ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

こんぴら狗

2020-07-18 09:18:59 | 私の動物記

こんぴら狗

2009年4月19日、妻と飯野山(標高421.9m)に登った。讃岐平野の中央部にあり丸亀・坂出両市にまたがる美しい山容で讃岐富士と呼ばれている、香川の誇る低名山である。

登山口の伊勢神社に着いたのが9時40分。早い人は30分、普通は1時間のコースだが、私たちは1時間で頂上に着いた。

飯野山頂上からの眺め。象頭山が霞んで見える

巨人「おじょも」伝説の巨石群・天狗周回路を見て下山したのは12時40分。すぐに琴平へ車を走らせる。象頭山の姿が次第に大きくなり、緑の山腹に金刀比羅宮の屋根が光っている。

象頭山の最高点は大麻山(616.3m)で金毘羅宮はその中腹にある。

明日登る予定だった大麻山だが、予定より早く着いた(13時過ぎ)ので、フロントにキーを預けて出発。

金毘羅参りの善男善女に交じって石段を登る。両側に並ぶ土産物屋が終わると大門を潜り、飴を売る五人百姓の傘が並ぶ広場になる。

785段の石段を登ると本宮、さらに583段を登って奥社、さらに竜王社と手を合わせただけで登り続け、ボタンザクラの並木が続く稜線のTV専用道路に出た。並木の奥、TV中継塔横に616.3mの三角点があった。殆どの人は南側の琴平、北の善通寺から車で2~300m手前まで登って花見にくるらしい。帰りに出会った人は私たちのザック姿に「金比羅さんから歩いて!」と驚いていた。

本宮に下って改めて参拝する。神官や巫女が賽銭箱をひっくり返して、紙幣や硬貨を山にしていた。

社務所で「こんぴら狗」を授かり、五人百姓さんが店じまいの掃除をしている大門を出てゆっくり下った。参道入口近くなって登りでは気付かなかった「こんぴら狗」に出会った。立札に

『こんぴら狗 江戸の昔「こんぴら参り」の袋を首に飼い主にかわって

犬がこんぴらへ

首に巻いた 袋に初穂料と道中の食費を入れて飼い主が旅の人に託した犬

無事代参をすませるとふたたび旅をして家族のもとへ いつのころからか

こんぴら参りのこの犬を「こんぴら狗」と呼ぶようになりました』

とある。句読点がなくて読み辛く文章もややおかしい気もするが、「代参」という言葉を古い記憶からふと蘇らせた。物心ついた頃、浪花節と呼んでいた浪曲がラジオでよく流れ、中でも広沢虎造の『清水次郎長伝』の名調子は今も耳に残っている。なかでも大坂八軒屋から淀川を上る三十石舟の中で、「けえどおいち」の親分は清水次郎長と言った若い男に喜んだ森の石松が…「喰いねえ、喰いねえ、寿司喰いねえ」「江戸っ子だってね」「神田の生まれよ」と振る舞うが、「親分ばかりが偉いんじゃねえ」と子分の名前が出るうちに自分の名前がなかなか出てこない…。あの「石松三十石道中」が好きだった。しかし、あれは無事に代参を果たし後の話で、『跨ぐ敷居が死出の山、雨垂れ落ちが三途の川、そよと吹く風無情の風・・・』と「石松金比羅代参を無事に果たした帰り道の話だった。



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