CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】無銭横町

2022-03-21 20:56:52 | 読書感想文とか読み物レビウー
無銭横町  作:西村賢太

追悼の気持ちも抱きつつ読みました
久しぶりの貫太がいつもの通りで、安心したというか、
よりオムニバス感があって、短編それぞれの年代がずいぶん違うせいで、
社会環境というか、貫太の環境がどういう感じなのか
ザッピングされて戸惑うのにも関わらず、
根っこというか、貫太は貫太のままだというひどく安心して読める内容
つまるところ、いつもの「はな」「どうで」というやつでありました
面白かった

どうやったら、こんなに嫉妬深くというか、
湯沸し器のようにすぐ怒ることができるのか、
しかも自分勝手極まりない理由でという感じが
もう二週くらいまわって面白いわけだけども、
本当にろくでもない男だよなと、しみじみかみしめる内容でありました

小説内にて、小説は小説家のそれとは異なるとうたっておきながら
おそらくは、この私小説については、ほぼ実話というか
このままなのであろうかなと思わされるところが多いのでありました
プライドが高い、そして、変に頭脳労働思考であるというあたりは
すごく自分のことをよくわかっていて、
それを傲岸としてバカにする手管にたけていると
舌を巻くというか、読んでいて面白いと思ってしまうのだけども
この、どうしようもないが、そうとしかない
開き直るのともまた違う、
ただただ嫌だと思っていても、そのままであること
そして、そこに潜むねじれのようなものが
怒りとして表出するというのが、だいたいの話なんだけど
こんな貫太に優しい彼女がいた時分があるんだなと
その一遍の妙な清涼感が驚くほどよかったのでありました

そうかと思えば、莫迦にして、そして、自分のガラではないとわかりつつも、
桜が咲いていたというその情景に浮かれた、
少し柔らかな、明るい話なんかにも挑んでいて、
これは作者自身、どういう感想をもって送り出したのか気になる短編もあり
どれもこれも、ただ、面白いと思えたのでありました

やっぱり、氏の作品、その生き方というのが好きなんだなと
思わされたのであります、合掌


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