小説「女帝 小池百合子」

石井妙子という作家が書いたノンフイクション作品だ。文字通り東京都知事の小池百合子のこれまでを事実を一つ一つ検証しながら紡いだ作品だ。

450ページを超える長編を2日かけて読み切った。こんなことは何年ぶりだろうという思いがする。それほど読みがいもあったし面白い小説だった。

今をときめく「大政治家」小池百合子の歩みが実に生き生きと描き出されている。今東京のトップに立つ人が、この数十年どういう政治的な足跡を残してきたか、は私などでもおぼろげに記憶している。あらためてスゲー政治家(全身の皮肉をこめて)という感がする。まずこの人の政治信条がはっきりしていなかった。その時々の風の吹き方で実に柔軟にむき方を変えてきた。それでいてたくさんの人からの期待を集める。

日本新党、自民、そして希望の党、都民ファスト、などなど。本籍いずこ? と言いたくなる、防衛大臣だったり環境大臣だったり。それでいてこの人の政治信条はあいまいだ。

この小説は、このようなキャラクタの小池の生き方生き様を描く。実に面白い。人をだます詐欺とか脅迫とかで迫られることはなさそうだが、だましたな、ごまかしたね、と多くの人(ほとんどが一般庶民。都民が多い)が恨むのもムリはないと思わせるような言動が次から次に出てくる。

東京都の「築地市場の豊洲新市場への移転」をめぐって東京は大もめにもめたが、この時小池は、築地も豊洲のどちらをも活かすという方針を出した。有名な「築地は守る、豊洲は活かす」という『基本方針』を出した。これで多くの人は「これは俺たちの気持ちと一致する」と思った。「都民ファストの会」は勝利した。「築地女将さん会」は大いに喜んだ。しかし昨年1月、突然築地市場跡地を「国際会議場や展示場にする」と発表した。都民への約束をキャンセルした。

「だましたな!」「嘘つき!」とたくさんの声を浴びながら、しかし日本初の女性総理かも、などという声もある。

こういう人を好きなように期待させながらこれをウマク裏切って進めてきた小池百合子は今また政治の舞台で華々しい何かを演じようとしている。「ジャンヌダルク」と言われたり自分が言ったりしながら…。
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