CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】静かな爆弾

2018-05-15 21:13:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
静かな爆弾  作:吉田 修一

面白い小説だった
読んで情景が浮かぶし、主人公の心の動揺や、考え方も
物凄く伝わってきて、一つ別の人生を体験したみたいで
とても楽しい読書となりました

物語そのものは、さして楽しいものではない
むしろ、辛いかもしれないと思えるそれなんだが、
ここに描かれた恋愛と呼ぶのもまた違う、
側に居て欲しいという気持ちが、まざまざと浮かんできて
心を捕まえられたようになったのでありました

耳が聞こえない彼女と出会い、
なぜだか付き合うとは違う、不思議な関係となる
主人公はジャーナリストでもあり、紛争地帯に挑んでは帰ると
非常に険しい仕事をしている、仕事が立て込んでいるときに
逆立つ怒りをかつては、言葉で元彼女たちにぶつけては
関係を壊してきたのだが、耳が聞こえない彼女にはそれができない
そこで、筆談という方法をとり、
その筆談という手法がまた、新しい思考といえばいいのか
自分が、つい口で言ってしまうことの軽薄さに思い至るというのが
非常にドラマチックで、自分にも感じられるものがあって
面白いのでありました

その他も、耳が聞こえない人との付き合いといえばいいか、
その共同作業から通して見える風景、関係なんかが
物凄くよく伝わってきて、この描写力に圧倒されてしまったのでありました
自分が、いかに傲岸というでもないが、
想像力なく生きているかが伝わるかのようで、なんというか
反省でもあるが、凄く新しい発見を得たようでもあり興奮するのでありました

言葉が伝わるとはどういうことかと、
それを問いかける内容なんだが、ひとつもそんな説教臭さはなく
自身に問いかけているかのようでもあるし、
生き方で、それを示しているようでもあるというのが
まぁ、ともかく凄い見事な小説だと感動してしまったのでありました
凄く考えさせられるし、それでも面白い
いい本を読んだと快哉であります