じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

小泉八雲「貉」

2022-09-02 15:42:51 | Weblog

★ 「日本近代短篇小説選 昭和篇1」(岩波文庫)から、伊藤整「生物祭」、太宰治「待つ」を読む。

★ 「生物祭」は父が危篤の知らせを受けて帰郷した主人公が、不治の床で死を待つ父と接しながら、一方でこの世の生き物を強く感じるという作品。死が身近にあるほど生が際立つのかも知れない。

★ 「待つ」は太平洋戦争中、駅で冷たいベンチに座り、ただぼんやり何ものかを待つ20歳の女性を描写している。国家総動員の風潮の中、あてもなく待つという営みは、静かな抵抗だったのか。時勢にそぐわないということで公表が見送られた作品だという。

★ この2作だけでは物足りなかったので、青空文庫で小泉八雲の「貉(むじな)」を読んだ。非常に短く、あらすじは何度か聞いた話。

★ 東京の紀国坂、その当時は真っ暗闇。ある商人が坂道を登っていくと、濠の縁で一人の女性が泣いていた。身投げでもするのではと気になった商人は声をかける。しかし、女性は泣くばかり。何度となく声をかけていると、女性は袖を下ろして顔を上げる。その顔はのっぺぼうだった。

★ あまりの恐ろしさに後先も考えず、坂を上り切った商人。目の前に蛍火を灯したような蕎麦屋の屋台を見つけ、転がり込む。事の事情を蕎麦屋に話した商人。蕎麦屋が顔を見せると・・・。

★ 京都府の公式キャラクターに「まゆまろ」というのがある。あれも暗やみで見るとちょっと恐怖だ。

★ ところで貉とは、タヌキともアライグマともハクビシンとも言われるそうだ。キツネ同様、人を騙すと思われていた。今から思うとなぜ、キツネやタヌキは人を化かすのか、不思議だ。

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