見もの・読みもの日記

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また朝鮮半島/アメリカ・北朝鮮抗争史

2004-06-19 23:59:32 | 読んだもの(書籍)
○島田洋一『アメリカ・北朝鮮抗争史』(文春新書)文藝春秋社 2003.3.20

 最近、気がつくと朝鮮半島に関する本を手に取っている。

 著者の立場は本書の最後の一文に集約される。「北朝鮮政権を、何よりも、長期共存不可能な安全保障上の脅威と捉え、その崩壊を歓迎、促進するという発足以来のブッシュ政権の姿勢は、きわめて合理的かつ健全なものであったといえよう」。

 読んでいて、ちょっと舌を巻いたのは、著者の「書きぶり」である。意識的な戦略なのか、単なる性癖なのか分からないが、この著者はほとんど「論評」や「分析」をしないのだ。いや、実際はしているのだが、「私は~と思う」という括りを絶対に付けないのだ。

 ×年×月×日に~があった。アメリカ政府は~と発表した。ワシントンポストは~と伝えた。という「事実」の羅列の中に、著者の意見が放り込まれている。そもそも「事実」だって、著者は明白に「1つの立場」から選択を加えているはずだ。同じ時代を別の著者が扱ったら、全く別の読みものができあがるだろう。賢い読者としては、いつも眉に唾をつけていたい。

 さて、ブッシュ政権の姿勢はそんなに合理的で健全か?

 金大中政権が、南北の早期統一に積極的でなかったことに関して、著者は「ここに見られるのは、北が突然崩壊し、南が吸収する事態になるのは困る、端的に言えば、多少外部から差入れはするから、北の住民は、牢獄から出ようなどと思わず、中で我慢してもらいたいという、きわめて没倫理的でドライな、かつ『非民族的』な発想である」と述べている(これは著者の個人的見解である)。

 金大中の(韓国の)立場としたら「北が突然崩壊し、南が吸収する事態になるのは困る」って、そりゃあそうだろう、と私は思う。

 2002年、ニューヨーク・タイムズ(社説?投稿?)は、在韓米軍の撤退論について「撤退を開始すべきである」「なぜなら、アメリカは帝国主義勢力ではない。アメリカは必要ない、と民主国家が決めたところに、居続けることはしない」と報じている。

 何、このカッコよさげなうそぶきかた。そうさ、アメリカは撤退できる。でも韓国や日本や中国はこの地理的条件から撤退はできない。北朝鮮が崩壊すれば、大量の難民を隣国として引き受けなければならない。もちろん最も「打撃」を受けるのは韓国である。人口4,500万人の韓国が2,000万人の北朝鮮を一挙統合して、本当に食わせていけるのか。当然、治安の悪化や経済力の低下は避けられない。まあ、韓国の国際競争力の低下は、アメリカには(日本にも)好都合なのかもしれないが。
 
 著者は、「統一コスト」と、北朝鮮の現体制のもとで我々が支払い続ける「金正日コスト」--北朝鮮住民の負担、拉致や離散家族の悲劇、環境破壊、史跡や観光資源の損壊、そして周辺諸国の軍事・警察コストなど--を比較した場合、「統一コスト」に拘泥して事を先延ばしするのは不合理だという。

 本当にそうか? そもそも、南北統一/金正日体制という2つの選択肢しかないのかが疑問だし、「コスト」という観点で比較するレトリックにも無理があると思う。統一って、金成日体制の打破(軍事的脅威の排除)には力を貸すけど、後始末は朝鮮民族だけでやってくれと言っているようにも聞こえる。いつ、どのように統一を実現するかは、朝鮮半島に住むひとびとが主体的に選ぶ権利があると思うのだけど。

 昨年、ブッシュの「悪の枢軸」発言のあと、立教大学の李鐘元さんの講演を聞く機会があった。「イラク、イラン、シリア...と来ると、ムスリムに対する攻撃が鮮明になり過ぎるから、ちょっと北朝鮮も入れてみたんですよ」的なことを、笑顔でさらりとおっしゃったのが印象に残っている。

 ブッシュの北朝鮮政策なんて、実はそんなものなんじゃないの?

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