見もの・読みもの日記

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金融業界の裏表/中華ドラマ『城中之城』

2024-06-07 23:48:50 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『城中之城』全40集(中央広播電視総台、愛奇藝他、2024年)

 見たいドラマが少し途切れていたので、豪華な配役に惹かれて本作を見始めた。上海の陸家嘴金融貿易区という「金融城」を舞台に、銀行、証券、信託、投資、不動産等に関わる人々を描いたドラマである。

 陶無忌は、程家元ら同期とともに深茂銀行に入社し、銀行員生活のスタートを切った。彼の憧れは、同行副支配人の趙輝だった。就職活動中の恋人・田暁慧とともに、早くお金を稼いで家を買い、結婚することが目下の目標だった。

 突然、深茂銀行上海支店支配人の戴其業が、不慮の交通事故で亡くなった。葬儀で顔を合わせたのは、かつて大学で戴其業に金融学を学んだ四人の中年男性。四人のうち、趙輝、蘇見仁、苗彻の三人は、深茂銀行の同僚でもあった。出世頭は副支配人の趙輝だが、愛妻・李瑩を亡くしてから、一人娘の蕊蕊の幸せだけを願い、万事質素に控えめに暮らしていた。目下の心配事は、蕊蕊の眼病が悪化し、失明の恐れがあること。趙輝には、少年時代に命を助けられた呉顕龍という恩人がいて「大哥」と呼んで家族同様に付き合っていた。今は顕龍集団という不動産会社の会長である呉顕龍は、蕊蕊のための募金を立ち上げ、多額の寄附集めに成功する。その裏に、何かのからくりがあることを趙輝はうすうす気づいていたが、何も言えなかった。

 浜江支店の副支配人・蘇見仁は直情径行、かつて趙輝と李瑩を争って破れたことを、今も根に持っている。その後も恋多き人生を送っており、程家元は蘇見仁の隠し子だった。苗彻は深茂銀行の監査部門に所属し、義に厚く、理非を重んじる態度から「苗大侠」と仇名されている。趙輝とは家族ぐるみの親友。

 最後の一人である謝致遠は、遠舟信託という信託会社の総裁である。手段を選ばない経営で事業を拡大しており、趙輝の弱みを握って、深茂銀行の資金を吸い上げようと画策していた。そのため謝致遠が用意したのは、趙輝の亡き妻・李瑩に瓜二つの子連れシングルマザーの周琳。謝致遠の指示に従って、趙輝に近づく周琳だが、趙輝は警戒心を緩めない。かえって、たちまち周琳に惚れてしまう蘇見仁。しかし周琳の気持ちは趙輝に傾き、二度目の失恋を味わう蘇見仁。怒りのあまり、蘇見仁は趙輝の車に隠しカメラを仕掛け、ついに趙輝が呉顕龍に不正な便宜を図っていた証拠を入手する。

 中年男女の恋模様はひとまず置いて、謝致遠は、違法行為が露見して牢獄入りとなる。謝致遠の妻・沈婧は、復讐のため、趙輝と呉顕龍に近づく。蘇見仁のことは早急に「始末」させた呉顕龍だったが、沈婧の甘言には騙され、手を組む約束をする。

 その頃、趙輝の勧めで監査部門の苗彻に師事していた陶無忌は、次第に趙輝の不正の証拠に迫っていく。そして、ついにその訴えは党の紀律検査委員会の取り上げるところとなる。絶対絶命に追い込まれた趙輝は自殺を企てかけるが、周琳と蕊蕊、そして陶無忌の説得によって思いとどまり、静かに連行される。

 私は、日本語でも金融関係の用語に疎いので、まして中国語にはなじみがなく、序盤は何が起きているのか理解するのに苦労した。終盤は盛り上がって、まあまあ面白かったと思う。主な登場人物は、生き馬の目を抜く金融業界で生きる人々だが、田暁慧の母親は、ふつうの中年婦人であるにもかかわらず、娘のために投資に手を出して稼ごうとする。はじめは安心できる商品で満足していたのだが、株価(証券?)の上下動に熱くなって、ついに全財産を失ってしまう。しかもその価格を操作していたのが、叔母の沈婧に抱き込まれた田暁慧だったという皮肉。母親の命まで失いかけて、田暁慧は真人間に立ち戻る。こういう悲劇は、おそらく実際にあったのだろうな。本作(原作小説)の設定は2018年頃だというが、中国の投機加熱のニュースは何度も見てきた。現在もその傾向は続いているようだ。

 普通の人間を不正に踏み切らせるのも家族(あるいは家族に近い親密な人間関係)なら、立ち戻らせるのも家族というのは、中国人には納得のいく描き方なのかなと思った。オジサン俳優陣の中では、珍しく悪人役の涂松岩(謝致遠役)、可愛げのあった馮嘉怡(謝致遠役)がよかった。苗彻役の王驍は役得。しかし、上海のサラリーマンは、あんなきっちりした背広姿で出勤し、仕事が終わると日本風あるいは韓国風の居酒屋で酔いつぶれてるのか。もはや映像では日本社会と区別がつかなくなっている。


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