497)医療大麻を考える(その12):冤罪はマスコミによって作られる

図:(1)神経回路が形成される過程では、まず一旦広範にシナプスが作られる。(2)その後、不要な回路(配線)が消去されて限局した神経回路に収束して、正常な神経回路が完成する。この不要な神経回路の刈り取り(消去)に、カンナビノイド受容体のCB1受容体と内因性カンナビノイドが重要な働きを担っている。(3)CB1受容体や内因性カンナビノイドの減少や欠損などによってCB1機能が低下すると、不要な神経回路が残って無秩序な神経回路になる。(4)神経回路の形成時期にTHC(テトラヒドロカンナビノール)などのCB1アゴニスト(作動薬)が過剰に作用すると、神経突起の退縮などによってシナプスが減少する。このようなカンナビノイドによる神経回路の消去は大麻の有害作用と関連する可能性があるが、神経系における大麻の薬効と関連している可能性もある。

497)医療大麻を考える(その12):冤罪はマスコミによって作られる

【大麻が脳の神経回路を破壊する?】
6月30日のネット上で以下のようなタイトルの記事が配信されています。

「大麻の成分、脳の神経回路を破壊…阪大チームがメカニズム解明(Yahoo ニュース;配信元はYomiuri Online YomiDr)」
「大麻成分が脳神経に悪影響(関西NEWS WEB:NHKの大阪放送局)」
「大麻 脳内の神経回路に悪影響 大阪大、米科学誌に発表(毎日新聞)」
「大麻の有効成分「カンナビノイド」は脳の神経回路に障害を与える - 阪大(Livedoor News)」

大阪大学のプレスリリースを元にしているので、どこも同じような内容ですが、タイトルに「大麻成分が脳の神経回路を破壊する」という表現で、「大麻はやはり悪かった」と読者を誘導する意図がありありです。(大阪大学のプレスリリースがそう言っているので記者のせいではないかもしれませんが)
しかし、この記事のタイトルと内容は不正確であり、今までマスコミが数々の冤罪を生んできたのと同様の間違いを犯しているので、この記事の事実誤認の部分を明らかにしておく必要があります。
どこのサイトの記事の内容はほとんど同じですが、以下の記事は「朝日新聞デジタル」からの引用です。タイトルは「大麻成分、脳に悪影響 神経回路の枝刈る? マウス実験」です。 

大麻成分、脳に悪影響 神経回路の枝刈る? マウス実験

大麻の成分をマウスに与えると、脳神経の回路に異常が起きることを、大阪大の木村文隆准教授(神経科学)らのチームが確認した。大麻の成分が脳に悪影響を与える仕組みを明らかにしたのは世界で初めてという。30日、米神経科学学会誌に発表した。
大麻は合法化されている国もあるが、記憶や認知に悪影響があるという研究もある。ただ、大麻に含まれる「カンナビノイド」に似た化学物質は動物の体内にもあり、神経にどう関わっているのかは不明だった。
木村さんらはまず、マウスの赤ちゃんに少量のカンナビノイドを注射。大脳皮質を調べると、神経回路の先端部の密度が低くなっていた。次に、カンナビノイドを認識するたんぱく質を生まれつき作れないマウスを調べたところ、神経回路の先端部が、通常の範囲をはみ出して広がっていた。
これらの結果から、カンナビノイドは、木の枝のような神経回路から、不要な枝を刈り取る「はさみ」のような働きをしていることが分かった。木村さんは「大麻を使うと、体内の様々な場所で同じようなことが起こっている可能性がある」と指摘する。
大麻などの薬物に詳しい国立精神・神経医療研究センターの舩田正彦室長は「若年層の大麻使用は良くないというこれまでの経験的な報告を裏付ける科学的なデータ。危険ドラッグにも似た成分が含まれていて、乱用の危険性を示している」と話している。(合田禄)

この大阪大学の研究内容は日本語で大阪大学が公表しています(サイトはこちら)。
論文も入手して読んでみました。
研究自体は「内因性カンナビノイドシステムが脳の成長段階における神経回路の発達に重要な役割を果たしている」ということを示しているので、意義のある論文だと思います。
しかし、この研究結果から「大麻の有害性」との関連だけ言及していることは違和感があります。私だったら、大麻の薬効の作用メカニズムとの関連も考察します。
これらの記事および大阪大学のプレスリリースの問題点を検証します。

【生体は促進系と抑制系のバランスで調整されている】
体の機能を制御する様々なシステムは促進系と抑制系のバランスで制御されています。
車のアクセルとブレーキの関係と同じシステムです。
例えば、免疫細胞はがん細胞や病原菌を見つけて攻撃し排除しますが、免疫細胞の働きが無制限に亢進すると自己の細胞を攻撃して自己免疫疾患(関節リュウマチや全身性エリテマトーデスや多発性硬化症など)を引き起こします。そこで、リンパ球や炎症細胞が過剰に亢進して暴走しないように抑制(制御)するシステム(制御性T細胞や骨髄由来抑制細胞など)が存在してリンパ球の暴走を抑えています。
自律神経系も交感神経系と副交感神経系のバランスで心臓や呼吸器や消化管などの働きが促進されたり抑制されたりして、体中のシステムが制御されています。
内分泌系においても、例えば、血糖を下げるホルモンとしてインスリンがあり、血糖を上げるホルモンとしてグルカゴンやエピネフリン(アドレナリン)や副腎皮質ホルモンがあり、これらの働きで血糖が正常に維持されます。
中枢神経系においても、興奮系と抑制系の神経細胞や神経伝達物質の絶妙なバランスによって運動や認知機能や記憶などが制御されています。
神経系における内因性カンナビノイド・システムは大雑把に言えば抑制性に作用しています。抑制系が過剰に活性化すれば、神経活動を低下させる方向に作用します。
しかし、この抑制性の作用は中枢神経系の制御に重要な働きをしています。この内因性カンナビノイド・システムが破綻すると(例えばCB1受容体の欠損や阻害)、神経活動は暴走するのです。

図:自動車はアクセルとブレーキによって速度が制御されている。このアクセル(促進系)とブレーキ(抑制系)の関係と同様の仕組みが、免疫システムや内分泌系や自律神経系や中枢神経系など生体の多くのシステムを調節・制御している。 

【CB1受容体を欠損させたマウスは正しい神経回路ができない】
朝日デジタルの記事では、『カンナビノイドは、木の枝のような神経回路から、不要な枝を刈り取る「はさみ」のような働きをしていることが分かった。』と記述されています。
脳の発達時期に神経細胞間でシナプスが多数作られ、神経回路が形成されますが、その後、不要な配線(シナプス)が刈り取られて、必要な神経回路だけが残って正常な神経回路が完成します。
つまり、内因性カンナビノイド・システムは脳の発達過程で正しい神経回路を作るのに重要な働きをしているのです
この論文では、カンナビノイド受容体のCB1の機能を欠如させたマウスでは、余計な神経回路(シナプス)の刈り込みがなくなり無秩序な回路のまま残ってしまうことが示されています。
生物はその発生や成長過程で、最初に余分に作成して、不要なものを削っていくという方法を採用しています。
例えば、発生の過程で、指ができるとき、まず細胞の塊ができ、その細胞の塊の一部がアポトーシス(プログラム細胞死)で削られて指ができます。このようにして手が形成されます。
同様に、脳の発達過程において神経回路が形成されるとき、まず一旦広範にシナプスが作られます。その後、不要な回路(配線)が消去されて限局した神経回路に収束して、正常な神経回路が完成します。(下図)

図:生物は発生や成長の過程でまず過剰に作って、不要なものを削って完成させるという方法を採用する。例えば、手の発生過程では、手の原型となる細胞の塊の一部がアポトーシス(プログラム細胞死)によって削られて、指を作って手が完成する(上図)。中枢神経系の神経回路(シナプス)も最初は余分に多くの回路を作り、発達の過程で必要なシナプスのみが残り、不要なシナプス(神経回路)は削り取られて正常な神経回路が完成する。この不要な神経回路を除去するときにカンナビノイド受容体のCB1が重要な働きを行っている。発育過程でCB1受容体の欠損や働きの阻害を行うと、不要な神経回路が残るので、無秩序な神経回路になってしまう。 

この不要な神経回路の刈り取り(消去)に、カンナビノイド受容体のCB1受容体と内因性カンナビノイドが重要な働きを担っているのです。
内因性カンナビノイドやCB1受容体がなければ、不要なシナプスが残るので正常な神経回路ができないことをこの論文は証明している点では良い論文と言えますが、それと大麻の有害性を結びつけて考察し、プレスリリースでこの点を強調している点は偏向しています。全てのマスコミは、この偏向したプレスリリースをそのまま鵜呑みにして記事にしています。
大阪大学のプレスリリースでは、概要の中で「本成果は、大麻や危険ドラッグが脳に悪影響を与えることの科学的根拠を明らかにしたものです。」と言っています。
本研究成果が社会に与える影響として、「大麻摂取が脳の正常な発達に障害を与えることを科学的に証明したことから、大麻や危険ドラッグの乱用減少への啓発にも貢献が期待されます。」と言っています。
さらに研究者のコメントとして、「カンナビノイドは気軽に気分が高揚し、無害だと考えられて、気軽に手を出す人が後を絶ちませんが、実は間違った配線を削っていきながら、正しい神経回路を作るのに非常に重要であり、摂取することによって、本来の正しい配線までも削られていきますので、大変危険です。特に、若い世代に影響が大きいと考えられますから、絶対に手を出すのはやめましょう。」と言っています。
厚労省に媚を売って大麻撲滅関係の研究費を狙っているのかなと勘ぐりたくなるほど徹底した宣伝です。
「この研究結果が、医療大麻の神経系に対する薬効のメカニズムの解明に役立つ」という発想ができないのが不思議です。そんなコメントをしたら、日本では研究費はもらえなくなるので、できないのかもしれません。

【赤ん坊が大麻を極めて大量に吸えば脳の発達に悪いことは誰でも分かる】
作用メカニズムの研究というのは、その作用をはっきりさせるために、極端な条件で実験を行うことがあります。
大脳皮質の神経回路は、主に幼少期に環境の刺激などを受けて形成されます。神経細胞(ニューロン)が軸索を木の枝のように大きく伸ばした後、不要な枝が刈り取られて最適な回路が形成されていきますが、刈り取りの詳しいメカニズムは未解明でした。そして、この研究では、内因性カンナビノイドシステムが不要な回路の刈り取りを行っていることを明らかにしています。
つまり、神経細胞からアナンダミドや2-アラキドノイルグリセロールなどの内因性カンナビノイドが分泌されて、不要な回路を刈り取っているということです。
これをさらに証明するために、シナプス形成が盛んな赤ん坊のマウスにCB1アゴニスト(CB1受容体に結合して作用する物質)を投与して、シナプス形成が抑制されることを示しています。
例えば、大麻成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)を投与する実験は、生後2日から7日後の5日間の連続腹腔内投与(体重1kg当たり1mgと10mg)で実施しています。
実験用マウスの平均寿命は2年から2.5年くらいです。人間の40分の1程度です。マウスの授乳期間は2〜3週間です。
つまり、生後2〜7日というのは、人間で生後3ヶ月から1年程度の時期に相当します。まだ乳児期です。
脳の神経回路はまだ成長段階で、盛んにシナプスが形成され、外界の刺激を受けながら、神経回路が成長している時期です。
カンナビノイド受容体タイプ1(CB1)は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っています。
そして、この研究では、「CB1受容体を介する内因性カンナビノイドシステムは、乳児期の脳の神経回路が成長する過程で不要な神経回路を刈り取るという働きで、脳の正常な発達に重要な働きを果たしている」ということを明らかにしています。
CB1を欠損したマウスを解析し、CB1の機能が無いと不要な神経回路が残って無秩序な回路になることを示しています。つまり、CB1が不要な神経回路を刈り取っていることを示す証拠です。
さらに、外来性にTHCを投与したらどうなるかを検討しています。
外来性にTHCや合成のCB1アゴニストを投与すると、神経回路の刈り取りが亢進するということを示すことで、内因性カンナビノイドシステムが、脳の神経回路の完成過程で、不要な神経回路の刈り取りを行っていることを証明しています。
つまり、これらの実験で、内因性カンナビノイドシステム(CB1受容体のシグナル伝達)が不要な神経回路を刈り取ることによって、乳幼児における神経回路の正常な発達に重要な役割を担っていることを示しています
しかし、そこから、「大麻成分は神経回路を破壊するので危険だ」というコメントになっています。
ネット上の記事では『研究グループは、刈り取りを担っているのが、大麻や一部の危険ドラッグの有効成分であるカンナビノイドと特定。回路形成期のマウスにカンナビノイドを投与したところ、大脳皮質内の回路が十分に発達しないことを確認した。脳内のカンナビノイドが過剰となり、必要な回路まで刈り取ってしまうためと考えられるという。』(毎日新聞)とあります。
この文章は『研究グループは、刈り取りを担っているのが、大麻や一部の危険ドラッグの有効成分であるカンナビノイドが作用するカンナビノイド受容体CB1とそれを活性化する内因性カンナビノイドと特定したそこで、回路形成期のマウスに外来性にカンナビノイドを投与したところ、大脳皮質内の回路が十分に発達しないことを確認した。このことから、内因性カンナビノイドシステムが、脳の神経回路の完成過程で、不要な神経回路の刈り取りを行っていることが証明された。』と書かなければなりません。(赤字が修正部分)
研究グループは、不要な神経回路の刈り取りにカンナビノイドシステムが働いていることを示すために、外来性にCB1アゴニストを投与して、その作用をみただけです。
発達段階の幼弱なマウスにCB1受容体アゴニストを投与してシナプス形成が抑制されることを示しています。
この実験では、合成のCB1アゴニストと大麻に含まれるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を使っています。THCは体重1kg当たり1mgと10mgの投与量です。
この論文で示されているFigure 7の実験では、生後2から7日の間に、マウスにTHCを体重1kg当たり10mgを腹腔内投与を5日間行うという実験です。極端に多い量ではありませんが、通常の大麻使用量の数倍から10倍程度で、かなり思い切って摂取すれば起こりうる量です。ただ、結果を出すためには、過剰な量を投与するのが薬理の実験の常道です。
体重1kg当たり10mgは成人で600mgです。これは体重換算なので、極端に小さいマウスと人間の比較の場合は体表面積で換算します。
標準代謝量は体重の3/4乗(正確には0.751乗)に比例するという法則があり、一般にマウスの体重当たりのエネルギー消費量や薬物の代謝速度は人間の約7倍と言われています。したがって、10mg/kgの7分の1の用量(1.4mg/kg)になります。(計算の根拠は293話参照)
1.4mg/kgは人間の60kgで80mg程度になります。
ただし、吸引や経口の場合は体内への吸収率は数%から50%程度とかなりの幅があります。腹腔内投与の場合のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)はほぼ100%です。
大麻抽出製剤のSativexでの投与量はTHCで20~30mgですが、舌下投与でのバイオアベイラビリティ(生体利用率)を考えると体内で作用するTHCは数mgから10mgの範囲です。
合成THC製剤も10から20mg程度ですが、経口でのバイオアベイラビリティ(生体利用率)は低いので、体内での作用は10mg以下と言えます。
体表面積での換算とバイオアベイラビリティ(生体利用率)を勘案すると、THCをマウスに体重1kg当たり10mgを腹腔内投与する量は、人間で医療大麻や娯楽で使われる量の10倍以上という計算になります。
ただし、マウスと人間のTHCに対する感受性の違いもありますので、正確な比較は困難ですし、換算してもあまり意味がありません。
この論文のFigure 8の実験ではTHCを体重1kg当たり1mgで腹腔内投与していて、この量でも、大脳皮質での神経回路の形成を抑制する結果が示されています。
したがって、薬効量のTHCが乳児期の神経回路の形成を抑制するという実験結果は認めてよいと思います。
しかし、成人において、普通に大麻を吸う量が神経回路を壊すほどの悪影響があると断定することはできません。
この論文から言えるのは、『人間で1歳くらいまでの乳幼児に大麻を吸わせると、脳の神経回路の発達を阻害するかも知れない』ということだけです。これも断定はできません。マウスの実験結果が人間に当てはまらない場合もあるので、人間の乳児で確認されるまでは、人間の乳幼児への影響は断定できません。あくまでも可能性だけです。それが科学的考察です。
前述の朝日新聞デジタルの記事には『大麻などの薬物に詳しい国立精神・神経医療研究センターの舩田正彦室長は「若年層の大麻使用は良くないというこれまでの経験的な報告を裏付ける科学的なデータ。危険ドラッグにも似た成分が含まれていて、乱用の危険性を示している」と話している。』とコメントしています。
『若年層の大麻使用は良くない』と言っており、舩田正彦室長は『問題なのは若年層の大麻使用』と認識しているようです。成人の大麻使用が問題だとは認識していないのかもしれません。

【神経回路を刈り取る働きも重要】
CB1受容体が働かないと、不要な神経回路が残って無秩序な神経回路になることをこの論文は示しています。つまり、CB1は神経回路の正常な発達に必要であることを示しています。その作用を著者らは最後に「大麻は神経回路を破壊するから危険」という考察に持っていっています。
論文の考察の最後に「カンナビノイド・シグナル系に変化を与える薬物の乱用は神経投射の重大な破壊を引き起こす可能性がある(the abuse of substances that change cannabinoid signaling may cause serious disruption in neural projection.)」「カンナビノイドとその類縁物質は脳の可塑性に対する作用の観点から研究されなければならない(the use of cannabinoid and their analogs need to be studied with respect to their effects on brain plasticity.)」と記述されています。
大麻使用の問題点は多くの研究者が報告しています。この論文の著者らの指摘も可能性があるので、反論はしません。
ただ、私なら、ネガティブな点だけでなくポジティブな可能性も指摘しておきます。「神経回路を刈り取る働きが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する医療大麻の作用メカニズムと関連しているかもしれない」と。

シナプスを作って神経回路を作るのは、成人でも起こっています。したがって、大麻が成人期での神経回路の形成に影響する可能性はあります。それが薬効と有害性に関連している可能性もあります。
ニューロン(神経細胞)は幾つかの化学物質を介して互いにコミュニケーションを取りながら、思考や行動のひとつひとつを決めています。一つのニューロンは他の多数のニューロンからの情報を受け取り、それを総合して自身の信号を発します。ニューロンの枝と枝の結合部位をシナプスと言います。
一つのニューロンは他の多数のニューロンとシナプス結合によって複雑な神経細胞のネットワーク(神経回路)を形成しています。(下図)

図:(左)ニューロンの結合部位であるシナプスでは、前シナプスニューロンから放出された神経伝達物質が後シナプスニューロンの受容体に結合することによって、シナプス間の信号が伝達される。(右)多数のニューロンが相互にシナプスを介して信号のやり取りを行うことによってニューロンのネットワーク(神経回路)を形成している。

脳は絶えずシナプスを作って記憶や学習をしています。
脳の可塑性」や「シナプス可塑性」という神経科学分野の用語があります。
「可塑」とは、辞書によると「やわらかくて形を変えやすいこと」と説明されています。「脳の可塑性」や「シナプス可塑性」というのは、「脳の神経のネットワーク(回路)を変えることができる」ということです。

前述のように、シナプスとは、ニューロン(神経細胞)とニューロン、あるいはニューロンと効果器細胞との接合部位のことで、このシナプスの間には約20nmの間隔があり、神経伝達物質(グルタミン酸、γアミノ酪酸、ドーパミン、アセチルコリン、ノルアドレナリンなど)によって刺激が伝達されます。

多数のニューロンの接続(シナプス)によって脳の機能を支える「神経のネットワーク(神経回路)」が形成されています。
脳が情報を取り込むとニューロン間の活動が起きます。その活動が繰り返されるほど、ニューロン同士の連絡が強くなり信号が伝達しやすくなって、ニューロン間の結びつきができていきます。このようにして新しい情報が記憶として定着して行きます。このシナプス可塑性は脳の成長段階での学習や記憶の強化に関与します。
20世紀の間は、脳のニューロンのネットワークは青年期に完成したあとは変えられないというのが神経科学の常識でした。しかし、1998年に脳の海馬のニューロンが分裂して増殖する(ニューロン新生)ことが証明されました。海馬は記憶と学習に関わる領域です。

つまり、神経回路は刺激(入力)によって発達しながら形成され、成人になるまでにひとまず完成しますが、成人になってからも、外部入力に応答して脳の神経回路は変化し続けます。
シナプス可塑性はアポトーシスによるニューロンの減少と、神経細胞の新生や発芽によるシナプス接合部の増加という物理的な変化と、長期増強(long-term potentiation)という信号の通りが良くなるという生理的な変化によって起こります。

脳が情報を取り込むとニューロン間の活動が起こります。その活動が繰り返されるほど、ニューロン同士がより強く連結するようになり、信号が伝達しやすくなります。このようにして、ニューロン間の結びつきができて行きます。このようにして新しい情報が記憶として定着していきます。このようなメカニズムが長期増強です。
前述の「CB1受容体の活性化が神経回路を消去する」という研究結果が正しいとして、大麻成分が成人期でのシナプス形成を抑制あるいは消去することによって、神経機能に抑制的に作用して有害作用と関連している可能性はあります。
しかし、神経回路を消し去る働きも必要なはずです。シナプスができるだけでは無秩序になるだけで、不要な回路、使わない回路を消去するメカニズムが必要です。この働きを内因性カンナビノドが行っている可能性をこの研究は示しています。
そして、大麻の「神経回路を消す作用」が、大麻の薬効の一部と関連している可能性もあります。

【大麻は嫌な記憶を消してくれる】
神経回路を消去する作用は悪い記憶を消す可能性もあるので、大麻のPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)に対する効果のメカニズムにも関連している可能性があります。
大麻は嫌な記憶を消してくれるという薬効が経験的に知られています。それを支持する研究結果も数多く報告されています。
心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)は、生死にかかわるような出来事の体験や、強い恐怖感や精神的苦痛の経験の記憶がこころの傷(トラウマ)として残り、様々な症状を引き起こす病気です。トラウマとなる体験として大規模な災害、犯罪、交通事故、家庭内暴力、虐待などがあります。
突然、つらい記憶がよみがえり、感情が不安定になり、取り乱したり涙ぐんだり怒ったりする場合もあります。警戒心が強くなってイライラしたり、不眠になったり、同じ悪夢を繰り返し見ることもあります。つらい記憶に苦しむことを避けるために、感情や感覚が麻痺することもあります。その結果、通常の日常生活や社会生活が送れなくなくなります。
カウンセリングなどの心理療法や、ストレスを緩和する精神療法や、抗うつ薬などの薬物療法が行われます。
米国やカナダでは、PTSDの治療に大麻が使用され、有効性が報告されています。
オタワ大学精神科の研究者らは、合成テトラヒドロカンナビノール製剤のナビロンの投与により、悪夢や不眠症などPTSD の症状が著しく改善した他、慢性痛にも主観的な改善が見られたと報告しています。また、ナビロン治療により、被験者らの処方薬(抗精神病薬や鎮痛薬)の服用が減ることを報告しています。
ニューメキシコ州では医療大麻の適用疾患にPTSDを最初に記載した州です。2009年から2011年までに医療大麻で治療を受けた80例のPTSD患者の治療結果が報告されています。PTSDの症状の程度をスコア化して評価する方法で比較し、医療大麻を使用する前に比べて、医療大麻の使用で症状が75%以上の改善を認めたという結果が得られています。(J Psychoactive Drugs. 46(1):73-7. 2014年)
PTSDの患者は、アナンダミドなど内因性カンナビノイドの生産が減少しているという報告もあります。アナンダミドは、不安感や抑うつ症状を軽減し、ストレスに対する抵抗力を高める作用が知られています。このような体が持つストレス抵抗性を高めてPTSDを治療する方法として医療大麻は優れていると考えられています。
前述のように、長期記憶に関与する海馬では、ニューロンの新生が起き、神経回路の新しい発生や不要な回路の刈り取りが成人でも起こっています。
不要な神経回路を削除するメカニズムが無いと、不快な記憶が一生残ります。この悪い記憶の神経回路の削除を大麻のTHCが促進している可能性はあります。まだ誰も言っていませんが、大阪大学の研究結果はその可能性を示唆しています。(大阪大学のプレスリリースによると、「カンナビノイドが神経回路を消去するという発見は世界で初めて」と言っていますので、まだ誰も言っていないのかもしれません。)
動物には痛みや苦痛を軽減する体内システムが存在します。内因性オピオイドや内因性カンナビノイドがそれに相当します。
嫌な記憶や必要のない記憶を消すシステムは有用です。
全ての記憶が蓄積すると、そのうち神経回路は満杯になって破綻してしまいます。
思い出すことによって記憶は維持・強化され、思い出さないあるいは思い出したくない記憶は自然とシナプスを刈り取ることによって、忘れ去ります。
シナプスや神経回路を消すシステムがカンナビノイド受容体CB1の働きの一つなのです
医療大麻がPTSDの治療の有効なのは、このようなメカニズムも関与しているかもしれません。
戦争体験でPTSDになった退役軍人が多い米国では、PTSDの治療に大麻が使用されています。
内因性カンナビノイドシステムが嫌な記憶を消すという研究結果は多く報告されています。例えば、以下のような報告があります。 

The cannabinoid system in the retrosplenial cortex modulates fear memory consolidation, reconsolidation, and extinction.(脳梁膨大後部皮質におけるカンナビノイド・システムは恐怖記憶の固定と再固定と消去を調整する)Learn Mem. 2015 Nov 16;22(12):584-8.

【要旨】
カンナビノイド受容体タイプ1(CB1受容体)は脳の様々な領域において情動記憶のプロセスにおいて中心的な役割を果たしているという事実があるが、脳梁膨大後部皮質におけるカンナビノイド・システムの働きについてはまだ知られていない。
この研究では、ラットを用いた恐怖条件付け文脈学習テストを用いて、恐怖条件付けが成立したあとに、脳梁膨大後部皮質内にCB1受容体のアンタゴニスト(阻害剤)のAM251を注入すると長期記憶固定(long-term memory consolidation)を阻害し、CB1受容体アゴニスト(作動薬)のCP55940の注入は長期記憶固定を増強した。
さらに、再刺激後に脳梁膨大後部皮質内にAM251の注入すると記憶再固定を増強し、CP55940は逆の効果を示した。
最後にAM251は長期記憶の消去を阻害し、CP55940は長期記憶の消去を促進した。これらの結果から脳梁膨大後部皮質内におけるカンナビノイド・システムは情動記憶を制御していることが強く示唆された。 

脳梁膨大後部皮質(retrosplenial cortex)という脳領野は、左右の脳を結合する脳梁の後部の肥大した部分で、長期記憶に関わる海馬と短期記憶に関わる前頭葉を結ぶ重要な結合部となっているとして、記憶研究において強い興味を持たれています。
恐怖条件付け文脈学習テスト(contextual fear conditioning test)は、音や光などそれ自体では恐怖の指標となる反応を喚起しない条件刺激と、電気ショックなどの恐怖反応を喚起する非条件刺激を組み合せます。
動物に音を聞かせると同時に電気ショックを与えて聴覚による条件付けを行なうと、条件刺激(音)を提示しただけで恐怖に対する反応(体を硬直させて動きを止めるなど)が起こります。PTSDの実験モデルとして知られています。 
このような動物実験で、大麻成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)はCB1受容体を介する作用メカニズムで恐怖記憶の消去を促進する効果が報告されています。
恐怖記憶を消去する作用は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に役立つことが報告されており、医療大麻がPTSDに有効である根拠になっています。

大阪大学の論文の著者らは、神経回路を消去することが悪いことだという観点からまとめていますが、嫌な記憶を積極的に消してくれる大麻の薬効にも目を向けるべきだと思います。
そもそも、人間に大麻成分のカンナビノイド受容体があるのは、人間が大麻を利用するために存在するのではありません。もともと内因性カンナビノイドシステムという体に重要なシステムが存在し、大麻成分のカンナビノイドはたまたまその受容体に結合したから、いろんな薬効を示すようになっただけです。

嫌な記憶を忘れたいために酒に溺れる人は多くいます。アルコールの場合は酔っているときは嫌な記憶を忘れることができますが、覚めれば思い出します。だから、アルコール中毒になります。大麻は嫌な記憶を完全に消してくれる作用を秘めています。

【大麻の有害性を示すと研究費が取りやすい?】
この論文は良い研究ですが、大麻の危険性にことさら結びつけて強調している点は偏向しています。
大麻のように対立する意見が存在する状況で、一方の主張だけを信じて、反対の意見や見解を取材しなかった点で、この報道は偏向報道になっています。
薬効があれば、なんらかのマイナスもあるのは薬理学の常識です。大麻を悪者にしたいグループには良い材料ですが、冷静に客観的に読めば、一つの精神薬理学の基礎研究に過ぎず、この論文から「大麻は神経回路を壊すので危険」という考察になるのは、科学的・論理的な思考が欠如していると言わざるを得ません。
大阪大学のホームページには「世界初!大麻が脳に悪影響を与えることを科学的に証明。 大麻の有効成分:カンナビノイドが神経回路を破綻」というタイトルでこの論文を紹介しています。
外来性に大麻を摂取すると、必要な配線まで刈り込まれ、神経回路の破綻をきたすことを世界で初めて明らかにしました。

本研究成果のポイントとして
・長年不明であった大脳皮質内の神経回路形成の重要なメカニズムを解明

・大麻(マリファナ)の有効成分でもあるカンナビノイドが、大脳皮質神経回路の破綻をきたすことを発見

・大麻や危険ドラッグが脳に悪影響を与えることの科学的根拠を明らかにしたとともに、脳損傷、認知症での機能回復に応用できる可能性も期待できる成果

というリリースをしています。このリリースを読めば、マスコミが騙されるのも仕方ないかもしれません。
「脳損傷、認知症での機能回復に応用できる可能性も期待できる成果」という部分は、CB1の活性化がシナプス形成を抑制するのでCB1を阻害する薬が脳損傷や認知症の治療になるかもしれないということを言っているようです。
CB1受容体の阻害剤はすでに開発され、販売もされましたが、副作用で販売中止になっています。
THCは食欲増進作用があり、この作用はCB1の作用によります。そこでCB1のアンタゴニスト(阻害薬)が食欲を低下させて肥満の治療薬となるという考えでリモナバン(Rimonabant)が開発され、発売になりました。
予想通りに食欲減退と体重減少の効果はあったのですが、抑うつや自殺企図の副作用が問題になって発売中止になっています。
つまり、CB1の働きを阻害することは食欲を低下させる目的では有効ですが、脳内報酬系の抑制などで幸福感や快感を得ることができなくなるようです。
したがって、CB1受容体の阻害剤を開発しても、同様の副作用で使用できないというのはカンナビノド研究者であれば常識のはずですが、このようなコメントをしておけば、厚労省や文科省から研究費がもらえます。
厚労省向けに「大麻有害説」をマスコミを利用して宣伝しているように、私には感じます。

【アルコールが最初のゲートウェイドラッグである】
マリファナ(大麻)はコカインやヘロインといった「ハードドラッグ」の使用リスクを高める「入門薬物(Gateway drug)」であるという意見があります。
「入門薬物(ゲートウェイ・ドラッグ)」というのは、大麻のような「ソフトドラッグ」の使用が、コカインやヘロインのようなより麻薬性の強い「ハードドラッグ」の使用を誘導するための入口となる薬物のことです。大麻の使用が、より依存性が高い薬物の使用を誘導するという理論です。大麻の使用に対して否定的な行政や団体やメディアにより用いられ、このような考え方を「ゲートウェイ理論」や「飛び石理論」などと呼ばれています。
医療大麻の場合はゲートウェイ論争は関係ないので、議論をする必要はありません。(医療大麻は大麻の医療効果を議論しているので、薬物依存の問題は関係ありません)
しかし、山本医療大麻裁判に関するジャパン・タイムス(Japan Times)の記事の中に、厚生労働省監視指導・麻薬対策課の役人が、JAMA Psychiatryの最近の論文を引用して「大麻は他の薬物に対するゲートウェイドラッグである」という意見を述べているようです。
新聞記事では「2001年から2002年にかけて調査された大麻使用者が非使用者と比べた場合に、3年後に薬物乱用に進展する可能性がおよそ6倍高かったことを示した。」とあります。
この記事とは別に、大麻を使用したことのある人の44.7%がハードドラッグ(ヘロインやコカイン)を使用したことがあるという調査結果もあります。(Int J Drug Policy. 2015 Feb; 26(2): 135–142.)
しかし、この論文では、大麻がハードドラッグの使用を誘導したという因果関係を示しているわけでは無いと記述しています。
「大麻使用者の44.7%がハードドラッグを使用した」「大麻使用していない人に比べて大麻使用した人はハードドラッグに移行する率が6倍高い」というのは、必ずしも大麻がハードドラッグの使用を誘導するという証拠にはならないのです。
大麻使用はゲートウェイ(関門)ではなく、通過点に過ぎないというのが、最近の考えです。
例えば、私の場合は、最初に酒を覚え、次にタバコを覚えました。もし大麻が合法であればその次に大麻を使用したと思います。しかし、日本では大麻やヘロインやコカインは非合法なので使用しませんでした。
米国の場合は、大麻のアクセスは比較的容易なので、アルコール→タバコ→マリファナと進み、そこからヘロインやコカインに行く人もいます。
つまり、初めからヘロインやコカインを使用するのではなく、人間は比較的軽いものから順に試して行きます。少しづつハードルを高めていくのが薬物使用の特徴です。
アルコールやタバコを覚えると、マリファナへのアクセスの精神的なハードルが、アルコールやタバコを知らない人たちのハードルよりも低くなります。もし、この世の中に大麻がなければ、アルコール→タバコ→ヘロイン・コカインと進むのです。(下図)

図:人間が薬物を使用する場合、いきなりハードドラッグ(ヘロイン、マリファナ)に行くことは稀。最初に合法的な薬物(アルコールやタバコ)を試し、ついでマリファナ(大麻)を試し、その中の一部がハードドラッグ(ヘロインやコカイン)に興味を持つ。大麻がヘロインやコカインの使用を誘導するのではなく、人間の行動の順番としてA→B→C→Dと進むだけである。もし、大麻がこの世の中に無ければ、BからDへ行く。 

したがって、当然のことながら、大麻を使用していない集団と大麻を使用している集団を比較すれば、数年後の段階で大麻使用群の方がヘロイン・コカインまで進んでいる人が多いのは当たり前なのです。
しかし、アルコールもタバコもマリファナも無い世界であれば、ヘロインやコカインの使用も減るはずということは言えます。個人個人の薬物使用のハードルが低下しないためです。
このように、「薬物使用の精神的なハードル」を下げることもゲートウェイだと言うとすると、何が最初のゲートウェイドラッグかという話になります。それはアルコールです。以下のような報告があります。

Alcohol as a gateway drug: a study of US 12th graders.(ゲートウェイドラッグとしてのアルコール:アメリカ合衆国の高校3年生(12th grader)の調査)J Sch Health. 2012 Aug;82(8):371-9.

この報告は米国の高校3年生の調査です。この調査で、アルコールを飲用している人は、タバコやマリファナやその他の非合法薬物を使用しやすくなると言っています。つまり、アルコールが最初のゲートウェイドラッグであり、非合法薬物の規制には、まずアルコールへの対応が必要だと言っています。
米国の薬物取締では、未成年の飲酒を取り締まることが大麻やヘロインやコカインの使用を減らす方法だと考えられています。
小学校や中学校で、健康と社会に対するアルコールとタバコの有害性を徹底的に教育して、アルコールやタバコの使用を減らすことが、違法薬物を減らす有効な方法と考えられています。しかし、そのような教育は行われていません。実施すれば多方面から猛反対がくるのでできないのが実情なのです。
厚労省がゲートウェイドラッグ仮説で大麻の有害性を主張するなら、まず飲酒を規制しなければならないことになります。大麻使用のゲートウェイドラッグ(入門薬物)がアルコールだからです。(ただし、アルコールが飲めないからという理由で大麻を使用する人はいます)
薬物使用の最初のゲートウェイドラッグがアルコールであることは多くの人が気づいています。しかし、アルコールは合法薬物という理由で、何の議論もされません。
アルコールが原因の事故や殺人は日本でも多数起こっていますが、アルコールは合法という理由でアルコールの有害性は軽視されています。 最近、以下のような論文があります。

Ready for Retirement: The Gateway Drug Hypothesis(引退の準備完了:ゲートウェイドラッグ仮説)Substance Use & Misuse, 50:8-9, 971-975, 2015年 

ゲートウェイドラッグ仮説はもはや意味がないという提言です。
私は、山本医療大麻裁判の証人尋問でゲートウェイドラッグ理論を否定しました。
前述のように広い意味(薬物使用の精神的ハードルを下げる)では大麻はハードドラッグのゲートウェイ(関門)になっている可能性はあります。しかし、この議論は医療大麻では関係ないし、アルコールが他の薬物使用の最初のゲートウェイだと説明すると数十分かかるので、あえて議論を避けました。
ちゃんと論理的に議論すれば、アルコールを規制しなければならないという実施不可能な結論になるので、「大麻のゲートウェイドラッグ仮説」は議論するだけ無駄なのです。

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