黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『さよならの次にくる <卒業式編>』似鳥鶏(東京創元社)

2009-07-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
久しぶりに小学生時代の友人・木場に再会した葉山。その場に居合わせた演劇部部長の柳瀬沙織は、葉山と彼の間に何かあるのではと、過去の話を聞き出したらしい。
それは、小学校の卒業式の日のこと。
好きな相手に思いを伝えようと葉山が書いたラブレターを、友人の木場や根本に見つかり、もてあそばれているうちに、ビルの屋上に落ちてしまった。
落としたのは2つ並んだビルのどちらかで、ひとまず片方の『キムラビル』に入った葉山は、そのままその屋上に閉じ込められてしまった。しかも隣の『第二高橋ビル』にも鍵がかかっていて入れない。しかし葉山はその同じ日の夕方、第二高橋ビルにいた。
彼はどのようにしてビルから脱出したのか、答えを言おうとする葉山を制し、文芸部部長の伊神恒がそれを推理しはじめ……“第一話 あの日の蜘蛛男”、
先の一件で、小学校時代にラブレターを書いた相手が、渡会千尋だとばれ、それが中学時代からの同級生・ミノこと三野小次郎に伝わった。
それから5か月。そのミノが、千尋が現在愛心学園に通い、吹奏楽部のオーボエの首席奏者となっているという情報を持ってきた。しかもその吹奏楽部のコンサートに手伝いが必要だというので、葉山にも声をかけてきた。
その話に乗った葉山だったが、そんな中、吹奏楽部に貼られた怪文書の犯人として彼女が名乗り出た。
何とか彼女の無実を晴らすべく、奔走する葉山だったが……“第二話 中村コンプレックス”、
ジャックという名の白い猫を可愛がっているお姉さん目当てに、庭園に通っていた“僕”。
猫はなかなか僕には懐こうとしないが、ふらりと現れた伊神には懐き、おまけにお姉さんとも話が弾んでいて僕は面白くない。
夜中にこっそりとジャックを餌付けし手なづけようと餌をやったのだが、翌日ジャックは池に浮かんでいるのを発見されて……“第三話 猫に与えるべからず”、
いよいよ迎えた、伊神卒業の日。
しかし式の途中、いつの間にか消えた伊神の姿を探す葉山だったが、携帯は繋がらず、住所録に載っていた場所に、彼は住んでいなかった……“第四話 卒業したらもういない”の4話の他、断章収録。

『理由あって冬に出る』の続編。
前後編の前編らしく、間に入っている『断章』の意味合いがまだ不明。
後編でどう絡んでくるのかが気になります。

<09/7/17>

『パラドックス実践 雄弁学園の教師たち』門井慶喜(講談社)

2009-07-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
弁論術学習に特化した超エリート校・雄弁学園。6歳から演説、議論、陳述研究の訓練に励み、大人でも太刀打ちできないほどの技術を持つ高校生たちが、新しく担任となった能瀬雅司に着任早々、3つの難題を投げかけた……「テレポーテーションが現実に可能であることを証明せよ」「海を山に、山を海に変えられることを証明せよ」「本当にサンタクロースがこの世にいることを証明せよ」
議論混乱をきっかけに前担任・五十嵐桂子を休職に追いやった生徒たちを前に、プラトンの『饗宴』1冊を読んだきりで卒論をでっちあげった能瀬が出した回答とは……『パラドックス実践  高等部』、
初等部の弁論大会の結果に異議があるという夫人…準優勝になった蟹沢雄人の母・徳美がやって来た。大会の担当だった荒木響子は、苦情に対応することに。
その大会で優勝したのは、響子のクラスの生徒・佐久米まなみの“鮭の産卵……<かわのいきもの>から”だったが、その内容が出典としてあげている本の内容と異なっている為、規定に違反しているのではないか、という……『弁論大会始末  初等部』、
中等部でかつて教えていたものの、今は不遇をかこつ塩鍋遠次。
そんな彼が、一回だけ臨時で授業を受け持つことになったクラスには姉の子・いずみがいた。彼女に出した「自然科学的真実の方が実感的真実よりも実感的であることの例をあげよ」という宿題を簡単に答えられてしまった彼は、思わず「自然科学的真実がすなわち実感的真実でもあり、なおかつ自然科学的真実でないことで実感的真実でもないという例をあげよ」という難題を出して……『叔父さんが先生  中等部』、
学校で痛手を受け休職中の五十嵐桂子は、郷里の徳島に帰っていた。そんな彼女は母と共に出かけた兵庫県の猪名川町で高等部部長で、4月から学園長になうという栗坂穣一夫妻に出会う。
桂子は4月から大学の臨時採用の非常勤講師として、復帰することになっていたのだが、大学の“新聞”に載っていた<アメマケ先生>北橋絵美莉が、彼女が最初に授業で取り上げた<雨ニモマケズ>を題材にしたことが気に入らずそれを拒む……『職業には向かない女  雄弁大学』の4編収録。

弁論の勉強をしている手ごわい子供たちの相手をする、教師たちのお話。
弁論という、あまりないタイプの題材で興味深かったです。

<09/7/17>