見もの・読みもの日記

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個人蔵と地方仏多め/仏像の姿(かたち)(三井記念美術館)

2018-10-03 22:57:06 | 行ったもの(美術館・見仏)
三井記念美術館 特別展『「仏像の姿(かたち)」~微笑む・飾る・踊る~』(2018年9月15日~11月25日)

 展覧会趣旨に力が入っているので、一部をそのまま引用しておく。…仏像の作者である「仏師」の豊かな感性と独創性、そして高度な技術に光を当て、特に仏像の「顔」「装飾」「動きとポーズ」を切り口に、日本人の心と創造力を様々な角度からご覧いただくことに挑戦します。…まさに「仏師がアーティストになる瞬間」を、本展覧会でぜひご体感ください。

 多くの有名な仏像は、今日でも信仰の対象となっているので、よくも悪くも、ここまで「作品」という位相に押し込めた展覧会は珍しいのではないか。それが実現できたのは、有名寺院の本尊クラスの仏像を避け、個人蔵や博物館蔵を中心に集めたためではないかと思う。

 冒頭には室町時代の迦陵頻伽立像(個人蔵)が出ていて、いきなり衝撃を受けた。昨年、京都の細見美術館で開催された『末法』展に出ていたものだ。しかし『末法』展では、何か禍々しい印象を受けたのに(演出のせい?)今回は普通に見ることができた。ぐるりと一回りできるので、背面を見て、なるほどこの角度で光背に付いていたのかと考えたりした。解説によれば、鎌倉・覚園寺の薬師三尊像の光背に付されていた可能性が指摘されているそうだ。

 第1展示室は小像が多く、個人蔵のほか、東博や金沢文庫(称名寺)、芸大所蔵の金銅仏(飛鳥時代)などが出ていて、出陳先の傾向に納得した。岐阜・臨川寺の菩薩坐像(平安時代)2躯は初めて見るもので、菩薩らしからぬ力のこもった顔つきに惹かれた。三重・瀬古区の十一面観音立像(平安時代)も優雅な檀像スタイルをぶちこわす豪快さが好き。地方仏は面白い。

 本展は、作品としての仏像を見るポイントとして「顔」「装飾」「動きとポーズ」を挙げる。「装飾」のセクションには、彩色や截金、宝冠や光背などの金工芸を見どころとする仏像が並ぶ。東博所蔵の阿弥陀如来立像(泉涌寺伝来)は、意識したことがなかったが、光背と台座がすごくよい。奈良・春覚寺(調べたら山の中である)の地蔵菩薩立像は截金が美麗。そして、鎌倉時代の弥勒菩薩立像(個人蔵)は、忘れもしない、『末法』展のメインビジュアルだった弥勒菩薩像である。円光に放射光を組み合わせた光背が、ちょっとデカダンなくらいに美しくて、今回、光背を裏側から見た写真が添えられているのが、すごく嬉しかった。なお、この弥勒菩薩像は2016年に金沢文庫の企画展『国宝でよみとく神仏のすがた』にも出品されていることを書き留めておこう。

 「動きとポーズ」はやはり天部と明王が面白い。滋賀・長命寺の広目天立像、滋賀・春日神社の天部立像、滋賀・光照寺の持国天・多聞天立像(いずれも平安時代)など、近江の古仏がたくさん来ていて嬉しかった。不動明王は、埼玉・地蔵院のもの(鎌倉時代)が、前髪をなびかせ、右手の剣を肩にかつぐような自由なポーズで面白かった。珍しいところでは、奈良博の走り大黒こと伽藍神立像(鎌倉時代)が来ていたり、小田原文化財団の雷神立像(南北朝時代)を初めて見た。

 あと、大阪・長圓寺の、顔が横に広がったような十一面観音立像(平安時代)と、腰から上しかない滋賀・荘厳寺の聖観音坐像(平安時代)も好きだったので、ここにメモしておく。

 茶室・如庵を模した展示室3は、床の間に『絹本着色如意輪観音像』(紺地に金の如意輪観音像)を掛け、『根来塗日の丸盆』に『金銅牡丹透彫柄香炉』を合わせ(赤と金)、巨大な『木造蓮弁(唐招提寺伝来)』に『木造化仏(唐招提寺伝来)』を載せるなど、とことんやり尽くした演出で楽しかった。

 最後の展示室6は、東京藝術大学保存修復彫刻研究室(籔内佐斗司教授)とのコラボで、芸大の学生による模刻・修復作品や、その過程をまとめたポスターが展示されていた。だいたい春の芸大コレクション展を見に行くと、別会場で研究報告発表展をやっているので、私は何度か見たことがあるが、全く新たな客層にアピールするのはいいことだと思う。

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