見もの・読みもの日記

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識字陶工と文人ネットワーク/木米(サントリー美術館)

2023-02-25 21:47:10 | 行ったもの(美術館・見仏)

サントリー美術館 没後190年『木米』(2023年2月8日~3月26日)

 江戸時代後期の京都を代表する陶工・画家・文人の青木木米(1767-1833)の名前は、いちおう知っていた。自分のブログを検索すると、2010年の出光美術館『茶 Tea -喫茶のたのしみ-』展が初出で、その後も何度か出てくる。とは言え、あまり期待をせずに見に行ったら、意外とおもしろい展覧会だった。

 はじめにやきもの。木米は中国・日本・朝鮮の古陶に着想を得、それを自由にアレンジした作品を生み出した。景徳鎮の染付ふうだったり、素朴な高麗茶碗ふうだったり、華やかな京焼ふうだったり…。会場には、木米作品のほかに、その着想のもとになったかもしれない作品も参考に並んでいて面白かった。着想の源泉がよく分からない作品もあって、『色絵雲龍波濤文火入』は青銅器の鬲(れき)に倣ったのではないかという。器身の丸みが短い三足につながっていてかわいい。

 また木米は、中国の陶磁専門書『陶説』(清・朱琰)に感銘を受け、これを翻刻・刊行している(刊行は没後)。芸大図書館や堺市中央図書館所蔵の貴重な版本が展示されていた。本展の図録に河野元昭氏が「識字陶工木米」という表現を使っているが、当時としては、かなり異彩を放つ存在だったのではないかと思う。

 木米は陶芸を奥田頴川(1753-1811)に学んだ。頴川の作品もかなり多数来ており、大統院の『色絵十二支四神鏡文皿』や建仁寺の『交趾釉兕觥形香炉』を見ることができて嬉しかった。このひとの作品、かなり面白いと思う。

 続いて上田秋成(1734-1809)の紹介があったのには驚いたが、そうか煎茶つながりか、と思い出して納得する。煎茶用の炉や急須が各種展示されていた。煎茶用の炉は小型でシンプルなものが多いが、『白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉』のように凝ったものもある。炉の窓にもたれるのは王羲之で、窓の下にガチョウが線刻されている。

 画家で親しかったのは田能村竹田。竹田が描いた『木米喫茶図』(木米の横顔)はどこかで見た記憶があった。出光美術館の『茶 Tea』展だったかもしれない。蘭方医の小石元瑞や木村蒹葭堂とも交友があった。「画家」「文学者」「医学者」などの専門や職業を超えて、文人のネットワークが機能していたのは興味深い。

 木米の絵画作品は、あまり好きなものはないのだが、中国の製陶工場の様子を想像でマンガっぽく描いた『陶磁製造図』が楽しかった。画帖なので会場では1~2枚しか見られなかったが、図録には多数の図版が収録されていた。


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