じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

有島武郎「一房の葡萄」

2022-09-23 16:37:35 | Weblog

★ 昨日の京都新聞に伊藤謙介さん(京セラ元社長・会長)の「経営者の涙」と題する記事が掲載されていた。先ごろお亡くなりになった稲盛和夫さんの若き日のエピソードを紹介したものだ。

★ 30歳にして起業することになった稲盛さん。技術屋としての自信はあっても経営者としてはまだまだ素人。それが成り行きとはいえ、従業員とその家族に責任を持つ立場になってしまった。「大変なことをしてしまった・・・責任を負うことになってしまった・・・もう後に引けない・・・」という涙ながらのささやきが印象的だった。

★ 「経営の神様」にもそんな時代があったんだね。

★ さて、題名は知っていても今まで読んでいない作品が多くある。そんな作品の1つ、今日は有島武郎の「一房の葡萄」(山田詠美編「せつない話第2集」光文社文庫所収)を読んだ。

★ 小学生ぐらいだろうか、少年は絵をかくのが好きだった。しかし、少年のもっている絵の具では透き通るような海の藍色などを描くことができなかった。少年のクラスには外国人の同級生がいて、彼は色鮮やかな西洋絵具をもっていた。

★ 少年は葛藤の末、その絵具から藍と洋紅の2色を盗んでしまう。しかし、彼の行いはクラスメイトに見つかり、先生(女性)に報告される。話を聞いた先生は決して声を荒げるではなく、静かに少年を諭して、クラスメイトと仲直りをさせる。

★ 一房の葡萄とは反省を促された少年に、先生が与えたもの。先生の真っ白な服装と一房の葡萄の紫色が少年の心に色鮮やかに残ったようだ。少年の日の思い出である。

★ 中学校の教科書にヘッセの「少年の日の思い出」という作品が採用されている。その作品でも、盗みをはたらき、「取り返しがつかないこと」を知った少年の心が描かれている。

コメント