ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

花の百名山・根子岳

2009-08-11 12:28:52 | 山日記


T字路で登ってきた道と分かれ直進すると、間もなく暗い針葉樹林の中の
下りとなる。
腰までの高さがあるクマザサが細い道を覆い隠している。それを掻き分ける
ように行くので、雨具のズボンを出したいのだがザックを降ろす場所もない
急降下である。
おまけに岩塊がゴロゴロしているので、登ってくるのはさぞ大変だろうと
思う。ときどき霧のような雨がサーッツと流れ過ぎる。笹の葉から雨滴が
こぼれるようになった。

やや傾斜が緩み道も広くなり、傘をさした男女が登ってくる。笹原が大きな
音を立てる本降りになった。小さな空き地の大木の下でザックを降ろし、
カバーをかけ雨具を付ける。
更に下りが続き、ようやく開けた草原にでた。大すき間と呼ばれる鞍部
のようだ。雨に霞む草原に色とりどりの花がポツポツ見える。
ここはペースを上げて通り過ぎる。



少し急な登りになり、大きな岩があるところで休んで水分を補給。
晴れていればさぞ見事な眺めが拡がるだろうと残念だ。
話し声と共に中年女性二人が登ってきた。先ほど四阿山で「根子岳へ行かれ
るのですか」と聞いてきたグループの人だ。埼玉から4人できて、うち2人
は別の道を下山したという。この人達も昼食がまだの様子だったが、私たち
が後でするというと一緒にここを発つ。
いつの間にか雨は止み、ときどき濃いガスの中から思い出したように落ちて
くるだけになった。



火口壁の上らしい岩稜帯になり、イワギキョウやミネウスユキソウ、イワベンケイ
などに慰められながら高度を上げる。
通り過ぎるのがやっとの大岩の細い隙間を抜けると、屏風のように連なる岩場
の下を捲いていく。



傾斜が緩むとなだらかな丘状になり、ガスの中に根子岳頂上の祠が
ぼんやりと浮かんでいた。頂上は火山らしい砂礫帯で大小の岩塊が
転がっている。
宝永山の頂上に似ていると♀ペンがいうが、確かにその通りだ。
石を積み上げた台の上に小さな石祠、横に小さな鐘を吊した柱がある。
お互いのグループで写真を取りあった後、休みもせずに濃い霧の頂上
を後にする。



岩のごろごろする歩きにくい下り道は、勾配が緩むたびに花園に変わる。
さすが花の百名山だけあって、花の種類は多い。四阿山で見たのと同じ種類が
多いが、雨に濡れたマツムシソウがたくさん並んでいるのは、大柄なだけに
よく目立つ。他にシシウド、クガイソウ、ワレモコウ、アザミ…。


ヤナギランは高度が下るほどに背丈が高く、花穂も上まで開くように変わって
いく。

断続的に降っていた雨が止まなくなり、カメラをザックに入れる。
埼玉の女性たちが食事をし、少し先で私たちもパンと紅茶で昼食に代える。
歩き始めると間もなく雨足が激しくなり、沛然と音を立てて叩きつけるように
落ちてきた。慌てて木の下に避難したが、滝のように頭の上に落ちる雨水に
たまらず、また足を踏み出す。勾配が強まると抉れた道は川に変わり、
時には小さい滝を落としている。
頭を出している岩の上を飛び石のように歩く他ないので、時間がかかる。

「牧場管理事務所1.1km・根子岳山頂1.5km」の標識に出会う。
 まだ半分の下り行程かと、ちょっとうんざりする。幸い雨は少し小降り
になった。シラカバ林に入り歩きやすい道に変わって右側に牧草地が見えて
くる。針金の柵沿いに下って行くと、管理事務所の前に来た。
途端にまた土砂降りになり、慌てて車に走る。山靴を脱いでザックを放り
込むだけで、ドアからどっと雨が吹き込んだ。
車内で雨具や濡れた靴下を脱いで、やっと人心地が付く。女性2人は、
どうやら管理事務所に逃げ込んだようだ。電光が走り雷鳴が聞こえ、辺りは
夜のように暗くなった。

車を出すのが躊躇され、ともかく無事下山したことをペンションに伝える。
(登山届はペンションから提出してくれることになっている)。
車を叩く雨の音で、ケイタイに出た奥さんの声も聞こえ難いほどだ。
30分近く待ってようやく車を動かし、宿に帰った。



8日朝、青空が覗き始めた。せめて山の姿を見ようと帰る前に菅平に寄る。
土曜日とあって、バス停付近はサッカーやラグビーの練習らしい小・中・
高校生で溢れている。国道に観光バスが連なり、ダボスの丘へ子供たちが
長い行列を作って登っている。



国道と反対側の大松山の方や昨日の牧場の方へも少し車を走らせてみたが、
二つの山は殆ど雲に隠れ、僅かに裾の方が見えるだけだった。
 展望には全く縁がなかったが、また一つ百名山と花の山に登り、たくさんの
花達に出会えた。悪天候で休憩も少なかったのに、二人ともそれほど疲れも
感じずに計画通りに歩き通せて、まだまだやれると自信を持たせてくれた
山行だった。