見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2016年7月@京都、名古屋(若冲生誕300年と家康没後400年など)

2016-07-20 22:00:51 | 行ったもの(美術館・見仏)
三連休関西旅行で行ったもの拾遺。

京都国立博物館 常設展(名品ギャラリー)

 初日の京博。特別展をやっていない期間だと、人の数が少なくて幸せ。3階の「古窯の美」で、信楽や丹波の壺をじっくり眺める。2階「絵巻」の『伊勢物語絵巻』『西行物語絵巻』はどちらも江戸時代・17世紀の作。『伊勢』は煙立つ浅間山、雪をかぶった富士山の表現が面白い。海や川が濃紺で描かれており、白い波との対比が美しい。『西行』にも神々しい富士山の姿。『源氏物語歌合絵巻』は室町時代・15世紀の作で、幅の狭い小さめの料紙に白描だった。中世絵画「描かれた動物たち」は、さすが渋い。単庵智伝『龍虎図屏風』の虎は、入れ歯のおじいちゃんみたいに顎が細い。龍は腕白坊主の顔をしているが、尻尾の先が蛸の足みたい。中国絵画には久しぶりの(かな?)王雲筆『楼閣山水図屏風』。台の上に載っていることもあって、屏風の下半分が目の高さになる。まあ細部がよく見えていいけれど。

 1階の特集陳列・徳川家康没後四百年記念『徳川将軍家と京都の寺社-知恩院を中心に-』(2016年6月14日~7月18日)も鑑賞。家康は京都の寺社を保護したというけれど「家康の京都」って、あまり意識したことがない。展示ケースの端々に、ピンク色の葵の造花がさりげなく飾られていた。最後に、京博のゆるキャラ・トラりんにも会えた。金・土・日・祝日は1日5回登場って、がんばってるなあ。

泉屋博古館 生誕140年記念『上島鳳山と近代大阪の画家』(2016年5月28日~7月24日)

 2日目の午後に訪問。同館としては、ちょっと珍しい企画なので気になっていた。上島鳳山って、私は全く知らない名前である。ホームページの解説によると、上島鳳山(うえしまほうざん、1875-1920)は「独特の濃厚な雰囲気を漂わせた人物像を多く描き」「大規模な公募展にはあまり関わらず、住友家主催の園遊会などで席上揮毫を行ったり、後援者の求めに応じて描いていました」とのこと。「こうした後援者との密接な関係は、鳳山だけでなく大阪の他の画家たちにも見られます。彼らは作品が公になりにくく、経歴も辿れない事が多いため、今ではあまり知られていないのが現状です」というのが、ある時代・ある地域のの「画家」の姿をうかがわせて興味深い。鳳山の代表作『十二月美人図』(泉屋博古館分館所蔵)を公開(前後期6幅ずつ)ということもあって、「大阪の美人画は濃い!」というキャッチフレーズが用いられているが、私は『虎渓三笑之図』『雲中寿老図』など、あやしいおじさんを描いた「非美人画」のほうが印象に残った。ほかにも初めて知る画家がいろいろあって、長崎系の写生画を描いた山田秋坪(1876-1960)が印象に残った。大正年間には古くさい花鳥画だと思われただろうが、今見ると、一周まわって新しく感じる。

細見美術館 生誕300年記念『伊藤若冲-京に生きた画家-』(2016年6月25日~9月4日)

 到着は15時過ぎくらいだったと思うが、周囲の歩道に長い列が見える。げ!「最後尾」の看板を持ったお姉さんに聞いたら「(待ち時間は)30分ほどです」とのこと。細見美術館、こういっては悪いけど、そんなに見逃せない名品が出ているわけではないのに、宣伝の力か。中に入ると、狭い室内は人でいっぱい。第1室は「若冲の鶏 さまざま」がテーマだが、『鶏図押絵貼屏風』はあまりいい作品だと思わない。さまざまなモチーフを貼り交ぜた『花鳥図押絵貼屏風』は好き。ひょうきんな叭々鳥、とびかかるようなカワセミ、リーゼントみたいな頭のオシドリ、ニワトリもいい。最後の梅もいい。

 『踏歌図』『萬歳図』など、若冲にはめずらしい人物画が見られたのはよかった。若冲の弟子、もしくは若冲ふうの画家の作品もあり。若冲の名前の記載がある『京都錦小路青物市場記録』(京都大学文学部所蔵)や、若冲の名前が内側に刻まれた狂言面「僧」(壬生寺所蔵、寄贈者銘か)など「京に生きた画家」を実感させる展示品は貴重なものだった。展覧会限定菓子「綵菜」(PDFファイル)にはちょっと心が動いたけど、やめておいた。錦小路を歩いたら「若冲漬け」(京漬物・桝悟)なるものも売り出されていて、京都ではすっかり商売のネタにされている様子。

徳川美術館蓬左文庫 夏季特別展『信長・秀吉・家康-それぞれの天下取り-』(2016年7月14日~9月11日)

 2日目は名古屋に移動して1泊。最後に徳川美術館に寄った。第1展示室には『朱塗啄木糸威具足』(徳川義直着用)と『軍配団扇馬標』(関ヶ原合戦時使用)。周囲は「戦国名刀物語」と題した展示で、若い男女がキラキラした視線を注いでいた。私は、第2展示室の茶道具のほうに惹かれる。油滴天目(星建盞)はダンディな名品。家康が臨模した小倉色紙「こひすてふ」に和む。室礼、武家の式楽(能)を経て、第5展示室から「天下取り」の展示が始まる。まずは具足、辻ヶ花の小袖、徳川家康着用の浴衣など。たたんだ状態の母衣も面白かった。『茶屋交易図』(模本)はホイアンの日本町を描いた図だそうだが、8~9軒の長屋のような家が並ぶばかり。「日本橋」らしい姿は描かれていない。

 蓬左文庫の展示室に進むと、引き続き「天下取り」に関する各種資料が並ぶ。時代順に「信長」「秀吉」「家康」の三区画に分け、「信長」のエリアには、北条早雲の書状や武田信玄の書状も。『徳川家康三方ヶ原戦役画像』(徳川美術館所蔵)は残念ながら複製展示だった(8/2-8/31は原本展示)。「秀吉」のエリアでは、太閤秀吉が関白秀次に宛てた書状(個人蔵)を見た。まだ二人の仲が和やかだった時期のもので、正月祝いの礼を述べている。前日、大河ドラマ『真田丸』で秀次の自害シーンを見た直後だったので、感慨深かった。追書の追書に「たかのつめ一つ進(以下欠)」とあるのは、唐辛子のこと? 家康が北条氏政・氏直に上洛を促した書状とか、秀吉が水野忠重に宛てた真田昌幸征伐の督励状とか、けっこう『真田丸』を思い出させる資料が多い。加藤清正が朝鮮から持ち帰ったという、虎の頭蓋骨(歯を残し、全体が黒く塗られている)は珍品。そのあと「家康」のエリアには、田安徳川家伝来の『関ヶ原合戦絵巻』が出ていたが、真田父子の「犬伏の別れ」の場面を開けているのは、絶対、大河ドラマファンをねらっていると思う。

 ここで予定外に時間を食ってしまい、まだ徳川美術館の企画展示室がある、と思って急いだら、企画展示室(第7~9展示室)は閉室していた(耐震補強工事のため)。拍子抜け。今回の特別展のメインは蓬左文庫エリアなので、時間配分をお間違いないよう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 〈複製〉動植綵絵30幅を堪能... | トップ | 東アジアの希望/日本×香港×... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事