○ファブリツィオ・グラッセッリ『イタリア「色悪党」列伝:カエサルからムッソリーニまで』(文春新書) 文藝春秋 2015.7
出先で読むものが切れてしまったので、街の書店で目についた本書を購入した。黒字に白抜きの大きな文字で「セックスと権力」という帯がついていて、いかがわしげだったが、画家のカラバッジョの逸話が読みたかったので、買うことにした。著者は日本在住のイタリア人。日本語翻訳は水沢透氏による。
本書が取り上げるのは、古代から現代までの7人。ユリウス・カエサル、ロドリゴ・ボルジア(法王アレッサンドロ六世)、レオナルド・ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョ、ジャコモ・カサノヴァ、ジャコモ・プッチーニ、ベニート・ムッソリーニである。私は、新書だから当然、エッセイスタイルなのだろうと思っていたが、各章は主人公に近い人物を語り手に、小説風に進行する。たとえば、カエサルの章では、専属護衛兵のアメリウスが語り手。ダ・ヴィンチの章では、年若い弟子でモデルもつとめるフランコ・ダ・ソンチーノ。ただし著者の「まえがき」によれば、各章の語り手は、架空の人物を設定するか、名前を変えているものが多い、とのこと。
どの章も、小説的でスリリングなエピソードが選ばれていて(著者によれば「ほぼすべてが史実に基づいたもの」だそうだ)暇つぶしになる程度に葉面白かった。ただ、どの人物も、まあ常識の範囲内での「偉人」「英雄」あるいは「桁外れ」で、人間観が変わってしまうような悪魔的・超人的な印象はなかった。表紙の帯には「悪くて、凄くて、モテまくった」、裏を返すと「権力か、性欲か、それが問題だった7人の男たち」とあるのだが、このキャッチコピーは、どう考えても看板倒れ。せいぜい、カエサルの章くらいにしか当てはまらないと思う。
いちばん印象的だったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの章。もっと均整のとれた精神の持ち主かと思っていたので、ちょっと意外な一面を知った。しかし「色悪党」というほどではない。気になってWikiを確認したら「交友関係以外のレオナルドの私生活は謎に包まれている。とくにレオナルドの性的嗜好は、さまざまな当てこすり、研究、憶測の的になっている」とあった。本書に書かれていることが「史実」かどうかは、留保したほうがよいだろう。でも、江戸博のダ・ヴィンチ展をちょっと見に行きたくなった。
あと「色悪党(いろあくとう)」という言葉は一般に通用しているのだろうか。検索してみると、本書の書名くらいしか出てこないので、疑問が残る。歌舞伎に「色悪(いろあく)」という用語があるようだけど。

本書が取り上げるのは、古代から現代までの7人。ユリウス・カエサル、ロドリゴ・ボルジア(法王アレッサンドロ六世)、レオナルド・ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョ、ジャコモ・カサノヴァ、ジャコモ・プッチーニ、ベニート・ムッソリーニである。私は、新書だから当然、エッセイスタイルなのだろうと思っていたが、各章は主人公に近い人物を語り手に、小説風に進行する。たとえば、カエサルの章では、専属護衛兵のアメリウスが語り手。ダ・ヴィンチの章では、年若い弟子でモデルもつとめるフランコ・ダ・ソンチーノ。ただし著者の「まえがき」によれば、各章の語り手は、架空の人物を設定するか、名前を変えているものが多い、とのこと。
どの章も、小説的でスリリングなエピソードが選ばれていて(著者によれば「ほぼすべてが史実に基づいたもの」だそうだ)暇つぶしになる程度に葉面白かった。ただ、どの人物も、まあ常識の範囲内での「偉人」「英雄」あるいは「桁外れ」で、人間観が変わってしまうような悪魔的・超人的な印象はなかった。表紙の帯には「悪くて、凄くて、モテまくった」、裏を返すと「権力か、性欲か、それが問題だった7人の男たち」とあるのだが、このキャッチコピーは、どう考えても看板倒れ。せいぜい、カエサルの章くらいにしか当てはまらないと思う。
いちばん印象的だったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの章。もっと均整のとれた精神の持ち主かと思っていたので、ちょっと意外な一面を知った。しかし「色悪党」というほどではない。気になってWikiを確認したら「交友関係以外のレオナルドの私生活は謎に包まれている。とくにレオナルドの性的嗜好は、さまざまな当てこすり、研究、憶測の的になっている」とあった。本書に書かれていることが「史実」かどうかは、留保したほうがよいだろう。でも、江戸博のダ・ヴィンチ展をちょっと見に行きたくなった。
あと「色悪党(いろあくとう)」という言葉は一般に通用しているのだろうか。検索してみると、本書の書名くらいしか出てこないので、疑問が残る。歌舞伎に「色悪(いろあく)」という用語があるようだけど。