黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ご近所美術館』森福都(東京創元社)

2012-08-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
<西園寺英子記念四コマまんが美術館>……かつてアットホームな作風の四コマ『すてきなエプロンママ』を発表していたというまんが家・西園寺英子の作品を集めた小さな美術館だ。
館長の西園寺譲は、英子の息子で、会社を辞めた後にその美術館を建てたものの、喘息が悪化しその職を辞すことに。
就職した年の秋、行きつけのコンビニ<フレンドリーマート>で手渡されたチラシがきっかけで知り、以来うまいコーヒーが安く飲めることから入り浸っていた会社員・海老野は落胆する。
代わりにやってきたのは、英子の遠縁にあたる、同人まんがを描いているオタク娘・川原あかね。彼女と親しくなり、引き続き通うが、それから半年後再び交替した館長は、あかねの姉・董子だった。太めな妹には全く似ていない美人で、ひと目で恋に落ちた海老野。
彼女は前の職場で婚約寸前だった恋人・尾形陽一の浮気が発覚、それが原因で引きこもりとなっていて、そのリハビリも兼ねた館長就任だった。
そんなある日、出かけた先で財布を落とした薫子の話を聞いていたところへ、男が訪ねてきた。彼がその財布を拾い、それを届けにきたのだった。届ける前に中に入っていたものをチェックしていたらしい彼は、再び偶然を装い董子の前に現われるに違いないと考えた、海老野とあかねは……“ペンシル”、
董子が、先に知り合った南田と二度目のデートに出かけ、落ち着かない海老野。
そんな中、半年ほど前から美術館に通っているシングルマザー・池谷妙子と娘・杏奈の母子に海老野が出会う。そこへ現われた清掃用品のレンタルをしている会社<クリーン・グリーン>の今野と、なにやら良さそうな雰囲気の妙子と今野だったが、杏奈が「ペンギンが出てくる」と水を差し、有耶無耶に。
今年の春先に、妙子の友人・千春が何者かに殺害される事件が発生。たまたま彼女の元に預けられていた杏奈は、隣の部屋で昼寝をしており、ペンギンを見たと主張していた。また、今野は千春の恋人だったという。
董子にいいところを見せようと、事件の調査をはじめた海老野だったが……“ホワイトボード”、
真向かいの十五階建てのビルにある、カフェ・アーバン・コンサバトリーのギャルソン・伊福部からある相談が持ち込まれた。
いつも美術館の窓際にいる老人・チロリさん…チロリアンハットを愛用していることから命名…を探しているという。独立する為、店を辞めることになったという伊福部。最後に世話になったチロリさんに礼を言いたいと思ったのだが、その矢先、彼は姿を見せなくなっていたのだった……“ペイパー”、
晩秋。日本原子力警備に勤める、美術館の常連・船瀬から相談が持ち込まれた。
彼の娘・楓子が、彼の前で咄嗟に隠したパンフレットに、フーカーというような言葉が書かれたのが見えたという。それがマーカーではないかと指摘する海老野。楓子は父にこれまでたびたび知恵比べを仕掛けており、どうやら今回のこともその布石ではないかと考える船瀬。
その後、予想通り楓子は、ピザの箱、ハンガリー狂詩曲のピアノCD、キーボードのAltキー…と謎めいたものを船瀬に示したというのだが、それが意味するものとは……“マーカー”、
学生時代、エンカン愛好会で一緒だった寺尾実穂と美術館で再会した海老野。
その後、実穂の生き別れだった双子の姉妹・松平詩帆と海老野がきっかけとなって再会を果たした。
その後たびたび美術館を訪れるようになった二人だったが、そんな中、観覧車が故障して動かなくなっているという事件が発生。そのニュースが流れ、実穂とその恋人・鹿島がテレビに映ったのを美術館で見ていた詩帆の顔色は蒼白に……“ブックエンド”、
コンビニ店長・佐々拓磨の提案で、常連客たちを招き、開館記念日を祝って、エプロンママのキャラクタのコスプレに扮するという趣向のパーティが催されることに。
ところがその真っ最中、董子たちのおば・寺西が空気を読まずに突然現われ、ひと騒動。
今度展示するという、英子が集めていたカラフルな宝石にちなみ、用意されたスイーツ。その中に隠された宝石を見つけるというゲームで南田に負けた海老野。
そんな中、宝石が消えてしまい……“パレット”
あかねから、自分にもカレシができたらしいと聞かされた海老野。董子同様、拾った財布が縁だという。
その男・檜山豊から付き合って欲しいと云われたというが、何か含むところがあるに違いないと大反対した海老野は、あかねと大喧嘩。
その下心を探ろうと、食事の席にも同席。彼女の作品のゲーム化の話に妙に熱心な様子を示す檜山。
そんな中、尾形が美術館の周囲をうろついているらしいという南田。さらに他にも怪しげな男の姿が目撃されていた。
その夜、尾形が空き巣を殺害してしまうという事件が起きて……“スケール”の7編収録の連作短編集。

職場の近くにできた、四コマ漫画家の小さな美術館。その館長に恋した青年が、何とか認めてもらおうと、彼女の妹(太めなオタク)に協力を得つつ、日常で起こる謎を解決するミステリ。
いろんなジャンルの小説を書かれる森福さんですが、今回は割とほんわかほのぼのテイスト。ちょっとラブコメ?
ラストのまとめかたも良い感じ♪

<12/8/17>