ビデオデッキがテレビ番組を録画するために第一線で働いていた頃、こんな問題はありませんでした。
そもそもこの問題が出てきたのは、CD-RやDVD-Rと言った、元の音質、画質と全く同じものが寸分違わずコピーできるデジタル方式の記録技術が普及したことによります。これによって、一度記録されてしまうと場合によっては際限なく複製が作られてしまい、権利者の利益を大幅に損なうことになりかねない、と言うことで、録音機器や記録メディアに対して一定の割合の補償金を課すことにしました。
そう、私的録音録画補償金制度の始まりです。
しかしながら、CDやDVDといったパッケージで売られている「商品」ならまだしも、そもそも無料であるテレビ番組の録画に対して補償金を掛けるのはいかがなものかというもっともな理由や、ただでさえ不透明な団体であるB-CASによる暗号化が行われている上に、複製回数にまで不可解なほど制限を掛けておいて、さらに補償金まで取るというのかという「機器メーカー側」やユーザーの至極もっともな主張により、この制度はターニングポイントに立たされています。
今回の例は試金石になると思うのですが、結果だけ見れば非常に大きな一歩だと思います。
東芝、2月発売のDVDレコーダーに私的録画補償金上乗せせず INTERNET Watch
東芝は8日、地上アナログチューナーを搭載しないDVDレコーダーの販売価格に私的録画補償金を上乗せしていないことを明らかにした。DVDレコーダーは補償金の対象機器だが、東芝では「無料デジタル放送のみを受信するDVDレコーダーを対象機器とするかどうかについては結論が出ていない」と指摘。この問題が解決するまでは、地上アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーに対しては補償金を上乗せしないとしている。
これは、先ほども挙げたとおり、「複製に制限のかかっていないアナログ放送はまだしも、コピーワンスやダビング10でがんじがらめになっているデジタル放送は権利者の権利を侵害していない」という理由を掲げて、私的録画補償金に真っ向から反対していたJEITA(電子情報技術産業協会)の一員である東芝が、この問題の解決に向けて先鞭を切った形になります。
私個人の考えで言っても、「元々無料で放送しているものにがんじがらめで規制を掛けることがそもそも間違っている。100歩譲って、DRMという権利者保護技術を導入するならば、私的録画補償金による補償は二重取りにつながる」と思っていますので、このまま行くとずるずると私的録画補償金の対象になりかねなかった地デジ録画について再考する機会を作った、今回の東芝の行動は評価したいです。
前々からこのブログでも言っているとおり、この問題は権利者べったりの文化庁ではなく、経済産業省にゆだねるべきだと私は思っています。すでにこの問題は権利者の手を離れ、権利者”団体”の利権確保に移っているとしか見えません。つまり、カネの、ビジネスの問題です。ならば、同じコンテンツを扱うことで商売をしている電子情報技術産業協会、そして実際の利用者とフェアな形で議論ができないのは将来的に大きなマイナスだと考えます。
ここ最近のネット発のコンテンツの流布形態を見ていると、無料のテレビ放送を録画されたくらいで深刻なダメージを受けるような権利者は、経済的に”ゼロ”と同価ではないかと思えてきました。つまり、カネを払ってコンテンツを買うほどの価値が無いって事ですよね?本当に価値があるならば、そのコンテンツが何であれ、市場で受け入れられるものです。
ネットで無料で手に入るのに、CDが売れたり、着うたが売れたり、Blu-Rayが売れたり・・・今後、そういう意味でも淘汰が始まっていくのではないでしょうか。