だいぶ開いてしまいましたが、今度はハンガリーの首都ブダペストの話をしたいと思います。「ドナウの真珠」とも称されるブダペストはヨーロッパでも人気の旅行先であると同時に、見どころが狭い範囲に集中しているのが観光の利点といえます。
ブダペスト中心部の俯瞰
そんなブダペストで今回ご紹介したいのが、メインルートからは外れた郊外の「ブダペスト子供鉄道」です。大きな公園にあるような子供向けのミニSL…ではなく、駅員から機関手までほとんどの業務を本当に子供が担っている鉄道です。
もちろん100%すべてを子供に任せるわけにはいかないので、運転などには大人の監督が付きます。もともとは冷戦期の社会主義国で広く行われていた子供の社会教育事業の一環だったそうで、旧東側地域の諸都市にはほかにも残っているそうです。
この子供鉄道、ブダペスト市街西側の丘陵地帯を11.2kmにわたって走っているのですが、両端の駅にも途中にも、とくに何か特別なものがあるわけではありません。森の中を無駄にクネクネと進み、周辺住民にとっても何かしらのショートカットになるわけでもなく、実用性はほぼゼロ!乗ることが目的の完全な観光列車です。
この鉄道に乗るには、まずは路面電車かバスでブダ城北西の「Városmajor(読み方は分かりません^^;)」という停留所に向かいます。ここでアプト式の登山列車に乗り換え、終点まで行きます。
登山鉄道
途中で人が結構降りる駅があるのですが、気にせず最後まで乗りましょう。終点駅は周囲に店1軒ない寂しいところですが、十字路の角に「Children’s Railway」と書かれた標識があるので、これに従ってさらに5分ほど歩くと「Gyermekvasút(これは子供鉄道という意味のようです)」と掲げられたこれまたちょっと寂しい駅舎が見えます。
本来は駅舎で切符を買うようですが、出発間際だったらしく、「乗るならとりあえず乗って!」とさっそく少年駅員さんに急かされて客車に飛び乗りました。客車は3両か4両編成でそれぞれ独立していて、各客車に2人ずつの乗務員がいます。子供鉄道に携わるのは10~14歳の少年少女だそうで、私の車両には小学生と中学生くらいの少年が1人ずつでした。
鉄道は、時速10キロメートル代からせいぜい20キロ代くらいのゆっくりしたスピードでのどかに進みます。しばらくすると、小さい方の男の子が検札を始めました。私は切符を持っていないのでその旨を申告したのですが、日本の小学生と同じで英語は分からない様子。こちらもハンガリー語はさっぱりなので困っていると、隣席のおばあさんが通訳してくれて事なきを得ました。小さな車掌さんはボックス席の向かい側にちょこんと座り、カバンから切符束を出してパチンと鋏を入れます。その姿はなんとも愛らしく、微笑ましいものでした。
続いて、今度は大きい方の乗務員さんがグッズ販売にやってきました。こちらはまた日本の中学生と同じくらいの片言の英語で頑張って説明してくれたので、とても「結構です」とは言えずポストカードセットを頂戴しました。
これで、駅に着くとき以外の2人の業務は終わりです。列車が走っている間、2人は乗降口でおやつを口にしながら子供らしくお喋りに興じます。私の方もすることがないので、ハンガリーの森や丘の景色を眺めながら過ごします。
途中の景色
トンネルもあります
終点の「Hűvösvölgy」という駅の前には路面電車とバスの小さなターミナルがあります。こちらの方が多少開けていますが、それでも観光客から見れば何もないレベルなので飲食物などはあらかじめ持っていくのが無難です。ここから路面電車に乗れば、来るときに降りた「Városmajor」を経由して、市街中心部まで真っすぐ戻れます。もちろん、起点と終点は逆にしても大丈夫です。
反対方向の列車と途中駅ですれ違い
終点駅で機関車を撮影
市街中心部を出発して、戻ってくるまでだいたい3時間程度でしょうか。なので、ブダペストに2~3日滞在して、「明日の午前中はどうしようか」などという時には、乗ってみる価値もあるのではないかと思います。