見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2016年8月:お盆休み@東京とその近郊

2016-08-15 23:37:27 | 行ったもの(美術館・見仏)
今週は丸1週間のお盆休み。土曜日から今日までの3日間、美術館・博物館を回遊してきたので、まとめてレポート。

根津美術館 コレクション展『はじめての古美術鑑賞 絵画の技法と表現』(2016年7月23日~9月4日)

 「たらしこみ」「溌墨(はつぼく)」「そとぐま(外暈)」「金雲(きんうん)」など、日本美術・東洋美術で使われる技法と用語について、実例を見ながら学ぶ。あまり見たことのない珍しい作品もあり、思わぬ名品が出ていたりもした。「金雲」の例に出ていた『洛中洛外図屏風』に吉田神社の大元宮を発見する。展示室2は「截金(きりかね)」「繧繝(うんげん)彩色」など仏画が多く出ていた。「裏箔(うらはく)」は言われないと気づきにくいなあ。

太田記念美術館 企画展『怖い浮世絵』(2016年8月2日~8月28日)

 あまりよく知らなかった歌川芳員(よしかず)、歌川芳艶(よしつや)の作品が印象に残った。どちらも国芳門人。特に芳艶は、ちょっと画像検索してみたら、魅力的な作品が多数ヒットして、目も心も持っていかれた。Wikiには「月岡芳年や落合芳幾など並み居る国芳門弟たちの中に隠れ、名前は殆ど知られていないが、国芳の武者絵の才能を最もよく受け継いだ絵師である」とある。これから強く推していこう! いわゆる「血みどろ絵」も多数あって、見ているお客さんがだんだん口数が少なくなっていく気がした。

出光美術館 開館50周年記念『東洋・日本陶磁の至宝-豊麗なる美の競演』(2016年7月30日~9月25日)

 出光美術館が誇る陶磁器コレクションの中から、中国・朝鮮・日本陶磁の選りすぐりの作品を展観。私は東洋陶磁器に関心を持ち始めた発端が出光の展覧会だったので、この企画はとても懐かしかった。2002年から10年くらいやっていた「やきものに親しむ」シリーズの展覧会はほぼ全て見ている。大好きな磁州窯の『白地黒掻落鵲文枕』を久しぶりに見ることができて、ほんとに嬉しかった! 古九谷に柿右衛門に鍋島に、元代の『青花魚藻文皿』にも満足。ただ、絵唐津でいちばん好きな『柿文三耳壺(水指)』が出ていなかったのは残念。久しぶりに陶片室もひとまわりしてきた。

神奈川県立金沢文庫 企画展『国宝でよみとく神仏のすがた 新国宝指定 称名寺聖教・金沢文庫文書から』(2016年8月5日~10月2日)

 開催概要に「新国宝である『称名寺聖教・金沢文庫文書』を通じて、普段あまり見る機会の少ない個人蔵の神像や仏像、仏画などの仏教美術作品をご紹介いたします」とある。重要なのは後段。学術的には知られているのかもしれないけど、私のような素人は全く見たことのない「個人蔵」の神像や仏像、および仏画が多数出ている。ポスターにもなっている弥勒菩薩立像(鎌倉時代)も個人蔵。衣の襞の彫りが深くて、装飾的でシャープ。光背が笠のように後頭部にくっついているのが面白い。確か大和文華館でも見たことのある『金胎仏画帖』(平安時代)もあった。

鎌倉国宝館 特別展『仏像入門~ミホトケをヒモトケ!~』(2016年7月23日~9月4日)

 「ミホトケをヒモトケ!」は「毎年好評をいただいている特別展」だそうだが、あまり展示に変化もないだろうと思って、一度も行っていなかった。初めて行ってみたら、なかなか充実していてよかった。涅槃図など、絵画資料も出ている。新顔?と思ったのは、平常展示ゾーンで十二神将の中になぜか混じっていた十一面観音菩薩立像(南北朝時代)。頭上面が妙に大きくて、横に飛び出している。解説によると、山崎宝積寺の本尊であったが室町時代に廃寺となり、円覚寺派の昌清院(鎌倉市山崎)に伝えられたそうだ。金沢文庫と鎌倉国宝館をハシゴすると、仏像好きにはかなり満足の1日になる。

国立歴史民俗博物館・企画展示室 『よみがえれ!シーボルトの日本博物館』(2016年7月12日~9月4日)

 シーボルト(1796-1866)が亡くなる直前にミュンヘンで開いた「日本博物館」の再現を試みる。ミュンヘン五大陸博物館から約300件の資料が里帰り。江戸博では類似の展覧会があったな、と思ったのは、お雇い外国人エドワード・モースの展覧会だった。シーボルトの日本コレクションが一部とは言え、里帰りするのは初めてのようだ。里帰り品は、私の江戸イメージを裏切るところもあって面白かった。「日本の宗教」と題された展示(木版画が残っている)の再現コーナーは、蛇神弁才天像(宇賀神だな)はともかく、亀形筮筒台(こんなの見たことない)、蓮華を模した鍍金の高杯一対、銅製の麒麟の香炉一対など、わけの分からない取り合わせになっている。蝦夷図など北方関係の資料が意外と多いのも印象的だった。

■国立歴史民俗博物館・第3展示室(近世)副室 『「もの」からみる近世「戦国の兜と旗」』(2016年8月9日~9月19日)

 戦国時代を象徴する資料として名高い『落合左平次道次背旗』(東京大学史料編纂所所蔵)が修理後初のお披露目。たぶん現物は初めて見た。裏表に同じ絵(正面の図)が描かれているとは知らなかった。表面のほうが少し体毛が濃い気がした。あわせて「変わり兜」多数。「眼鏡付兜」にはびっくりした。

江戸東京博物館 『伊藤晴雨 幽霊画展』(2016年8月11日~9月25日)『大妖怪展』(2016年7月5日~8月28日)

 「責め絵」で有名な伊藤晴雨が描いた幽霊画コレクション。落語家五代目柳家小さん(1915-2002)の手元に残された画幅で、谷中の全生庵に寄贈されている。かなり怖いものもあり、ユーモラスなものもある。あわせて『大妖怪展』の後期も見て来た。お目当ては、長徳寺の『六道絵』2面と『百鬼夜行絵巻』真珠庵本。高井鴻山という画家の『妖怪図』『妖怪山水図』が面白かった。幽霊画はかなり入れ替わっていて、金性寺の『提灯に幽霊』が激しく怖かった。

以上。今月の展覧会めぐりはほぼこれで打ち止め。

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