Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

死にかけの技術

2009-05-24 23:59:59 | Thinkings

 コンピューターの世界はドッグイヤーと言われてまして、犬が人間よりも早く年を取っていくのと同じように、IT業界は他産業の数倍の早さで技術が陳腐化していくという話です。まあ、今更と言えば今更な話ですよね。

 そんなわけで、黎明期にはいろいろともてはやされた技術も、時間がたつにつれてアップデートされたり、新しい技術に置き換えられてしまって役に立たなくなるなんて事は多々あります。そこで、開発手法やプラットフォーム等のソフトウェア畑の技術について、こんな記事がありました。

市場価値を失いつつあるITスキル10選 ITmedia

 スラッシュドット・ジャパンでストーリーとなって熱い議論が交わされている「死にかけのITスキル10選」。もともとはGlobal Knowledgeの記事(Ten Dying IT Skills)で言及されているもので、コンサルティング・ファームFoote Partnersが行ったITスキルと給与水準の関係の調査から以下のような10個のITスキルが挙げられている。

 挙げられているのものの中で、知名度があるのは「HTML」と「COBOL」くらい?それ以外の技術は、「使われているけれど、メインストリームにはなれなかったもの」だと思っておけば問題ないと思います。正直な話、実際に現場で関わっている人以外には、あんまり縁がないものばかりじゃないでしょうか。

 元記事に挙げられている技術は、「習得していても市場価値が無いもの」としてあげられています。しかしながら、ドッグイヤーの技術革新とは言いつつも、ソフトウェアというのは意外なほど長く使われていくもの。確かに、一般的には「価値無し」と思われていても、ある特定の現場では末永く必要とされる、なんてことはよくある話です。例えば、COBOLは今でも金融系のメインフレームでは現役で動いていますし、Windows3.1だってPOSレジなどの制御に使われていたため、最近までライセンスの発行が行われていました。DOSやBASICなんて、組み込み系やポケコンの世界ではまだなかなか寿命を迎えることはないでしょう。
 要するに、それらの技術に本当に価値が無いかは「一概には言えない」と言うことです。お給料にだって「それらを重要視する職場では」反映されることでしょうから。

 とはいえ、「今持っている技術が廃れること」というのは、常に考えておかなければならない事だとは思います。例えば、これまで自社の製品で採用してきたプラットフォームが、提供元から一方的にサポート打ち切りを宣告されたor提供元が倒産したor提供先が一斉に別プラットフォームへの乗り換えを希望した、なんてことになったら今後どうしていくかを考えるだけでいやになりますが、この業界ではあり得ない話ではありません。最後の話だって、クライアント・サーバーシステムからWebベースのクラウドへの乗り換えを顧客から提案されたりとか。
 まあ、ここまで極端ではなくても、使っているプラットフォームのバージョンが上がることで、それまで使えていたマクロや関連ソフトウェアが動かなくなったりなんてのは日常的に起こりうることで、実際にJavaベースのウェブアプリ関連は、「バージョン指定」なんてのがまかり通っていますね。しかし、そういうのは顧客に対して大幅な不利益を被らせることになりますので、いつかは改変しなくちゃならない。しかし、仕様変更によってソフトウェア全体の設計を大幅に見直すことになったとしたら、まるっきりプラットフォームが変わったのと同じじゃないでしょうか。

 あまり使われなくなった過去のものと見なされている技術について、いくら「需要が無くなることは当面無い」と言っても、必要とされる場面が狭まってくるのは必然です。「一芸に秀でる」事も重要ですが、「保険をかける」ことも大事なんじゃ無かろうか・・・なんてことを思いました。