見もの・読みもの日記

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アイスショー"Fantasy on Ice 2022 静岡"

2022-06-28 21:19:34 | 行ったもの2(講演・公演)

Fantasy on Ice 2022 in 静岡、初日(2022年6月24日 17:00~)/3日目(6月26日 13:00~)

 アイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)2022静岡公演を現地で見てきた。何度もこのブログに書いたとおり、幕張、名古屋、神戸のチケットが全く取れなくて、今年は生観戦は無理かと思っていたら、最後に2日分が当たった。どちらもステージから遠いB席、初日は東側の最後列から3番目、3日目は西側の最後列から2番目だったが、会場に入れただけで大満足である。

 出演スケーターは、Aツアー(幕張、名古屋)との違いだけ記録しておくと、三浦佳生、河辺愛菜、松生理乃、デニス・バシリエフスがOUT、宮原知子、ジェイソン・ブラウン、カッペリーニ&ラノッテ(カペラノ)がIN。現役若手がいないので、開演直後にエラジ・バルデや田中刑事くんが登場する、やたら豪華な構成だった。ゲストアーティストは新妻聖子さん、宮川大聖さん、バイオリニストのNAOTOさんに交代した。

 宮川大聖さんと羽生結弦くんのコラボ「略奪」「レゾン」は神戸初日から大反響を呼んだ。私は神戸公演をライブビューイング(6月19日、TOHOシネマズ新宿)で予習していたが、やっぱり現地では固唾を飲んでしまった。「略奪」は、黒を基調に赤を効かせた妖艶なオープニング衣装のまま、群舞で始まり、次第に羽生くんが前に出ていく。短めのトップスをまくり上げる腹チラと4Tに話題が集中したが、男子グループ、女子グループそれぞれに見せ場があり、流れるような全体のコンビネーションも美しかった。

 大トリの「レゾン」は上下白(上衣のみ左半身が紫)のゆったりした衣装。氷上に仰向けに倒れ込み、ゆっくり起き上がるとか、前傾姿勢のまま後ろに滑っていくとか、挑発的な振り付けが話題をさらった。No.1ホストみたいな色気という感想もあり、芸術性の極みという批評も見たが、どちらも当たっていると思う。現地で高い視点から見ていると、一挙手一投足に音楽を感じさせる身体の使い方の上手さ、動きに従ってふわりと広がる衣装の美しさが印象的だったが、危険な男の色気たっぷりだったことは否定しない。私がフィギュアスケートに魅せられた最大のきっかけである、プルシェンコの「タンゴ・アモーレ」を思い出した。今の羽生くん、バンクーバー五輪当時のプルシェンコと同じ27歳だと思うと感慨深かった。

 宮川大聖さんは「Z世代に絶大な人気を誇る」と紹介されていたが、大英断の起用だったのではないか。これまでFaOIのゲストアーティストは、客層の中心(中高年女性)になじみのある、80~90年代のヒット歌手が多かったように思うのだ。過去の公演に全く不満はないが、羽生くん世代にとっては、本当に感性を共有できるアーティストとのコラボだったのではないかと思う。千秋楽、宮川さんが登場直後のMCで「終わるのが寂しいです」と涙声だったのが忘れられない。

 静岡初日は、終演後の一芸大会で羽生くんが4T-4Tを連続で跳んで、小さくガッツポーズしていたのが可愛かった。千秋楽は、終演後のジャンプ披露はなかったが、「レゾン」の後、鳴りやまない拍手に推されるようにして、舞台に新妻聖子さんとNAOTOさんが登場。演奏と歌唱が始まり、会場がどよめく。私は何の曲か分からなかったが、隣のお客さんが「ノートルダム・ド・パリ?」とすぐに反応した。ステージ奥から「レゾン」衣装のままの羽生くんが登場。歌い続ける新妻さんと、情感たっぷりに顔を見交わしていたかと思ったら、おもむろにリンクに下り、リンク中央で激しく美しいスピン。そうだ、2012-2013年の1シーズンだけFSで滑っていた曲なのだ。とんでもないサプライズ・プレゼントに、会場全体が魂を抜かれたようになってしまった。

 しかし本公演の素晴らしさは、羽生くんだけではない。パパシゼは全公演で、北京オリンピック金メダルのリズムダンス、フリーのショーバージョン2演目を披露。回を重ねるごとに味わいが増し、観客の反応にも熱が加わった。カペラノは、前半がフランク・シナトラの「I've Got You Under My Skin」によるおしゃれプロ、後半は「道化師」の「衣装をつけろ」で、久しぶりにオペラが聴きたくなった。全体にAツアーから持ち越しのプロが多かったが、ステファンの2プロは、初見こそ「フィギュアスケートらしくない」と思って戸惑ったが、静岡では、様式美と様式を踏み越える力が拮抗して、完成度の高いものになっていた。こういうプログラムを日本で演じてくれたことに感謝。ちょっと田中泯さんの舞踊を思い出していた。

 新妻聖子さんの迫力ある歌唱も素晴らしかった。ハビエルとは「ラ・マンチャの男」、ジェイソンとは「メモリー」でコラボ。ステージ上から歌声でスケーターを操る魔女か女神のようだった。荒川静香さんとは、この時代だからこそというメッセージを込めて、中島みゆきの「ひまわり」で共演。歌の力とスケートの力に泣いた。

 Bツアーではアンサンブルスケーターズの紹介(ひとりずつ名前をコール)があったり、アクロバットやエアリアルに素直な歓声をあげるお客さんが多かったのも嬉しかった。アクロバットのポーリシュク&ベセディンは、いまお幾つなのだろう? 私は2010年から見ているのだ。彼らは、ネットの情報によれば、いまはアメリカ国籍だが、ウクライナ出身であるとのこと。ああ、だから出演できたのだな。今年のFaOIの復活、とても嬉しいけれど、個人的には、いつかロシアのスケーターたちにも戻ってきてほしい。ロシア大好きジョニーのポップでキュートな「Dancing Lasha Tumbai」が、ウクライナの歌手の楽曲だったこともここに記録しておく。

 フィナーレの群舞は新妻さんの「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」で、羽生くんが神々しいようなY字バランスを披露。そして周回から、全ての出演者が輪になって抱き合ったのも初めての光景だった。羽生くんの最後の挨拶「ありがとうございました!」は恒例のことながら、千穐楽はその前に、ちょっと涙声の「本当に幸せでした」「またファンタジーに来てください」が付いた。遠かったけれど、西側だったのでよく見えた。また来年!

↓これは開演前の視界。


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