新型コロナウイルス・武漢・黄鶴楼・李白の詩

中国武漢から始まった新型コロナウイルスの広がりは、今や人類にとって新たな挑戦として受け止めなければならない驚異になりかかっている。

私はこの武漢はかつての黄鶴楼のあった土地という報道があって「あの李白の詩にある黄鶴楼か」と思い出し、妙な形で懐かしさをもって連想することになった。
唐時代の詩聖李白の詩「黄鶴楼にて孟浩然の 広陵に之(ゆ)くを送る」。

私は月に2度、もと拓銀の幹部役員だった石黒直文さんが主宰している「石黒政経塾」に参加しているのだが、会場は毎回札幌グランドホテルの一室だ。この小会議室は「黄鶴楼」という名前の部屋で天井には李白の詩が描かれている。毎回この詩を見てこの内容を想像する。

友人の孟浩然が武漢にある黄鶴楼から広陵に行くことになった。彼を送る時に詠んだ詩だ。
故人(こじん)西の方、黄鶴楼(こうかくろう)を辞(じ)し
煙花(えんか)三月(さんがつ)揚州(ようしゅう)に下る
孤帆(こはん)の遠影(えんえい)、碧空(へきくう)につき
惟だ(ただ)見る長江(ちょうこう)の天際(てんさい)に流るる(ながるる)を

黄鶴楼のあるこの地は今問題になっている武漢とのこと。当時、いわば物見櫓に類する黄鶴楼(黄色い鶴が舞った所というようないわれがあるらしい)を発って花の3月長江下流にある揚州に向かう友人を詠っている。友の乗る舟はもうはるかかなた天際といっていい遠くに見える、というような意味だろう。

広大な長江の流れと、ぽつんと一つ離れていく舟のイメージ、友人との別離の悲しさ、など。
これは中学校2年生の国語の教科書にある。
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