの不愉快な態度についに手を出してしまう・・・これこそ不快なまでのゲームのゴング変わりだったりする。
ゴルフクラブでピーターの足を一撃で叩き折り(殺傷能力は犬を叩き殺した事で実証済み!)一番やっかいな存在である夫の自由を奪い取り、アンと息子と歩行不能のジョージを2階で監禁。
そしてここからポールとピーター彼らの狂気なまでのゲームが始まるのです。
ここから彼らの存在がとにかく鬱陶しい存在となってくるんです。
ジョージ一家だけでなく我々観客も・・・ニタニタしながら「今から12時間後おまえらは死んでいるか、生きているか賭けをしよう」持ちかける。
そんなやり取りさえも鬱陶しく感じてしまうこの2人組が突然カメラ目線となり、スクリーンから客席の我々に向かって「皆さんどちらに賭けます?」と言いだす!
そう、この映画は見る側の観客までもこのゲームに巻き込んでしまうんです。
ネタバレ警報発令・・・この映画を見る予定の人は“絶対”読まないでね。
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
皆さんはどちらに賭けます?
今までいろんな映画を見たけどこれほど悪意に満ちて悪質な映画は見たことありません・・・と言うのはオリジナル版「ファニーゲーム」の感想です。
この映画はオリジナルと同じ脚本、同じカメラアングルやカットで撮影されたリメイク作なんです。
ただ役者がアメリカ人俳優という違いがあるだけです。
でもオリジナルを見たのとほとんど相違ないので、オリジナルの感想=この作品の感想でもある訳なんですがね。
映画をあまり見ない人、またはハッピーエンドが当たり前と思いがちな人がこの映画を見ると腰を抜かすでしょう・・・と言うより腹立たしさで不愉快に感じると思いますね。
とにかく2人組の青年の不愉快なまでの鬱陶しさは尋常じゃないし、捕らわれの身となった親子の最初の犠牲者が子供ってのがびっくりです。
子供に紙袋を頭にかぶして締め上げ、夫ジョージに妻に裸になるよう強要させる・・・少しでもジョージが躊躇しようもんなら子供の頭にかぶした袋を締めあげ、その度に子供が泣き叫ぶ!
映画でここまでする描写ってないですよね~
そして意図も簡単にライフルで子供が撃ち殺される・・・
通常のパターンなら何とか主役であるナオミ・ワッツが隙を見て反撃に転じ、最後は何とか犯人をやっつける・・・ま、夫は殺されたとしても子供はなんとか助かる・・・しかしこの映画はそんな定石パターンが完全に裏切られる。
どことなくそう言う定番的な布石のような描写があるんですが、それは観客に淡い期待抱かす小道具に過ぎず、逆に観客の期待を裏切る為の布石なんですね~
この“悪意”に満ちた演出はもうお見事としか言いようがないです。
この映画を見て不快感を持ってご立腹された人は監督の思惑にハマったことになるかも?
一例として前半に船に置き忘れたナイフが何か意味ありげにカメラが捉え、ラストでアンがそのナイフを手にしたとき、大方の観客は「そうか、ここでこのナイフが使われるのか・・・これでナオミワッツが反撃すんねんな」と思うだろうし、またそんな感じの描き方なんだが、あっさりナイフは取り上げられ湖にポイッと捨てられる!この時の絶望感は凄いよね~感客さえもガックリさせて、「一体どういう結末なの?」と不安感を煽る。
またラスト手前でアンが隙を見てライフルを奪い、ピーターを撃ち殺してしまう。
「やっと一人退治したか!」という観客の喜びもつかの間、相棒であるポールがうろたえて「そんなのダメだよ・・・リモコン、リモコン」とDVDのリモコンを探し出し、リモコンで巻き戻しするや何と映画が巻き戻ってしまう!
そしてピーターが撃たれる前のシーンが戻り、アンがライフルを奪う一歩手前でそれを阻止する・・・これによりピーターは撃たれないという仰天シーンが出てくる。
そこまでして悪に勝たしたいという意図的な悪意が感じられる監督の嫌がらせのような演出は凄いね。
またまたラストでポールがカメラ目線で観客に「こんな結末で納得しますか?」と
観客を逆撫でするようなこといいます。
監督はこの映画の意図として劇場という名の安全圏に居る観客への挑戦。
それは予想を裏切られていく不安感、最悪の結末に突き進むまでの感情の動揺を観客に体験させることではないでしょうか?
わざわざ金を払って嫌なもの見ることはないでしょう。
また作り手もそんな観客の神経を逆なでするようなのは作ることは無いだろうし・・・しかしそれを敢えてやってのけたこの映画は凄いと思います。
何の抵抗もなく最後の生き残りであるアンが縛られたまま湖面に船から突き落とされて殺されるアッサリとした感覚は劇的に殺されるより数倍怖いし、衝撃度も大きい。
悪が勝つ映画は他にもあるでしょうが、この映画ほど悪質かつ酷い悪党が堂々と次の犯行に移るところで終わる後味の悪さはちょっと無いですね。
また冒頭と同じあの耳障りなハードコアノイズな曲が流れるのが次なる犯行を象徴しています。
ナオミ・ワッツとティム・ロス、そしてマイケル・ピットと言ったハリウッドスターが出てるけど、個人的には犯人の2人はアメリカ人俳優ではなく、ヨーロッパ系の無名の俳優を起用したほうが陰湿さは増したんではないかな?
オリジナルの方が冷徹な雰囲気がありましたからね・・・しかし嫌な映画だよ・・・でも好きよ
余談ですが、ブラとパンティ姿で手足を縛られたナオミ・ワッツが縄をほどこうとして、体をくねらせ立ったり座ったりするロングショットでのシーンは個人的にエロエロ度満点でした。
★★★★★ 2009.2.5(木) テアトル梅田1 18:50 B-10