Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

音楽配信悲喜こもごも

2009-05-09 23:59:59 | Thinkings

 このブログをはじめてから5年目が終わろうとしていますが、その間に確信したことがあります。いろいろなサービスの始まりや終わりを見てきましたが、いったん独走を許してしまうとなかなか挽回は難しいと言うこと。iPodやMixi、最近はFirefoxが頑張っているけれど、IEもそう。世界的にはGoogle、日本に限ればYahoo!もそういえるかもしれない。群雄割拠の頃は良いけれど、そのうちにどれかが頭一つ抜けてしまうと、ほぼ勝負が決まってしまいます。

 もちろんそれは音楽配信も同じ事で・・・日本の場合は「着うた」という、この国独自の一曲単位配信ルートが確立されているので何とも言えないですが、アメリカでは事実上iTunes Music Storeの一人勝ちです。なんと言っても、昨年アメリカ一音楽を売った店になるくらい、その事業は定着してしまいました。その「強い小売店」という立場から、DRMの部分的排除など、ユーザーにとってもメリットがある事が実現できた訳です。

 しかしながら、それ以外の音楽配信サイトにとっては目の上のたんこぶどころの話ではありません。ただ、今回のネタ元のimeemの場合は、キャラクターも大きく違うことですし、それだけが原因ではないみたいですが。

Warner MusicいわくImeemに価値はない。しかも回収不能の負債が$4M TechCrunch

Warner Music Groupは、imeemとLalaの両社に出資しており、もはやどちらにも何の価値もないと考えている。同社は直近の四半期で、imeemへの出資全額とLalaへの出資の半分について評価損を計上した。SECに提出された10Qレポートに書かれた詳細によると、imeemへの投資については$16M(1600万ドル)、Lalaの評価損部分については$11M(1100万ドル)を負担したほか、imeemの回収見込みのない不良債権でも$4M(400万ドル)を負担している。デジタル音楽で合計$33M(3300万ドル)をドブに捨てたことになる。

 3300万ドル≒33億円をドブに、ですか。何とも景気の悪い話ですが、これにはiTMSと違い、imeemがストリーミング事業者であったことにも原因があります。

 というのは、iTMSの場合、買い切りの形での曲販売となりますのでレーベルへの契約金額支払いはその場限りとなります。一曲売れていくらですから単純明快です。しかしながら、ストリーミングの場合はそれとはちょっと事情が違います。

imeemがそこまでひどい財務状況に陥いった理由は、一曲ストリームする毎に音楽レーベルに支払う負担の重さだった。同社は、ストリーム毎ではなくユーザー当たりの収益ベースでの支払いをレコード会社に交渉し、Warnerの報告書にもその理由が示唆されている。

 つまり、同じユーザーが一曲を何度も聞く場合、iTMS側がレーベルに支払うのは購入時の一回だけ。対してimeemは、一回再生ごとに支払いが発生します。しかも、imeemは利用無料で広告収入による運営方法をとっていましたので、当然のごとくペイできなくなってしまいました。ちなみに、日本の置いては、無料で、しかも曲を選べる形での音楽ストリーミングサービスは、少なくとも大手では手を出しているところはありません。無料じゃなければYahoo! のサウンドステーションがありますが・・・音質が押さえられていたり、フル版じゃなかったりと言った制限があるようで、なかなか自由に聞くのは難しいみたいですね。

 そんなわけで、ストリーミングによる音楽配信の難しさが浮き彫りになった形ですが、果たして日本でのストリーミングの今後の展開はいかがなもんだろうと考えたとき・・・着うたがある限り、あんまり流行らないような気がします。日本では不自由なストリーミングよりも、手元に置いておける買い切り型が今後も伸びていくのではないでしょうか。個人的に気になるのは、「月定額でダウンロードし放題」というサービスがいつ来るかと言うこと。前々からiTMSでやるぞ、やるぞ、とオオカミ少年のように噂されているのですが・・・これをDRM無しでやるところがあったなら、迷わず飛びつくのですけどね-。