本書は昨年出た別冊太陽。
後に出た最澄の方を先に読んでしまったが、こちらも、読み応えあり。
最澄の方は、仏教全体に話が及ぶ面が多かったような気がするが、本書は、空海の世界により絞った内容になっている。
読み物としても、写真集としても、すばらしい出来。
項目としては、今に生きる弘法大師、弘法大師の生涯、おしえ、伝説となっているが、どの章も読みごたえがあるし、一般的な話のみではなく、結構突っ込んだ展開をしている章もある。
天台宗は、その弟子たちによって、鎌倉仏教の諸派となり、日本の仏教の基礎を形作ることになったが、真言宗は、真言宗、弘法大師信仰となって、そのまま今の時代に生き続けたように思う。
お遍路さんもそうだし、高野山、東寺、醍醐寺、仁和寺などの巨大寺院もそうだ。
本書で、もう一つ気づかされるのが、伝説が荒唐無稽なのにもかかわらず、空海だから、あるかもと信じたくなってしまうこと。
空海は、62歳(今の私と同じ)で、入定したとされるが、そんな短時間で、これだけのことができるものなのか。
ただ、聖徳太子のように、曖昧模糊とした人間ではなく、実在した人間なのだから、これだけのことをやり遂げた。
書も多く残されるが、内容のレベルが高く、かつ書体も、変化に富んでいて、それぞれが美しい。
鶴岡八幡宮の扁額の文字も、空海が元ということを本書で知った。
仏教が伝わり、政治につながるようになったのは、明日香から、奈良だが、本当に日本人に仏教が浸透しだしたのは、まさに最澄、空海の時代以降。
今の日本の進行の基礎を作った二人と言って差し支えないし、お二人とも、偉大な人物であったことは事実。
お遍路もいつか取り組みたいと改めて思った次第。