見もの・読みもの日記

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ある追悼サイト/人民網

2004-06-16 01:13:30 | 見たもの(Webサイト・TV)
○人民網「人民的好衛士、任長霞」

http://www1.people.com.cn/BIG5/shizheng/8198/34064/34067/index.html

 最近、中国のニュースサイトで、たびたび見かける人名がある。最初に気づいたのは、人民網のトップページを見に行ったときだ。画面の上方に「人民的好衛士、任長霞」というキャプションと、こわもての制服を着て、眉根をひそめたおばさんの写真が貼られている。なんだこれ?映画の宣伝か?と思ってクリックしたら、このページに移動した。

 中国語を拾い読みしてみて、任長霞という女性警察官の「追悼サイト」であることが分かった。任長霞女史は、1983年に公安(警察)の一員となり、数々の難事件を解決。「多次深入虎穴、化装偵察」というから、たびたび危険をかえりみず、変装して捜査に赴いたらしい。「警界女神警」と呼ばれ、数々の栄誉に輝く。

 2001年、河南省登封市の公安局長に就任、1千人の警察官を率いて活躍を続けた。しかし、今年4月14日、捜査中に高速道路で交通事故に巻き込まれ、死去。享年40歳。葬儀の当日は14万人の市民が沿道で任長霞局長を見送ったという。確かに、掲載されている写真を見ると、ものすごい群集だ。

 なんなんだ、これは。

 いろんなことを考えた。まず、中国は、ほんとにこんな大騒ぎになっているのか? 何かの「やらせ」ではないのか? 実はGoogleで日本語サイトに限って「任長霞」を検索すると何もヒットしないので、心もとない。しかし、中国中央電視台も特集を組んでいるところを見ると、あながち嘘ではないようだ。

 日本で、どこかの県警本部長が殉職しても、これほどの騒ぎにはならないだろう。その違いはどこにあるのか。中国という国家体制が、警察権力に対する市民の畏敬の念を必要としているから、政府主導で、このようなプロパガンダ政策が行われていると見ることもできる。

 私は、死者が国家の手によって、英雄に祀り上げられる事態は好きではない。いつぞや、日本の外務省職員がイラクで殺害されたときも、彼らの棺に日の丸がかけられ、麗々しく担がれて帰ってきたときは、げっと思って反射的に引いてしまった。だから、この任長霞さん追悼サイトも、あんまり気持ちのいいものと思っていない。

 しかし、にもかかわらず、私は書いておきたい。日本で、普通の仕事をまじめに続け、責任ある地位を獲得し、このように多くの人に愛惜され得る40歳の女性が果たして何人いるだろう?

 歌手や女優、タレント学者、起業家などの個人業種ならあり得るかもしれない。しかし、警察官、中学や高校の教員、医師、一般事務職、工場の技術労働者など、組織の中で、男性と同等に働き、成果を示していかなければいけない職業の場合、40歳の女性が1千人の部下を率いる地位につくことなど、日本では、ほとんど奇跡のようなものではないか?

 中国の社会には、まだまだ非民主的な制度や慣習が、たくさんあることは承知している。しかし、こうしたサイトを見ていると、女性が生きる社会として、日本と中国と、どちらがより抑圧的であるのか、もう一度考え直してみたくなる。
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