じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

宮本輝「北病棟」

2022-09-16 15:05:57 | Weblog

★ かつて「国民病」といわれ、不治の病といわれた結核は、特効薬の開発により治る病となった。しかし、年間の新規感染者(登録者)数は1万人を超え、罹患率は10万人当たり10人程度に高止まりしているという。

★ 宮本輝さんの「星々の悲しみ」(文春文庫)から「北病棟」を読んだ。24歳の青年が結核を発病し、入院療養することとなった。かつて多かった結核患者も減少傾向にあり、その病院では「北病棟」と呼ばれる隔離病棟に、今ではこの青年と58歳の婦人の二人だけが入院していた。

★ この二人が「退院」すれば、「北病棟」も閉鎖されるという。

★ 日常を突然襲った病。青年はただただ時間をもてあましていた。時の経過が薬だと信じて。

★ 春から夏、そして秋が訪れようとしている。雨の日もあれば真夏の暑さにも耐えねばならない。58歳の婦人は、体力が衰え、もはや回復の見込みがないという。

★ 志賀直哉の「城の崎にて」のように、環境が変われば今まで気にも留めずに見過ごしていたものが見えてくるようだ。

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